The bloody rase

奈波実璃

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 幾許かの時が経った。聖堂の最奥には、先ほどと変わらぬように、死体が宙吊にされていた。
しかしその死体は先ほどのものよりも新鮮で、真っ赤な血が滴り落ちて死体の真下に湖を作っていた。
 その湖の真ん中でリーベは祈るように跪いていた。頭上から滴り落ちる血液を全身で浴びていた。
 その赤く濡れた表情は、恍惚の色を浮かべていた。


 リーベが血に快楽を見出したのは、彼が十歳の時であった。父親と狐狩りに行く折、道中狼の群れに遭遇した。リーベ達は命からがら逃げ出したものの、侍女の一人がリーベを庇い負傷した。その時自分の頬に飛び散った血液に、彼は今までに感じたことのない高揚感を覚えた。
 それからというもの、彼は血に異様なまでに執着した。最初は小動物を殺して血液を得ていたが、成長するにつれて人間――特に若い女性にも手を出し始めた。
 彼にとって、殺すことはあくまでも手段だ。彼はここ十数年、いかに効率よく血を啜り取るか、そればかりを考えて生きてきた。
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