大天使の娘です。ある日人間界に落ちてしまいました。

甘い・・・のかもしれません

幼いころ・・・・いじめられたことがありました。

大天使の娘、というだけで優しく扱われて、素敵な幼馴染に囲まれている私。
母さまこそいないものの、父さまからたくさん愛してもらっていた私。

妬み・・・だったのでしょうか。

それは決まって、父さまも、シンたちもいないときでした。

『なんでアンタなの！』
「アンタばっかりずるい！』

今でも鮮明に思い出すあの声、怒りや憎しみの裏に悲しみや寂しさを隠した表情。
天使とは言ってみても、決して自己犠牲を美徳とするような種族ではありません。
翼や、神力を除けば、それこそ人間そっくり。
暴力をふるわれたこともありました。

でも・・・なぜか私は、彼らのことをだれかへ相談しようとは思わなかったのです。
今となっては、その理由はよく思い出せません。
でも、言おうとは思えなかったことだけは、覚えています。

それでも結局、どこから知ったのか父さまにばれてしまって・・・
ごめんね、ごめんね、と父さまが悲しそうな顔をしていました。

シンたちにも、もちろん知られてしまって。
三人から、泣きつかれました。
エリンのバカ、なんで言ってくれなかったの、って言ったカリンに、胸が痛んだのも覚えています。

でも・・・あの一連の事件の中で、私が一番よく覚えていることは・・・

さんざんみんなに怒られたあと、呆れたような瞳を向け、シンが私に放った言葉でした。



『甘すぎるんだよ、エリンは。』



甘い・・・のかもしれません。
世間知らずだった私は、昔から冷静で、物知りだったシンからすれば、どうしようもなく愚かで、無知で、甘かったのかもしれません。

でも・・・でも。


私には・・・どうしても手放してはいけない、大切な感情があると思うのです。