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私の父さまは大天使です
しおりを挟む「父さま!お帰りなさい!」
「エリン!ただいま。」
今日も待ちに待ったこの時間がやってきました。
「エリン、ごめんね、寂しかっただろう。」
頭を撫でてくれる大きな手が気持ちいいです。
「いいえ!友達と遊んでいましたから。それに今、父さまがここにいるから、嬉しいです。」
私の父さまは、毎日大忙しです。
なぜなら父さまは、大天使だから。
大天使は多分、天界にいる天使の中で一番忙しいのです。
大天使の役割は、神様がいらっしゃる神界と天界を結ぶこと。
神様が天界に降りてくることはありませんし、天使は神界に昇ることができません。
ただ一人、大天使を除いては。
「ごめんね、本当はもっと早く帰ってくるはずだったんだけど、なかなか神様が納得してくださらなくて。」
申し訳なさそうに言う父さまですが、しょうがのないことなのです。
神様にもいろいろな性格の方がいらっしゃると聞きますが、父さまはそんな一癖も二癖もある神様たちと毎日毎日話し合いをしているのです。
内容はもちろん、神界と天界、そして人間界のことについて。
天界にいる天使は、人間界を監視し、時に介入しています。
人間たちは横暴で、貪欲で、少し目を離せばすぐに悪い方向へと向かってしまうそうなのです。
父さまはそんな人間界の報告をすると共に、神様の意見を聞いて天使の意見とすり合わせているのです。
「いつもお仕事、お疲れ様です。」
天使と神様に挟まれる立場にいる父さまは、きっと大変な思いをしているのでしょう。
でも、そんな姿がかっこよくて、将来大天使になりたいと憧れている子どもたちは大勢いるのです。
「父さま!どうやったら大天使になれるのですか?」
もちろん私もその一人です。
ただ、大天使になれるのはたった一人。
倍率は高いのです。
「エリンは、大天使になりたいの?」
私と目線を合わせるように軽く膝を曲げる父さまが、少し辛そうに見えます。
「はい!・・・父さま?」
やっぱり、変です。
いつもはこんな辛そうな顔、しないのに・・・
「ひょっとして、父さま・・・」
「ん?」
「・・・なんでもありません。」
喉から出かかった言葉を無理やり飲み込みます。
父さまは、私に大天使になってほしくないのですか?
胸によぎった、小さな予感。
声に出して確認したいのはやまやまですが、聞いてはいけないような気がするのです。
聞いてしまったら、後悔するような気が。
いつか、向き合わなければならない日がくるのかもしれません。
「父さま、大好きです。」
「僕もだよ。エリンは父さまの宝物だ。」
でも今は、ただ、父さまのそばにいて、友達と遊んで・・・
それだけで、幸せなのです。
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