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ナストとフラストとヴァルア
5話【ナストとフラストとヴァルア】
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ヴァルア様は僕を強く抱きしめてから、ベッドを出た。それからフラスト様を寝室に呼んだ。
寝室にやって来たフラスト様はいつも以上に無表情だった。そんな彼に、ヴァルア様が言う。
「兄貴の処遇を考えた」
「そうか。どこが飛ぶのか楽しみだ」
「まさか。さすがに兄弟の体を欠けさせるような真似なんてしない。でも――」
ヴァルア様は悪い笑みを浮かべ、フラスト様を挑発的に手招きした。
「体は使ってもらうよ」
「……なんだ。強制労働か」
「まあ、そんなところかな。端的に言う。俺が不在の間、一週間に一度、ナストの世話をしてやってほしい」
「世話ならアリスやリングがしているだろう」
「彼女たちができない世話……つまり、今日していたことをね」
フラスト様は眉をひそめた。
「とうとう気がふれたか?」
「いいや。正気だよ」
「いや、そうじゃないとそのようなこと、俺に――」
フラスト様の言葉を、ヴァルア様が遮る。
「俺はね、兄貴。お前のことが嫌いだが、誰よりも信用しているんだよ」
「……」
「それに、俺はお前たちの愛を深め合えなんて言っていない。お前に、ナストの〝排泄行為〟の手伝いをしろと言っているだけだ」
「ほう。それは……屈辱的だ」
「だろう? 良い罰だ」
しばし二人は睨み合った。先に目を逸らしたのはフラスト様だった。
「後悔するなよ」
「しないさ」
「はっ。甘く見られたものだ」
「ナストを信じているだけだ」
沈黙が流れる。痛いほど静かだった空間に、フラスト様の舌打ちの音が響いた。
「……気でも遣ったつもりか」
「さあ。なんのことだい?」
「……これが、自由に生きられない俺への労いとでも思っているのか」
「へえ。そんなに嬉しいのか。それならよかったよ」
「……チッ」
フラスト様は僕に一度も視線を向けず、部屋を出て行った。
二人きりになった部屋で、僕たちは見つめ合った。
ヴァルア様がベッドに腰掛ける。また、僕を抱き寄せた。
「フラストはね、彼が言ったように、何一つ自由に生きてこられなかったんだ」
「そうなんですね」
「ああ。親父もフラストには厳しくてね。あいつの生き方は全部親父が決めた。俺が許されることでも許されないし、俺よりもずっと苦労してきた」
「だからあんな偏屈になったんですか」
そう言うと、ヴァルア様は大声で笑った。
「その通りさ。幼いときはもっと明るくて、素直で、よく笑う人だった。それがいつしかあんなひねくれたぶっきらぼうになってしまった。あれは間違いなく親父と俺のせいだね」
「ヴァルア様のせいでもあるんですか?」
「まあ、間接的に。俺は親父の言うことをひとつも聞いてこなかったからね。それなのに可愛がられている俺を見ていたら……心を殺して親父に従っているあいつからしたら、面白くないよね」
「……どうして僕に、そんな話をするんですか?」
「さあ、どうしてだろう」
ヴァルア様は「どうしてだろう」ともう一度呟き、僕の頭を撫でた。
「家族だからかな。分からない」
その日、久しぶりにヴァルア様と夜を過ごした。ヴァルア様は、なぜかいつもより穏やかだった。
「あっ……」
ヴァルア様は僕の奥までペニスを挿入したまま、僕を抱きしめた。そのまま動かず、静かな時を過ごす。
「俺の感覚、忘れないでね」
「忘れません。というか一週間に一度くらい帰ってきてください。寂しいです」
「あはは……ごめん」
「僕に愛を教えるのはあなたなんですよ。分かっているんですか」
「そうだね。ごめんね」
「……こんな僕で、ごめんなさい」
「いいんだよ。うん。いいんだ、これで。これが一番……」
「……」
ヴァルア様は長い時間をかけて、僕の全身にヴァルア様の感覚をしっかり刻み付けるようなセックスをした。全身を撫で、全身を舐め、全身に精液を落とした。体の中も、口の中も、ヴァルア様のペニスの形と味を覚えさせるまで離させなかった。
空が明るんだ頃には、僕の声と精液は枯れ果て、虚ろな目で脱力していた。
ヴァルア様が掛け時計に目をやり、ため息を吐く。
「あと二時間でここを出なきゃいけない」
「そう、ですか……」
僕と目が合ったヴァルア様は優しく微笑み、布団に潜り込んだ。僕を抱きしめ、頭にキスをする。
「それまではこうしていよう」
「はい」
ヴァルア様の鼓動を聞きながら僕は眠りに落ちた。
目が覚めたときには、もう彼の姿はなかった。
寝室にやって来たフラスト様はいつも以上に無表情だった。そんな彼に、ヴァルア様が言う。
「兄貴の処遇を考えた」
「そうか。どこが飛ぶのか楽しみだ」
「まさか。さすがに兄弟の体を欠けさせるような真似なんてしない。でも――」
ヴァルア様は悪い笑みを浮かべ、フラスト様を挑発的に手招きした。
「体は使ってもらうよ」
「……なんだ。強制労働か」
「まあ、そんなところかな。端的に言う。俺が不在の間、一週間に一度、ナストの世話をしてやってほしい」
「世話ならアリスやリングがしているだろう」
「彼女たちができない世話……つまり、今日していたことをね」
フラスト様は眉をひそめた。
「とうとう気がふれたか?」
「いいや。正気だよ」
「いや、そうじゃないとそのようなこと、俺に――」
フラスト様の言葉を、ヴァルア様が遮る。
「俺はね、兄貴。お前のことが嫌いだが、誰よりも信用しているんだよ」
「……」
「それに、俺はお前たちの愛を深め合えなんて言っていない。お前に、ナストの〝排泄行為〟の手伝いをしろと言っているだけだ」
「ほう。それは……屈辱的だ」
「だろう? 良い罰だ」
しばし二人は睨み合った。先に目を逸らしたのはフラスト様だった。
「後悔するなよ」
「しないさ」
「はっ。甘く見られたものだ」
「ナストを信じているだけだ」
沈黙が流れる。痛いほど静かだった空間に、フラスト様の舌打ちの音が響いた。
「……気でも遣ったつもりか」
「さあ。なんのことだい?」
「……これが、自由に生きられない俺への労いとでも思っているのか」
「へえ。そんなに嬉しいのか。それならよかったよ」
「……チッ」
フラスト様は僕に一度も視線を向けず、部屋を出て行った。
二人きりになった部屋で、僕たちは見つめ合った。
ヴァルア様がベッドに腰掛ける。また、僕を抱き寄せた。
「フラストはね、彼が言ったように、何一つ自由に生きてこられなかったんだ」
「そうなんですね」
「ああ。親父もフラストには厳しくてね。あいつの生き方は全部親父が決めた。俺が許されることでも許されないし、俺よりもずっと苦労してきた」
「だからあんな偏屈になったんですか」
そう言うと、ヴァルア様は大声で笑った。
「その通りさ。幼いときはもっと明るくて、素直で、よく笑う人だった。それがいつしかあんなひねくれたぶっきらぼうになってしまった。あれは間違いなく親父と俺のせいだね」
「ヴァルア様のせいでもあるんですか?」
「まあ、間接的に。俺は親父の言うことをひとつも聞いてこなかったからね。それなのに可愛がられている俺を見ていたら……心を殺して親父に従っているあいつからしたら、面白くないよね」
「……どうして僕に、そんな話をするんですか?」
「さあ、どうしてだろう」
ヴァルア様は「どうしてだろう」ともう一度呟き、僕の頭を撫でた。
「家族だからかな。分からない」
その日、久しぶりにヴァルア様と夜を過ごした。ヴァルア様は、なぜかいつもより穏やかだった。
「あっ……」
ヴァルア様は僕の奥までペニスを挿入したまま、僕を抱きしめた。そのまま動かず、静かな時を過ごす。
「俺の感覚、忘れないでね」
「忘れません。というか一週間に一度くらい帰ってきてください。寂しいです」
「あはは……ごめん」
「僕に愛を教えるのはあなたなんですよ。分かっているんですか」
「そうだね。ごめんね」
「……こんな僕で、ごめんなさい」
「いいんだよ。うん。いいんだ、これで。これが一番……」
「……」
ヴァルア様は長い時間をかけて、僕の全身にヴァルア様の感覚をしっかり刻み付けるようなセックスをした。全身を撫で、全身を舐め、全身に精液を落とした。体の中も、口の中も、ヴァルア様のペニスの形と味を覚えさせるまで離させなかった。
空が明るんだ頃には、僕の声と精液は枯れ果て、虚ろな目で脱力していた。
ヴァルア様が掛け時計に目をやり、ため息を吐く。
「あと二時間でここを出なきゃいけない」
「そう、ですか……」
僕と目が合ったヴァルア様は優しく微笑み、布団に潜り込んだ。僕を抱きしめ、頭にキスをする。
「それまではこうしていよう」
「はい」
ヴァルア様の鼓動を聞きながら僕は眠りに落ちた。
目が覚めたときには、もう彼の姿はなかった。
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