お嬢様、流刑地に送られ婚約も破棄。でも最強になったら、ザマぁとかどうでも良くなってた

好きな言葉はタナボタ

文字の大きさ
12 / 123
第1部

第11話 「突き付けられた選択肢」

しおりを挟む
拒絶の言葉を吐いたマリカに、銃の男はさとすように告げる。

「オマエには4つの選択肢がある。 1つはオレのモノになることだ。 その場合オマエはこの地の顔役であるオレの保護下に置かれ、この上なく快適な生活を送ることができる。

「2つ目は流刑地の男全員の共有物になること。 この場合、男に体を求められたらオマエは常に応じる義務がある。 いつでも、どこでも、相手が何人でもだ。

「白昼の往来で何人もの男に犯されるってことも十分あり得る。 というよりも、十中八九そうなる。 オマエのような上玉は、この流刑地じゃ奇跡のような存在だからな。 使い古しのズタボロになるまで野郎どもがオマエに群がるだろうぜ。 オマエは昼も夜も犯され続けるんだ。 メシを食う暇もないぐらいにな」

「っ...」

顔役が語る凄惨な情景にマリカは思わず息を呑んだ。 4人のチンピラに輪姦された記憶は彼女の中にまだ生々しく残っている。

顔役銃の男は指折り数えながら選択肢を提示し続ける。

「3つ目は、オマエを欲する男をすべて撃退すること。 まあ無理だろうがな。 3千人の男が昼夜を問わず襲ってくるんだから。

「4つ目は、オマエがこの流刑地を出ていくこと。 いつ出ていこうがオマエの自由だ。 もっとも流罪人を受け入れてくれる都市や町は皆無だから、オマエは荒野で一人サバイバルすることになる」

顔役の説明の意図はマリカにも十分伝わった。

「要するに、あなたのモノになるのが一番マシだって言いたいんでしょう?」

「オレは事実を言っただけだ。 なあ、そうだろう?」

顔役が周囲の者に同意を強要し、何人かがうなづく。

顔役はマリカに向き直り、巨大な指を突きつけた。

「オマエに3日間の猶予をやろう。 食い物も与えてやる。 3日間よく考えて、オレの女になるかどうかを決心しろ。 いいか、オレがこんなに優しいのは、オマエがとびっきりの上玉だからだ。 オマエを傷物にしたくねえんだ。 だから妙な考えを起こすんじゃねえぞ?」

顔役はマリカの魔法を警戒している。 だからマリカを強引に自分のモノにするのではなく、マリカが自主的にその身を差し出すように仕向けているのだ。 顔役はマリカがちゃんと判断しさえすればマリカが自分のモノになると確信してもいる。 他の3つの選択肢を思えば、彼がそう確信するのも不思議はなかった。

                  ◇❖◇❖◇

顔役とマリカの会話が途切れたのを見計らって、マリカと共に流刑地に来た50代女性の流罪人が進み出て顔役に声をかけた。

「顔役さま。 お初にお目にかかります。 わたくしエライナと申します」

顔役は無関心な視線をエライナに向けた。 マリカに向けていた熱心な視線とは対照的な、冷淡な視線である。

エライナと名乗った50代女性は顔役の視線に耐えて言葉を続ける。

「シラナミ組の顧問を務めますユズリハの姉でございます。 弟から顔役さまに連絡が届いていると存じますが」

「ユズリハ殿とは懇意こんいにしているが、姉がいるとは聞いてないし、連絡も届いてはおらん」

「そんなはずは...」

エライナが焦りを見せる。 馬車の中では終始落ち着いていて、何があっても動じない彼女だったのに。 だがマリカはすぐに理解した。 エライナは流刑地とのコネにより流刑地での生活を保障されていたのだ。 少なくともエライナはそう信じていた。 だからエライナは、か弱い女の身で流刑地に送られるというのに取り乱すことがなかった。

それにしても、アガマサラ市から物資が補給されていることといい、流刑地とのコネといい、アガマサラ市と流刑地との間には相当な交流があるようだった。 流刑地はアガマサラ市から隔絶された場所だとマリカは思っていたが。

狼狽するエライナを無視して、顔役はマリカに声を掛ける。

「こっちだ。 付いて来い」

マリカは戸惑った。 3日間の猶予はどうなったの? そんなマリカの思いを見透かしたように、顔役は醜怪な顔を苦笑の形に歪める。

「心配するな。 約束通り3日間はお前に手を出さない」

マリカは途方に暮れて立ち尽くすエライナを気にしつつも、仕方なく顔役の後ろに付いて歩き始めた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...