能力者は正体を隠す

ユーリ

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高校生編 5月

精一杯 ~朱雲 海side~

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本家は嫌いだ。

自分の行動が全て監視される。
朱雲家にふさわしくない行動だと判断されれば、行動の幅がどんどん狭くなっていく。

苦しい、息苦しい。

幼い頃から、ずっと本家が嫌いだった。
家族には人間らしいところが一切なく、まるで人形。
自分まで感情のない人形になっていく気がする。

必死の思いで金を稼ぎ、自分の家を建てて避難した。
二度とあの家には住まないと、心に決めていた。

だが、今はソラのいる家に住むくらいなら本家にいた方がマシだと思ってしまう。

なぜだろう。

ソラが紫月と付き合っていたところで、どうしたというのだろう。
なぜ、怒りではなく、悲しみや焦りが心を支配するのだろう。

辛い。

ソラが自分以外の男に笑顔を向けたり、頼ったり、抱きしめられるのが許せない。
・・・なんで、こんな気持ちになるのだろう。

僕はいつから、こんなにソラに依存するようになったんだろう。

高校なんて行かせないで、ずっと家の中に閉じ込めておけばよかった。

そんなことを思う自分がまた、嫌になる。
気持ちの整理ができるまで、ソラから離れていようと思った。

なのに。

「待ってるから、カイお兄ちゃんが帰ってくるの。」

背中越しにかけられた言葉。
それを聞いた途端、涙が溢れた。

ソラと別れたくない。

引き返して、抱きしめたい。
不意にそんな衝動にかられて、僕は慌てて修行部屋から出た。

駄目なんだ。
ソラを抱きしめては、いけない。
今ソラを腕の中に囲ったら、僕は本当に、何かから抜け出せなくなる。
『何か』が何なのかは、分からない。
いや、分かりたくない。
分からないようにしなければ。

目を逸らして、気付かないようにする。

それが僕にできる、精一杯だ。

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