Trypophobia

奈波実璃

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「その……ごめんね。私……私……」
 ミキねぇの泣きそうな、途方に暮れたような声で、私の頭が芯から冷めるような感覚がした。


 ーーミキねぇは私のために、買ってきてくれたのだ。
 ーー花は私のためにあったんだ。 
 ーー何の罪はないじゃない。花にも、ミキねぇにも。


 やがてミキねぇが片づける気配がし始めた。

 ミキねぇはいつもそうだ。
 悪いのはいつも私なのに、先に謝るのはミキねぇの方。
 おかげでいつも謝るタイミングを逃してしまう。

 やがて片づけが終わったのか、ミキねぇの気配が離れた。
 そのしばらく後に聞こえたのはシャワーの音だった。
 落ち込むとシャワーでまぎらわすのも、ミキねぇの癖だ。

 なんて言って謝ればいいのだろうか? そもそも、謝って済む問題なのか?
 けれど今はただただ、罪悪感で胸がいっぱいだった。

(謝らなきゃ……)
 私は自然とそう思った。
 体調が悪かったとか、そんなのはただの言い訳だ。
 ここには、私がミキねぇを傷つけた事実がそこにあるだけ。

 私は布団から起き上がると、意を決してお風呂場へ向かった。



 お風呂場ではシャワーの音が止まり、ミキねぇが湯船に沈む音が聞こえる。
 私はこっそりお風呂場の戸に近づいた。
 磨りガラスの戸に自分の影が映らないように細心の注意を払って。

 けれどここまで来て、思わず怖じ気づいてしまった。
 果たして、ミキねぇは許してくれるだろうか。
 いや、ミキねぇの性格上許してはくれるだろう。
 けれど、それがむしろ怖かった。
 ミキねぇの優しさは時に私を傷つける。
 こんな優しい人を私は傷つけてしまったという、更なる罪悪感に苛まれてしまうから……。
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