大天使の娘です。ある日人間界に落ちてしまいました。

綺麗です

「あああああ。どうしましょうどうしましょう。」

やってしまいました。
やらかしました。
意味のないうめき声をあげ、頭はパニック状態。
気なれない綺麗なドレスが頭の混乱に拍車をかけます。

「ううううう。」

さかのぼること、一時間前・・・

＊＊＊

「おいエリン、支度をしろ。国王に会いにいくぞ。」
「はい、分かりまし・・・て、ええ！こ、国王様！？い、いきなりですね。」

突然現れたレオン様に戸惑いながら、頷こうとして・・・さらに戸惑いました。
国王様って、あれです。
国で一番偉い人です。
そんな人に会うって・・・心の準備が！
まあそんなこんなで軽くパニックになりながら、リリーの手によって正装に着替えさせられたのです。

「な、なんか、動きづらい、です。」

今までは動きやすさ重視のワンピースドレスだったのですが、今回のは重いです。
綺麗なんですけど、見るからに高価そうで、ちょっと怖い・・・

「我慢しろ。さあ、行くぞ。」
「は、はい！」

気を引き締めてレオン様のあとを追いました。
けど、ドレスは動きにくいし、靴はなんだか踵がたかくなっていて歩きづらいし・・・
気が付けば、レオン様の姿を見失っていました。

＊＊＊

「これって、迷子、ですよねえ・・・」
「へえ、君、迷子なの？」
「はい、そうで・・・ヒュワア！」

こうなってしまった経緯を回想し、溜息まじりにはきだした言葉。
そこに突然話しかけてきた声にびっくりして、思わず変な声をあげてしまいました。

「プハッ！ヒュワアって、君、面白いねっ！」
「え？あああ・・・面白い、ですか？っていうか、今のは忘れてください・・・」

黒歴史となってしまいそうな声を聞かれ、羞恥に顔が熱くなります。
お願いだから忘れてください・・・

「ねえ、君、名前なんていうの？」
「え、っと。エリン、です。」

改めて彼を見ますと・・・なんというか、綺麗です。
年は私と変わらないくらい。
髪は銀色で、瞳は凍った湖を思わせる青。
繊細ながらも綺麗な顔立ちをしていて、思わず見惚れてしまいそうになるほどです。

「エリン？ああ、じゃあ君が例の聖女か。」
「え？」

なんで知ってるんですか？
まだ私の存在は公にされていないはず・・・
そんな私の疑問に気付いたのか、彼はにこやかに口を開きました。

「では、改めて。僕の名前はディン。君のことを知っているのは、僕がこの国の魔術師長だから、かな。」

ディン・・・
魔術師長ってことは、その。

「えっと、魔術を研究する人、ですか。」
「まあおおざっぱに言えばそうだね。君の力についても大いに関心がある。いつかしらべさせてほしいな。」
「あ、はあ・・・」

調べるって、一体何を・・・
今にも私の体を解剖しそうなまなざしに、一瞬鳥肌がたちました。
気のせい、ですよね・・・？

「そういえばエリン、迷子って言ってたけど、大丈夫なの？」
「・・・あ。」

そうでした。
・・・どうしましょう！？