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二人目
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「失礼します。」
心地よい響きの音が紡がれて、ゆっくりと扉が開いていきます。
ゴクリと唾をのみ、私は扉の向こうの人に注目しました。
明るめの茶色の髪、瞳。
さわやかな印象を受ける、二十歳くらいの男性がそこにいました。
この方は・・・確か、馬車の中で一緒だった気がします。
馬車酔いをした私を心配してくれた人。
・・・はい、悪い人ではなさそうです!
ジイっと見つめていたら、視線を感じたのかバチリと目が合ってしまいました。
私が目が覚めたことに気付いて、少し目を見開いていましたがすぐにその目元を和らげて笑いかけてくれました。
「お目覚めになられたのですね、聖女様。」
「は、はい!あの、ご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした。」
慌ててぺこりと頭を下げるとあちらも慌てたような気配がしました。
「おやめください!私のようなものに頭をお下げになるなど・・・!」
オロオロとしたような彼を困らせてはいけないと思って、そろそろと頭を上げました。
頭を上げた私にホッとしたような彼。
・・・母様が言っていた、『味方』の二人目。
でも本当に、これからどうすればいいのでしょう。
二人が信用できる方だというのは分かりました。
けれど、現時点ではまだ私の味方ではないのです。
どうすれば私が天界に帰る手助けをしてくれるでしょうか。
・・・いえ、そもそもその前に私が天使だということを話さなければいけません。
はたして信じてもらえるでしょうか・・・
「おい、大丈夫か?」
悶々と悩み始めた私を見かねたのでしょうか、王子様が声をかけてきました。
「あ、はい!大丈夫です!ご心配なく。」
心配させてはいけないと勢いよく首を縦に振った私に、茶色の髪の彼が再び笑いかけてきました。
・・・この人の笑顔は、見ていてなんだか安心しますね。
「そういえば、まだ自己紹介をしていませんでしたね。私はアレン・フィル・アブゼミリアンと申します。この国の騎士団長をしております。どうぞ私のことはアレンと。」
アレン・・・さん、ですね。
覚えました!
「はい!えと、私はエリンです。よろしくお願いします。・・・あのもしよろしければ名前で呼んでいただけませんか?」
聖女様と呼ばれるのは、なんだか居心地が悪いです。
「分かりました、エリン様、ですね。」
「はい!」
久しぶりに名前で呼ばれたように感じて、思わず顔が緩んでしまう。
「では、俺もそう呼ぼう。エリン、俺のことはレオンと。」
「は、はい!」
王子様からもそう言われ、私はなんだか嬉しくなった。
やっぱり、名前で呼ばれたほうが嬉しいです。
「よろしくお願いします、レオン様、アレン様!」
心地よい響きの音が紡がれて、ゆっくりと扉が開いていきます。
ゴクリと唾をのみ、私は扉の向こうの人に注目しました。
明るめの茶色の髪、瞳。
さわやかな印象を受ける、二十歳くらいの男性がそこにいました。
この方は・・・確か、馬車の中で一緒だった気がします。
馬車酔いをした私を心配してくれた人。
・・・はい、悪い人ではなさそうです!
ジイっと見つめていたら、視線を感じたのかバチリと目が合ってしまいました。
私が目が覚めたことに気付いて、少し目を見開いていましたがすぐにその目元を和らげて笑いかけてくれました。
「お目覚めになられたのですね、聖女様。」
「は、はい!あの、ご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした。」
慌ててぺこりと頭を下げるとあちらも慌てたような気配がしました。
「おやめください!私のようなものに頭をお下げになるなど・・・!」
オロオロとしたような彼を困らせてはいけないと思って、そろそろと頭を上げました。
頭を上げた私にホッとしたような彼。
・・・母様が言っていた、『味方』の二人目。
でも本当に、これからどうすればいいのでしょう。
二人が信用できる方だというのは分かりました。
けれど、現時点ではまだ私の味方ではないのです。
どうすれば私が天界に帰る手助けをしてくれるでしょうか。
・・・いえ、そもそもその前に私が天使だということを話さなければいけません。
はたして信じてもらえるでしょうか・・・
「おい、大丈夫か?」
悶々と悩み始めた私を見かねたのでしょうか、王子様が声をかけてきました。
「あ、はい!大丈夫です!ご心配なく。」
心配させてはいけないと勢いよく首を縦に振った私に、茶色の髪の彼が再び笑いかけてきました。
・・・この人の笑顔は、見ていてなんだか安心しますね。
「そういえば、まだ自己紹介をしていませんでしたね。私はアレン・フィル・アブゼミリアンと申します。この国の騎士団長をしております。どうぞ私のことはアレンと。」
アレン・・・さん、ですね。
覚えました!
「はい!えと、私はエリンです。よろしくお願いします。・・・あのもしよろしければ名前で呼んでいただけませんか?」
聖女様と呼ばれるのは、なんだか居心地が悪いです。
「分かりました、エリン様、ですね。」
「はい!」
久しぶりに名前で呼ばれたように感じて、思わず顔が緩んでしまう。
「では、俺もそう呼ぼう。エリン、俺のことはレオンと。」
「は、はい!」
王子様からもそう言われ、私はなんだか嬉しくなった。
やっぱり、名前で呼ばれたほうが嬉しいです。
「よろしくお願いします、レオン様、アレン様!」
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