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ーーまた、あの夢だ。
全身を覆う小さな無数の穴。
私はお風呂場で一生懸命それを落とそうと体を洗い続ける。
皮が剥けても。血が滲んでも。
どれだけ洗っても、小さな無数の穴は剥がれない。
涙が滲む。痛くて、気持ち悪くて。
私は止められない……。
何があっても止められない……。
「ただいま! エリカ、大丈夫?」
私はまたあの明るい声で起こされた。
「……」
最早それに答える気力すらない。
けれどミキねぇはそんなことは意に介すことなく続ける。
「今日ね、エリカに元気になってもらいたくてお花屋さんに寄ったの。そしたら、すごい花を見つけたの!」
私の枕元に座るミキねぇのその言葉に、私はギョッとして首をもたげた。
「もしかして、蓮の花とか……?」
私の言葉に、ミキねぇは一瞬驚いたように目を見開いたけれど、すぐにまた笑顔に戻った。
「違うわ。もしかして、蓮がよかった?」
違う、その真逆。という意思をこめて首を振った。
「これなんだけど……」
ミキねぇが背中から花束を取り出す。
小さなピンクの花が沢山ついた可愛らしい花束だった。
「この花ね、エリカって言うの。素敵でしょ?」
私はその花に釘付けになった。
ピンクの小さな花は、群れになって私の網膜を通して脳ミソを焼け爛らせようとする。
その感覚は、蓮の実を見た時と同じものだった。
私は衝動的にミキねぇから花束を奪い取った。
そしてそれを力ずくに引き裂いた。
何度も、何度も。
花が散り『集合体』ではなくなるまで。
やがてそこには、顔を青くするミキねぇと息を荒げる私、そして滅茶苦茶になった『エリカ』の残骸だけが残った。
凍りついたような束の間の静寂。
それを破ったのも私だった。
「なんで……こんなもの買ってきたの……!!」
絞り出すように叫んだ。
私は固く閉じたまぶたの裏にも残る『エリカ』の残影を振り払うように布団に潜り込んだ。
全身を覆う小さな無数の穴。
私はお風呂場で一生懸命それを落とそうと体を洗い続ける。
皮が剥けても。血が滲んでも。
どれだけ洗っても、小さな無数の穴は剥がれない。
涙が滲む。痛くて、気持ち悪くて。
私は止められない……。
何があっても止められない……。
「ただいま! エリカ、大丈夫?」
私はまたあの明るい声で起こされた。
「……」
最早それに答える気力すらない。
けれどミキねぇはそんなことは意に介すことなく続ける。
「今日ね、エリカに元気になってもらいたくてお花屋さんに寄ったの。そしたら、すごい花を見つけたの!」
私の枕元に座るミキねぇのその言葉に、私はギョッとして首をもたげた。
「もしかして、蓮の花とか……?」
私の言葉に、ミキねぇは一瞬驚いたように目を見開いたけれど、すぐにまた笑顔に戻った。
「違うわ。もしかして、蓮がよかった?」
違う、その真逆。という意思をこめて首を振った。
「これなんだけど……」
ミキねぇが背中から花束を取り出す。
小さなピンクの花が沢山ついた可愛らしい花束だった。
「この花ね、エリカって言うの。素敵でしょ?」
私はその花に釘付けになった。
ピンクの小さな花は、群れになって私の網膜を通して脳ミソを焼け爛らせようとする。
その感覚は、蓮の実を見た時と同じものだった。
私は衝動的にミキねぇから花束を奪い取った。
そしてそれを力ずくに引き裂いた。
何度も、何度も。
花が散り『集合体』ではなくなるまで。
やがてそこには、顔を青くするミキねぇと息を荒げる私、そして滅茶苦茶になった『エリカ』の残骸だけが残った。
凍りついたような束の間の静寂。
それを破ったのも私だった。
「なんで……こんなもの買ってきたの……!!」
絞り出すように叫んだ。
私は固く閉じたまぶたの裏にも残る『エリカ』の残影を振り払うように布団に潜り込んだ。
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