お嬢様、流刑地に送られ婚約も破棄。でも最強になったら、ザマぁとかどうでも良くなってた

好きな言葉はタナボタ

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第1部

第64話 「飯テロなんて致しません②」

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マリカはカワモグラの最後の一切れを食べ終えた。

「美味しかったー」

カワモグラはクマ肉よりも、マリカがお嬢様の頃に食べたどんな肉よりも美味しかった。 柔らかくてジューシーで、脂身あぶらみまで美味しかった。

ミツキはまだ黙々もくもくと食べている。 彼は食事量が多いので食事に時間がかかる。 加速して食べれば一瞬で食べ終えられるが、加速経験のあるマリカはそれが無意味であることを理解していた。 普通に食べて1時間かかるなら、加速して食べてもミツキの体感時間ではやっぱり1時間かかる。 だからミツキは特別な事情でもない限り、食事中に加速しない。

他の者もまだ無心に食事中であるか、そうでなければ食事の余韻よいんに浸っている。 カワモグラの肉はおそらく世界一の美味さで、そんな肉を普段は干し肉しか食べられないコモノや共用女が口にしたのだ。 その感激あるいは衝撃は余人の想像の及ぶところではない。

                  ◇❖◇

全員が食べ終えてカマドの火も消えかかった頃、みな眠気に襲われていた。 食料採集で程よい労働をこなした後に腹いっぱい食べたため、そして強面こわもてが徘徊する流刑地の脅威から遠ざかりリラックスしていたためである。

「このままここでひと眠りしたいね」

「もう帰りたくない」

「おうちに帰りたい」

ここで言う「おうち」とは流刑地の住居ではなく、流罪になる前に住んでいたアガマサラ市の家のことだ。

コモノや共用女が流刑地に戻りたがらないのも無理はない。 マリカは聞かされていないが、実のところ彼ら彼女らは派閥に課せられた仕事をほっぽりだしてマリカの狩りに参加していた。

参加者がコモノと共用女の一部ならともかくほぼ全員だからサボりを隠しおおせるはずもなく、流刑地に戻れば処罰は免れない。 コモノも共用女も処罰を覚悟のうえでマリカの狩りに参加していたのである。
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