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高校生編 6月
化け物
しおりを挟む目の前にいる彼からするのはは土の気配。
土の能力者か。
「お前・・・西園寺、だったよな。何してんだ。それ、彼女のノートだよな。」
蔑みを隠しもしないような、冷たい声。
入学してから今まで、何度か遠目に彼の姿を見たことがあったけど、印象が違うな。
いつ見てもニコニコしてて、明るい雰囲気だった、けど。
よくも悪くも、まっすぐな性格なのかもしれない。
まあ、私の勘だけど。
勘を確信に変えるほど関わる気もないし。
「あ、碧館様!これは、その、間違えで・・・!」
いきなりのことに西園寺さんも言い訳が出てこないみたいだ。
「間違えって何がだ。今、彼女のノートを破っていたよな。彼女が外部生だってことも、分かってるんだろ?テスト前にノートが見れなくなったらどうなるかなんて、分かりきっていることだよな。」
容赦なく西園寺さんを責めていく碧館先輩。
「あ・・・あ・・・わ、私・・・」
だんだんと蒼白になっていく西園寺さんがじりじりと後ずさりしていく。
「も、申し訳ありません・・・そんなつもりでは・・・」
震える声で尚も弁解しようとする西園寺さんを先輩は睨み付けた。
「なぜオレに謝る。謝るべきは彼女に対してだろう。」
西園寺さんは青い顔から一転、顔を真っ赤に染めている。
拳を握りしめて、震えているその姿から、その心情を察することが出来た。
きっと・・・プライドの高い彼女は、庶民の私なんかに謝るなんてできないんだろう。
張り詰めた、居心地の悪い空気が流れる。
あーもう、やだなあこういうの。
心の中でため息をつきながら散り散りに破られた紙を拾い集めた。
そのまま全てゴミ箱に捨てる。
いつの間にか視線が自分に集まっていた。
まあ、当然なんだけど。
こんな雰囲気で一人普通に動いていたら、そりゃあ目立つ、よね。
それは覚悟の上なんだけどっ!
心の中で叫びつつ、表面上はいたって冷静な風を装って西園寺さんたちを振り返る。
「謝罪は結構です。別にひどいことをされたとは思っていませんので。」
強がりでもなんでもない。
ひどいことをされたわけではない。
これは本当に、私の本音。
「だが・・・」
顔をしかめる碧館先輩をチラリと見る。
確かに、他の人にとってはひどいこと、なのかもしれない。
でも、私は・・・
「ノートの内容は、全て覚えています。ですから見直す必要もなければ、テストで不利になることもありません。」
そう言い切ると、私に集まっていた視線が信じられないようなものを見る視線へと変化した。
ここ光陰学園の授業は、かなりレベルが高い・・・らしい。
授業中にとるノートの量もかなり多い。
多分、授業の中で書かれた板書を全てノートに写すのも難しいくらい。
大半の生徒は授業が終わった後も席を立たずにノートをとり続けている。
加えて今破られたのは世界史のノート。
特に書くことが多いものだ。
多分、そんなノートを全て覚えている人はあまりいない。
というか、多分私以外以内。
なんとなく覚えている人はいても、私みたいにテスト前に確認する必要もないほどきちんと覚えているなんて至難の業・・・多分。
でも、カイお兄ちゃんとかなら覚えていても疑問はないな。
うん、サラッて覚えてそう。
血で判断するのはどうかと思うけど、ソウくんもそれくらいできて不思議ではない。
雰囲気が、できそうって感じ?
まあ私、多分今、どちらからも避けられているんだけど。
でもそれも、しょうがないか。
『化け物』
前世で、吐き捨てるように言われた言葉を久々に思い出す。
ふうっと、自分の存在が他から切り離されたような気がした。
前世では慣れ親しんでいた、この感覚。
前世の私が化け物ならば、それよりも強い力を持ってしまった今の私は何だろう。
自嘲気味に小さく笑って、碧館先輩と西園寺さんを見つめた。
少なくとも西園寺さんやクラスメートにとって、私は異質な存在だろう。
外部からの入学者で、光陰部の数人と言葉を交わしている。
排除しようとすれば逆に威圧されてどうにもできない。
「もういいですか。まだ昼食を食べていないんです。」
時計を見ると、昼休みの半分が過ぎようとしていた。
返事がなかったけど、気にせず一礼して教室を出た。
最後に目に映った彼らは、氷のこように固まって私を見ていた。
・・・まあ、そんなものだろう。
今日は屋上で食べようかな。
紫月先輩はもう力を暴走させないから、屋上には来ていないみたいだ。
一人になるにはうってつけの場所。
屋上に続く階段に足を向けた時だった。
「待ってくれ!」
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