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それからしばらく、リーベは自分がどのように過ごしていたか、記憶が不確かだった。
ただ周りの人間に自分の心情を悟られまいと、何ともないように振る舞っていたことだけは覚えている。
こんな心境でも、彼は『日課』を忘れることはなかった。
今日もあの古びた聖堂には、新しい死体が吊るされている。
……けれど、彼の心が満たされることはなくなってしまった。
むしろ血を浴びれば浴びる程、哀しみとも切なさともつかない、虚しい空気が彼を包むのだ。
リーベの胸の中は、まるで鉛が押し込まれたように重く沈んでいた。
彼は自分の心を支配するものの正体が、分からなかった。
いや、本当は分かっているのだ。漠然とではあるが、自分の心にある感情が芽生えたということは。
けれど彼は、それを直視することができないのだ。
彼は新たに吊るされた死体を、冷えた瞳でぼんやりと眺めながら、その感情に身を焦がすのだった。
「セーレ……私は……君を……」
その次の言葉は、冷たい木枯らしにさらわれていった。
そしてまた季節が廻り、春が再びやってきた。
夕日の傾く執務室で、リーベは無為に椅子に座っている。
彼の手には、一通の手紙が握られていた。
明日、アウグストとセーレの結婚式が執り行われるのだ。
彼の瞳は虚ろに窓の外の中庭を見つめていた。
ふと、彼の瞳がある一点を捉えた。
アウグストが正装に身を包み、中庭を歩いていたのだ。……白いドレスを身に纏い、ベールを被るセーレを伴いながら。
二人は何か談笑をしながら中庭の薔薇の合間を楽しげに歩いている。
ふと、リーベは自分の胸の奥に炎が灯ったことに気がついた。
その炎は大きく膨れ上がり、彼の身を包んだ。
ただ周りの人間に自分の心情を悟られまいと、何ともないように振る舞っていたことだけは覚えている。
こんな心境でも、彼は『日課』を忘れることはなかった。
今日もあの古びた聖堂には、新しい死体が吊るされている。
……けれど、彼の心が満たされることはなくなってしまった。
むしろ血を浴びれば浴びる程、哀しみとも切なさともつかない、虚しい空気が彼を包むのだ。
リーベの胸の中は、まるで鉛が押し込まれたように重く沈んでいた。
彼は自分の心を支配するものの正体が、分からなかった。
いや、本当は分かっているのだ。漠然とではあるが、自分の心にある感情が芽生えたということは。
けれど彼は、それを直視することができないのだ。
彼は新たに吊るされた死体を、冷えた瞳でぼんやりと眺めながら、その感情に身を焦がすのだった。
「セーレ……私は……君を……」
その次の言葉は、冷たい木枯らしにさらわれていった。
そしてまた季節が廻り、春が再びやってきた。
夕日の傾く執務室で、リーベは無為に椅子に座っている。
彼の手には、一通の手紙が握られていた。
明日、アウグストとセーレの結婚式が執り行われるのだ。
彼の瞳は虚ろに窓の外の中庭を見つめていた。
ふと、彼の瞳がある一点を捉えた。
アウグストが正装に身を包み、中庭を歩いていたのだ。……白いドレスを身に纏い、ベールを被るセーレを伴いながら。
二人は何か談笑をしながら中庭の薔薇の合間を楽しげに歩いている。
ふと、リーベは自分の胸の奥に炎が灯ったことに気がついた。
その炎は大きく膨れ上がり、彼の身を包んだ。
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