The bloody rase

奈波実璃

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 リーベの屋敷では、定期的に舞踏会が開かれている。
表向きには、貴族達の社交場を提供するという名目で開かれているものであったが、実際は、リーベが新たな獲物を探すために催されているものだった。
 リーベは大広間の中心で、沢山の娘達に囲まれていた。
 彼の周りを取り囲むのは、大抵は有力貴族の娘達だった。
 しかし、リーベは彼女達を選んだりはしない。家の力が強ければ強いほど、行方不明になった時の騒ぎが大きくなってしまうからだ。
 リーベが狙っているのは、その様子を嫉妬と羨望の眼差しで眺めている弱小貴族や成金商人の娘達だった。
ふと、リーベは窓の外の景色に目を止めた。
 窓の外には、美しい庭園が広がっていた。
 その庭園の中央に、リーベのよく知る女性を見かけた。
リーベは、適当な理由をつけて大広間を後にすると、庭園まで下りてきて彼女に声をかけた。
「セーレ?」
「……リーベ様? ……ご機嫌麗しゅうございます」
 セーレと呼ばれた女性はリーベの姿を認めると、深々と頭を下げた。
彼女の栗色の柔らかな髪が、それに合わせてふんわりと靡く。
「こんなところで、どうしたんだい?」
「いえ……今年も花が綺麗に咲いていたので、つい……。ここなら警備の兵も通るので、危険も少ないでしょうし」
 やはり昨今の行方不明事件のためか、セーレの表情も浮かないものであった。――その原因が目の前にいるとは、露ほど思ってはいないだろうが。
 リーベは庭園を見渡した。確かに、色とりどりの花が、見渡す限りにいっぱいに咲き誇っていた。
「君は舞踏会には来ないのかい?」
 リーベの言葉に、セーレは困ったように笑った。
「あのような場所は、得意ではありませんので……」
「そう……」
セーレは再び庭園の花々を見渡した。リーベは彼女の横顔に一抹の寂しさを覚えた。
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