或る男とのイタい思い出

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イケメンで近寄りがたい雰囲気の男と知り合った。
その日は夜勤のコンビニバイト中、中年客に因縁をつけられていると、背後の大きな影が客を小突いた。「邪魔なんだけど」

助けられる形になった俺は礼を言った。男は特に気にしていないようだった。
バイト中や店の休憩中に何度か男を見かけ、世間話をするようになった。話してみると気さくな感じで、もっと仲良くなりたいな、と思った。

煙草を吸うときの、男の顔を近くで見るとドキっとする。イケメン俳優Aとイケメン俳優Bを混ぜたような顔だ。
男が笑うとき、眩しそうにクシャっと笑うのが好きだった。
ある時、男が鍵を無くして家に入れないと、コンビニの前でしゃがんでいたので、家に来るか?と誘った。

何かあっても盗られるような物も無いし。大丈夫だろって思ってた。何より、男にもっと近づきたい気持ちがあった。
その夜はお互い酒をしこたま飲み、、気づくと俺は男に犯されてた。動画も撮られた。
 思い出すと頭がガンガンし、尻の穴に違和感を感じる。
男に会うのが怖かったが、向こうから会いに来た。動画を消して欲しい、と頼むと、俺の宝物だから、と断られた。
なぜこんな事した、と聞いても、したかったから、と、ケロッとした態度だ。
動画を消して欲しいし、無理矢理セックスされるのも好きじゃない。布団に入り、男の態度を反芻した。(「宝物だから。」)

宝物って言われて嬉しい気持ちもどこかにあった。

男と一緒にいると、尻がひくつくというか、胸がざわつく感じがする。それを男に察されて、また無理やりセックスする流れになった。 
激しい行為が終わりぐったりしている俺をよそに、男は台所で何か作っている。男は焼き飯をこちらに持ってきて、俺の分も並べた。

「冷めるぞ」男に言われ、俺はノロノロとスプーンを手にとった。

一緒にご飯を食べていると、その時は、まるで、普通の恋人みたいだった。
 

男は俺の気持ちお構いなしに家に来てくつろぐ。俺は気にしてないようにテレビとか、何気無い会話する。
好きなお笑い芸人が同じで盛り上がったりもした。家族の失敗談なんかも話して、男に話題を振ると、空気がピリッとなる。

無理矢理セックスや動画の事を許してはないけど、男と一緒に居ると親近感は増していく。
男の家に泊まる事が増えたが、男は夜急に出かけていくこともあった。

男の体に有る傷や、生活感や態度から、男の家庭環境が悪かったのを察し、自分が支えたい気持ちが芽生えてくる。
男の雑な生活を見てるとつい手出ししたくなるのは長男の性だろうか。
男も俺に世話を焼かれるのに甘えている感じがする。それがなんだかくすぐったく感じる。

男とゲーセンに行った時、ジュースを買って男のところに戻ると男は知らない男と立ち話していた。
男が俺を、「俺のツレ」と簡単に紹介した。知らない男は俺を検分するように眺め、嘲笑するように言った「今度はそいつ?」「お前の養分」
男は鬱陶しそうな態度をにじませ、その男を追い払った。

後で男にあれはどういう意味だよ?と聞いた。男は「俺の昔のダチと比較してんだろ」と言った。
俺はモヤモヤが晴れなかった。俺は男の昔のダチの代わりなんだろうか?

ある日、俺が「こういうの食べたことないだろ~」て高いフルーツを持ってくると、男は「何でそう思った?」て、空気がピリッとなり、
「ごめん。いや、好きかなと思って」と俺はすぐに謝った。男は「あっそ」といいながら、フルーツをかじった。俺はホッとした。
その時は男を傷つけたくないと思ってたが、今思うと、自分でも気づかないうちに、男の機嫌を取る態度をとっていた。

男に無理矢理押し倒されるとあの日のことがフラッシュバックする。
抵抗すると、「俺の事好きなんだろ?助けたいと思ってるんだろ?」と詰られ、言葉に詰まった。
俺はこいつの事が好きなのか。
「嫌ならいいよ。もう顔を見せるな」
「本当は俺の事見下してんだろ。俺の傷見てるのバレてんだよ。俺を可哀そうな虐待児だと思ってんの?ふざけんなよ」
イライラと物に当たる男に、違うって言いたかったけど、言葉が出なかった。

その日は自分の家に帰った。
無理やりされた事を許してる訳じゃない。動画のことだってこのままで良いわけない。どうしたいのか、
どうなりたいのかグルグルしてると、友達から連絡があった。最近の男とのことを、かいつまんで話した。

「お前それ、やばいんじゃない」「その男良い噂聞かないし、嵌められてるんじゃねえか」友達は俺のことを心配してるんだろう。
だがそう思う以上に腹が立った。「お前があいつの何を知ってんだよ」と熱くなり、その場を切り上げた。
何故こんなに腹が立つのか。俺だってあいつの全てを信じてるわけじゃない。嫌な目だってさんざん見た。それでも離れられないのは、男を俺がなんとかしたいって気持ちと、その努力が無駄になる感じがしたからだ。

一晩、男の事を考えた。色々考えても、チラついて頭を離れないのは、男のクシャっと笑う顔だった。
次の日男の家に行って、切り出した。「俺はただ、お前を助けたいっていうか、お前が傷つかないようにしたいっていうか」
いきなりやってきて要領のつかない事をもごもご言う俺を、男は黙って見つめ、少し目を細めた。
笑っているようだったが、そうでないようにも見えた。
「俺も言い過ぎたよ」そう言って俺の頭を撫でた。俺は安心していた。


男は夜中に居なくなったすることが増えた。ある日、刑事を名乗る男が来て、男が犯罪に関わっている可能性を言われた。
ショックは大きかったが、やっぱりそうか、という気持ちもどこかにあった。俺は男を説得することを決意した。
男は窓際に腰掛け、ゆったりと煙草をふかしている。
「話がある」俺が言うと、男は目線だけをこちらに向けた。
「お前の事が好きだから、悪い事をして欲しくない。まだやり直せるから警察に行こう。」

男は急に肩を揺らして笑った。その後主人公にゆっくり近づいてくる。

「大丈夫、俺はお前を見捨てたりしない。」「俺が正しい道に導く」

主人公の震える手を握る。

「俺はお前を助けたいんだ!」

口と口が触れそうな程顔が近づく。男の目には有無を言わせない力が有った。優しい声で言った。

「宝物って言ったろ」

「お前と一緒に居ると嬉しいんだ」

「お前も嬉しいだろ」

「両想いだな」

男は主人公にキスをした。初めてだった。

「それだけでいいじゃん」と男は目を細めて言った。「後はどうでもよくない?」

主人公は真っ赤になって震えていた。それは、ずっと男に言ってほしかった言葉と、キスだった。

(そう言って有耶無耶にしようとしてるだろ、いつもそうやってはぐらかして。騙されると思うなよ)

と言おうと思いながら男を跳ね除けたつもりだったが、

手は男を抱きしめていた。

見透かされてると思った。俺はアイツを正したいわけじゃない。ただ俺を求めるアイツが欲しい。

「お前可愛いよな」

男は言った。

「馬鹿で単純で俺に必死になってるのが可愛い」

「ここで捕まるのもいいかもな」

サイレンの近づく音がする。

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