Trypophobia

奈波実璃

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 それから数十分後、ミキねぇはベランダの網戸の前に張り付いて外を見上げていた。
「そんなに見つめてても、蜂の巣はなくならないし洗濯物も取り込めないよ」
 私はスマホでSNSを覗きながら、姉の奇行を咎めた。
 私たちは大屋さんにすぐに連絡をして、業者さんを呼んでもらった。
 業者さんはすぐいらっしゃるそうだ。

「ううん……そうじゃないの。ただちょっと……可愛そうと思って」
 ミキねぇは、今もハニカム構造から出入りする蜂を目で追い続ける。
 ……もう何も言うまい。
 これが私の姉だということは、生まれた時から分かっているつもりだ。

 その時、玄関のチャイムが鳴った。
 私はスマホをソファーに放り投げるように置くと、玄関へ向かった。



 業者さんは私たちの部屋のベランダに梯子をかけて、蜂の巣を撤去した。
 その様子をミキねぇは下から、私はベランダの網戸越しに伺った。

 蜂の巣の駆除は予想以上に早く終わった。
 私は引き続き網戸越しに外を眺めた。
 地上では、ミキねぇが業者さんに何か言いながら頭を下げて代金を渡していた。

 私は一段落した安堵に胸を撫で下ろす。
 けれど、どうしても業者さんの持つビニール袋から目が離せなかった。
 あの中にはさっきの蜂の巣がある。
 私の頭の中は、もうあのハニカム構造で一杯になっていた。
 何故だか、あの小さな穴の事を思い出すと頭がぼーっとするような、熱くなるような、クラクラするような……とにかくクセになっていたのだ。
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