能力者は正体を隠す

ユーリ

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幼児編

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・・・夢を見た。
夢、といっていいのか分からないが。
私は夢の中で、桐谷 弥生(きりたに やよい)という名の能力者だった。
私は、生まれつき、妖怪など、人の目には見えないものが見えていた。
幼い私はそれを素直に口にだし、気味悪がられていた。
家族にさえも。

そして私は、仕事を理由に養育院に入れられた。
捨てられたのだろう。
そこでも私は仲間はずれにされていた。
しかしある日、そんな私を養女にしたいという資産家が現れたのだ。
名前は、桐谷 壮一(きりたに そういち)
彼は私にこう言った。

「私は能力者だ。世の中で悪さをしている妖怪を祓う仕事をしている。そして、君には妖怪が見えている。そうだろう?君のことは噂で聞いた。見えもしないものを見えるという子供がいる、とね。そこで少し前から君の様子を観察させてもらったよ。他の人は、君が時々何もない宙を見つめている、と言っていたが、その視線の先にはいつも、妖怪がいた。君には、能力者になる素質がある。本来、能力者の素質を持つ子供は能力者の親から生まれてくるのだけれど、君はどうやら何かの間違いで一般人の家庭に生まれてきてしまったようだね。」

今まで大人は、私に見えているものを否定するだけで、この人のように肯定する大人はいなかった。
初めて聞く考えに驚いたが、同時に嬉しかった。
私の言うことを信じてくれる人がいる。
私と同じものが見えている人がいる。
私の、仲間がいるのだと。

「能力者には、力がある。それは、妖怪を見ることのできる力、妖怪の力に対抗する札をつくる力、そして、守護獣を従える力、最後に、それらを使って妖怪を退治する力だ。それらが人の身でありながらできるのが、能力者だ。」

その時私は、本当に自分にそんなことができるのかと驚いたものだ。

「え、そんなことができるんですか?」

思わず聞き返すと、彼は頷いた。
「うん。そして、その力の源は、魂にある。」
魂、と言われても、当時小学四年生だった私にはよく分からなかった。

「たましい・・・?」
「そう、魂。人はね、死んだらまた生まれ変わるんだ。勿論、その記憶はない。魂、というのは、その記憶を封印しているんだ。普通、記憶は魂からは出てこず、永遠に封印されてしまう。生まれる前の記憶は、二度と思い出すことは出来ないんだ。」

生まれ変わる前の記憶が、魂に封印されている・・・
私の魂には、いくつの人生が記憶されているんだろう。
いや、そもそも・・・
この人の言っていることは本当なのか?
疑うような目つきで彼を見る。
彼は私の目をじっと見つめ、ちょっと笑いながらこう言った。

「疑うのは分かるんだけどね、最後まで聞いておくれ。魂の話だけど、極稀に、魂から記憶が漏れ出してしまうことがある。ああ、記憶が漏れ出したからといって、封印が解けた、ということではなく緩んだ、というだけだから、その魂の持ち主が前世の記憶を取り戻す、ということはない。その分、魂がもっと封印を強くしなければ、と思うんだよ。でもね、魂にもランクがあるんだ。そのランクによって、施せる封印の強さも変わってくる。だから魂は、より強い封印を施すために、自らをランクアップさせるんだよ。そしてまた封印をかけ直す。」

分かったような、分からないような、すごく難しい話だった。

「いいかな?一度記憶が漏れ出すのだって、その魂が存在し続ける間に一度あるかないかの出来事なんだ。だけど、本当に稀に、それが何十回も起きてしまう魂がある。体質みたいなものかな。そして、魂がランクアップしてしまうんだ。・・・ちょっと難しいかな?大丈夫?」

確か、その時の私は、大体分かったんだと思う。
コクンと頷いて。話を促した。

「よし、で、その何十回もランクアップした魂というのが、能力者の魂なんだ。ランクアップした魂は、人には見えないものを見たり、その声を聞いたり、退治したりすることができるようになった。君は、そんな魂の持ち主なんだ。」

私の、たましい。
そっと目を閉じる。
神経を研ぎ澄ませて、自らのたましいを感じ取ろうとした。
たましいって、どんなもの?
自分で想像しながら魂を探した。
そんな私を、彼は黙って見つめていた。
しばらく沈黙が続いた。

・・・あ。
見つけた。
私のたましい。
心の深い深いところにあったたましいをひっぱりあげる。
私のたましいは、熱く、強く、力がみなぎっていた。
それは、下手に近づくと焼け死んでしまうような炎で燃え上がっていた。
それは、美しいまでに凜とした強さを誇っていた。
それは、恐ろしいまでの力で溢れ、自身を輝かせていた。
それは、貪欲なまでに力を欲していた。
誰にも負けることのない、強者になることを望んでいた。
この男についていけ。
そうすれば、お前は強者になれる。
誰からも恐れられる強者になれ。
それは私にそうささやいた。

ドクン。

その時私は自らの心臓の音を聞いた。
やけに大きく響いていた。
心の奥に潜んでいた魂は、私の手で明るいところに出てきたのだ。

強くなりたい。
絶対的な強者になりたい。

その声を聞いた私は、男の手を取り、弱い自分を捨てた。

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