The bloody rase

１１

　やがてセーレの瞳に『それ』が映し出された。
　肉が腐れ落ち、白い骨が剥き出しになりながらも、天井から垂れ下がる鉄の拘束具に中吊りにされるその死体を……。
　その景色に、セーレは思わず息を呑んだ。
「大丈夫。君のことは、あんな雑に扱ったりしないさ。君は、私の……愛しい人だから」
　髪にリーベの息がかかると同時に、セーレは地面に降ろされた。
　彼は茫然とするセーレのベールを取り払い、その頬を撫でた。
　そのリーベの表情は、幼いセーレの傍にいつもいたリーベと何一つ変わってはいなかった。
「あ、あぁ……」
　セーレはそんな彼に、何か言おうとして唇を開いた。
　けれど彼女の喉は掠れた声を出すことが精いっぱいで、リーベにその言葉を届けることができなかった。

　中庭の薔薇は、月下に満開に咲き誇っていた。
　一面に己の赤を放ち、ただ、密やかに。