大天使の娘です。ある日人間界に落ちてしまいました。

ユーリ

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最初の1人

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「母さま!」

思わず叫んで、自分の声に目覚めました。
彼女に向かって伸ばしたはずの手は、違う誰かに掴まれています。

「目が覚めたか。」

低い、男の人の声。

「王子、様?」

自分の声とは思えない、掠れた声がでました。
輝く金の髪を持つ、この国の第二王子様。
どこか私を案じているような瞳で見つめてきます。

「お前、ここ三日間ずっと眠っていたんだぞ。」

もうここは城だ、と言われ、目だけを動かして周りの様子を確認します。
私が今横たわっているのは、豪華な天蓋があるフカフカのベッド。
広い部屋に高価そうな、でも品の良い調度品。

まばたきをすると、瞳にたまった涙がこぼれ落ちました。

それを見た王子様が、自らが掴んでいる私の腕を見つめ、ゆっくりと下ろしました。
その空いた手を私のまなじりに持って行き、その長い指で涙をぬぐいました。

「辛い夢でも、見ていたのか?」

夢・・・
シン、母さま・・・
思い出すと、また悲しくなってきます。

「はい・・・懐かしい、大事な人たちの夢を。夢でもいいから、もっと長く一緒に、いたかった・・・」

ポロポロポロ・・・
涙腺が決壊します。
みんなに、会いたいです・・・とても。
すぐにでも、会いたい。
みんなの姿を思い出す度に、胸がキュウッと絞られるみたいに痛くなって、切なくなります。

「・・・お前には、幼なじみとか、いたのか?」

なぜか、緊張したような王子様の声。
その声に少し疑問を感じつつ、私はコクリと頷きました。

「はい。とても仲の良い幼なじみが三人、いました。きっと、今頃・・・」

心配してくれていると思います。

その言葉を飲み込んだのは、まるで王子様たちを非難しているようにも聞こえると気づいたからです。
それでも、王子様は私の言おうとしていたことを察してしまったのでしょう。
少し気まずげな表情を浮かべました。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

室内に沈黙が流れます。

『最後に一つ、目覚めてから最初にあなたに声をかけた二人を味方につけなさい。きっとあなたの力になってくれます。』

「あ・・・」

不意に母さまの言葉が蘇って、私は思わず声をあげてしまいました。

「?なんだ・・・?」

いぶかしげな王子様を、私はマジマジと見つめました。
この人が・・・私の力になってくれる人。
信頼しても、いい人。
母さまが、味方につけろと言った人。

口の中がカラカラに乾いてきました。

「あ・・・あの、お水、を・・・」
「ああ、そうだな。気づかずにすまなかった。」

王子様自らグラスに水をついで私に手渡してくれました。
よろよろと起き上がり、うけとります。
冷たい水が喉を滑り落ちて、火照った体を冷やしてくれました。

味方につけるって・・・どうすればいいんでしょうか。
悪い人じゃないっていうのは、分かりました。
でも、味方につけるって、一体どうやって?
私の事情を、どれだけ話して良いんですか?

分からないことばかりなんです。

コンコンコン・・・

「失礼します。」

ガチャッと音がして、開かれていく扉。
目が覚めて出会った、最初の二人。

息を呑んで扉の先にいる人を見つめます。
そこに立っていたのは・・・

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