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聖女伝説の、真実
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「ところで、エリン。」
「はい?」
レオン様とアレン様は、よく私のもとを訪れてくださいます。
困ったことはないか、欲しいものはないか、いつも気にかけてくれ、恐縮してしまいます。
「そろそろエリンを聖女として国王に紹介し、それから貴族や国民に発表しようと思う。」
「あ、あのっ!!」
聖女として、という言葉に、思わず大きな声を出してしまいます。
言おうかどうか、迷っていましたが、いつまでも黙っているのでは、騙しているのと同じです。
「私、聖女なんかじゃ、ないと思います。」
だって、聖女は特別な力を持った人です。
『人』なのです。
天使である私は、“人”という条件をそもそも満たしていません。
天使だから、という理由は話せないものの、ともかく私が聖女ではないということを伝えれば、2人は顔を見合わせました。
アイコンタクトをして、レオン様が真剣な表情でこちらに向き直りました。
「今から話すことは、他言無用だ。俺とアレン、あとは国王と第一王子しか知らないことだ。」
「は、はい。」
他言無用、の言葉に私はゴクリと唾を飲み込みました。
「エリンは、今みで何人聖女が歴史上に現れたか知っているか?」
「えっと、詳しいことは知らないのですが、100年に1度の周期で何人か現れてきた、と。」
神殿ではそのように聞いていました。
「それなんだがな。実は、実際に聖女の力を有していた、本当の意味での聖女は、初代聖女ただ1人。それ以降の聖女は、皆時の権力者が持ち上げた偽物だ。」
「え・・・」
偽物?
じゃあ、初代以降の聖女は聖女の力を持っていなかったんですよね。
それでも、定期的に現れていたのは全て、時の権力者が作り出した偽物。
政治に利用されたってところですよね。
聖女が現れれば、必然的にその時の権力者の株は上がります。
支持率が上がれば、政治も行いやすいですし、暗殺とか、クーデターとかの危険も少なくなるかもしれません。
そして今は、ちょうど先代の聖女が現れてから100年。
ということは・・・
「私を、偽物の聖女として持ち上げて、政治に利用する、ということですね?」
自分の考えを口にだすと、レオン様もアレン様も驚いた顔をしてから、頷きました。
「察しがいいな。理解が早くて助かる。まあ、利用するというのは言葉が悪いが、簡単に言うとそういうことだ。」
だから、私が聖女でなくても構わないってことですか。
これが・・・聖女伝説の、真実。
なるほど、と納得していると、2人が物言いたげな様子なのに気がつきました。
「何か?」
問うと、レオン様がためらいがちに口を開きます。
「いや・・・引き受けて、くれるか?」
「え?」
あまりにも予想外の問いかけに、目を見開きます。
「何を今更なこと言ってるんですか。私はお2人に助けられて今ここにいます。リリーの件でも、感謝してもしきれないことをしていただきました。今この瞬間も、私はお2人のおかげで快適に過ごさせていただいています。」
思い起こせば、感謝でいっぱいです。
だから。
「お2人の、ひいてはこの国の力になれるのならば、喜んでひきうけます。」
力不足かもしれませんが、と付け加えてから、目の前にあった紅茶を一口啜りました。
「そうか・・・感謝する。」
感謝する、の言葉があまりにも温かくきこえて、レオン様の顔色を伺うと・・・
「!」
顔が熱くなりました。
あまりにも・・・笑顔が優しくて。
ドキドキと鼓動が速まっていくのを誤魔化すように、私はもう一度紅茶を喉に流し込みました。
「はい?」
レオン様とアレン様は、よく私のもとを訪れてくださいます。
困ったことはないか、欲しいものはないか、いつも気にかけてくれ、恐縮してしまいます。
「そろそろエリンを聖女として国王に紹介し、それから貴族や国民に発表しようと思う。」
「あ、あのっ!!」
聖女として、という言葉に、思わず大きな声を出してしまいます。
言おうかどうか、迷っていましたが、いつまでも黙っているのでは、騙しているのと同じです。
「私、聖女なんかじゃ、ないと思います。」
だって、聖女は特別な力を持った人です。
『人』なのです。
天使である私は、“人”という条件をそもそも満たしていません。
天使だから、という理由は話せないものの、ともかく私が聖女ではないということを伝えれば、2人は顔を見合わせました。
アイコンタクトをして、レオン様が真剣な表情でこちらに向き直りました。
「今から話すことは、他言無用だ。俺とアレン、あとは国王と第一王子しか知らないことだ。」
「は、はい。」
他言無用、の言葉に私はゴクリと唾を飲み込みました。
「エリンは、今みで何人聖女が歴史上に現れたか知っているか?」
「えっと、詳しいことは知らないのですが、100年に1度の周期で何人か現れてきた、と。」
神殿ではそのように聞いていました。
「それなんだがな。実は、実際に聖女の力を有していた、本当の意味での聖女は、初代聖女ただ1人。それ以降の聖女は、皆時の権力者が持ち上げた偽物だ。」
「え・・・」
偽物?
じゃあ、初代以降の聖女は聖女の力を持っていなかったんですよね。
それでも、定期的に現れていたのは全て、時の権力者が作り出した偽物。
政治に利用されたってところですよね。
聖女が現れれば、必然的にその時の権力者の株は上がります。
支持率が上がれば、政治も行いやすいですし、暗殺とか、クーデターとかの危険も少なくなるかもしれません。
そして今は、ちょうど先代の聖女が現れてから100年。
ということは・・・
「私を、偽物の聖女として持ち上げて、政治に利用する、ということですね?」
自分の考えを口にだすと、レオン様もアレン様も驚いた顔をしてから、頷きました。
「察しがいいな。理解が早くて助かる。まあ、利用するというのは言葉が悪いが、簡単に言うとそういうことだ。」
だから、私が聖女でなくても構わないってことですか。
これが・・・聖女伝説の、真実。
なるほど、と納得していると、2人が物言いたげな様子なのに気がつきました。
「何か?」
問うと、レオン様がためらいがちに口を開きます。
「いや・・・引き受けて、くれるか?」
「え?」
あまりにも予想外の問いかけに、目を見開きます。
「何を今更なこと言ってるんですか。私はお2人に助けられて今ここにいます。リリーの件でも、感謝してもしきれないことをしていただきました。今この瞬間も、私はお2人のおかげで快適に過ごさせていただいています。」
思い起こせば、感謝でいっぱいです。
だから。
「お2人の、ひいてはこの国の力になれるのならば、喜んでひきうけます。」
力不足かもしれませんが、と付け加えてから、目の前にあった紅茶を一口啜りました。
「そうか・・・感謝する。」
感謝する、の言葉があまりにも温かくきこえて、レオン様の顔色を伺うと・・・
「!」
顔が熱くなりました。
あまりにも・・・笑顔が優しくて。
ドキドキと鼓動が速まっていくのを誤魔化すように、私はもう一度紅茶を喉に流し込みました。
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