2 / 13
2
しおりを挟む
「ここに来るまで、誰にも見つかってはいないね?」
「えぇ。もちろんですわ」
カメーリエはそう言いつつも、本心ではこの密会現場を誰かに見られたいと願っていた。そして、リーベ公の寵愛を受けることが出来るのは自分だけだということを周知させたかったのだ。
(そうすれば、いつもリーベ様を取り巻いてるあの子達を出し抜けるわ……)
カメーリエは心の中でほくそ笑んだ。彼女の心からはすでに劣等感は消え去り、優越感が支配していた。
「それでは、行きましょうか」
リーベは聖堂の扉を開けて中に入った。カメーリエも後に続こうとしたが、突如聖堂の中から漏れ出た強烈な臭気に、足を止めた。
「どうかしたかい?」
「え……?あ、いえ何でもございませんわ」
カメーリエは一瞬聖堂の中に入ることを躊躇い、リーベを振り仰いだが。しかしリーベは何事もないように彼女を聖堂の中に招き入れようとするので、彼女は再び足を踏み出した。
聖堂の中は椅子も教壇もなく、寒々としていた。先程から感じていた臭気は一層濃くなり、カメーリエは吐き気を覚えた。
「リーベ様、ここは一体……」
ふと、彼女の視界に何かが映った。聖堂の一番奥――祭壇が置かれているはずの場所に、それはあった。
「……!」
そこには、鉄の器具で宙吊りにされた女の死体があった。ステンドグラスを通して聖堂内に入ってきた月光が、彼女の生気を失った顔と、赤黒く染まった体を浮かび上がらせていた。
言葉を失ったカメーリエの耳に、聖堂の扉が閉まる音が届いた。
「見せてくれるのでしょう? 熱く廻る貴女の血を……」
カメーリエの体に、背後から近づいてきたリーベが腕をまわした。
その腕は、異様なほど冷たかった。
リーベの腕がカメーリエの首元に回された。その瞬間、カメーリエは目の前の死体が自分に待ち受けている運命である事に気がつき、喉につっかえていた悲鳴が飛び出していった。
「きゃああああ……」
カメーリエの叫び声は、自身の首が折れる音に掻き消された。
「えぇ。もちろんですわ」
カメーリエはそう言いつつも、本心ではこの密会現場を誰かに見られたいと願っていた。そして、リーベ公の寵愛を受けることが出来るのは自分だけだということを周知させたかったのだ。
(そうすれば、いつもリーベ様を取り巻いてるあの子達を出し抜けるわ……)
カメーリエは心の中でほくそ笑んだ。彼女の心からはすでに劣等感は消え去り、優越感が支配していた。
「それでは、行きましょうか」
リーベは聖堂の扉を開けて中に入った。カメーリエも後に続こうとしたが、突如聖堂の中から漏れ出た強烈な臭気に、足を止めた。
「どうかしたかい?」
「え……?あ、いえ何でもございませんわ」
カメーリエは一瞬聖堂の中に入ることを躊躇い、リーベを振り仰いだが。しかしリーベは何事もないように彼女を聖堂の中に招き入れようとするので、彼女は再び足を踏み出した。
聖堂の中は椅子も教壇もなく、寒々としていた。先程から感じていた臭気は一層濃くなり、カメーリエは吐き気を覚えた。
「リーベ様、ここは一体……」
ふと、彼女の視界に何かが映った。聖堂の一番奥――祭壇が置かれているはずの場所に、それはあった。
「……!」
そこには、鉄の器具で宙吊りにされた女の死体があった。ステンドグラスを通して聖堂内に入ってきた月光が、彼女の生気を失った顔と、赤黒く染まった体を浮かび上がらせていた。
言葉を失ったカメーリエの耳に、聖堂の扉が閉まる音が届いた。
「見せてくれるのでしょう? 熱く廻る貴女の血を……」
カメーリエの体に、背後から近づいてきたリーベが腕をまわした。
その腕は、異様なほど冷たかった。
リーベの腕がカメーリエの首元に回された。その瞬間、カメーリエは目の前の死体が自分に待ち受けている運命である事に気がつき、喉につっかえていた悲鳴が飛び出していった。
「きゃああああ……」
カメーリエの叫び声は、自身の首が折れる音に掻き消された。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
行かないで、と言ったでしょう?
松本雀
恋愛
誰よりも愛した婚約者アルノーは、華やかな令嬢エリザベートばかりを大切にした。
病に臥せったアリシアの「行かないで」――必死に願ったその声すら、届かなかった。
壊れた心を抱え、療養の為訪れた辺境の地。そこで待っていたのは、氷のように冷たい辺境伯エーヴェルト。
人を信じることをやめた令嬢アリシアと愛を知らず、誰にも心を許さなかったエーヴェルト。
スノードロップの咲く庭で、静かに寄り添い、ふたりは少しずつ、互いの孤独を溶かしあっていく。
これは、春を信じられなかったふたりが、
長い冬を越えた果てに見つけた、たったひとつの物語。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる