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ナストとヴァルア
2話【ナストとヴァルア】
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そう言って、僕の手を上下に動かした。
「うぃっ……うぇぇ……やっ、やめっ……これ以上はやめて……」
「やめないよ。早く自慰をできるようになって、ナスト」
「やだぁっ……やめてっ……怖いよぉ……」
「怖くないよ。ほら、気持ちいいだろう?」
やめてとお願いしても、ヴァルア様はやめてくれなかった。その代わりに、泣いている僕の頬にキスをしたり、上半身をさすったりしている。そのおかげで幾分気は紛れた。
「ヴァルア様……いつまで続くんですか……?」
「最後までだよ」
「……」
僕はペニスを刺激している自分の手を見て、すぐに顔を逸らした。ヴァルア様に動かされているとはいえ、それを言い訳にしたとしても、そう簡単に受け入れられるものではない。
当然快感を覚えるわけもなく、いつまで経っても絶頂が訪れる気配がない。
「ヴァルア様……やっぱり無理です……自分で触れても、気持ちよくありません。むしろ気持ちが悪くて吐きそうです」
「うーむ……重症だなあ」
やっとヴァルア様が手を離してくれた。僕はすぐさま洗面所に駆け込み、泡だらけにして手を洗った。それからアリスを呼んで、ペニスも念入りに洗ってもらった。
「アリス、どうしよう。僕、僕……自分で……」
「ナスト様。ヴァルア様もおっしゃっていましたでしょう? ご自身に触れることは、全く悪いことではないのです」
「僕、穢れていない? どこか悪くなっていない?」
「なっていません。ナスト様はいつも通り、とても美しく、清いままですよ」
「本当に? 神は僕に怒らない? 怒るでしょう?」
「怒りません。それにあなたはもう聖職者ではありませんよ。今のあなたは、ヴァルア様の恋人です」
アリスの言葉にハッとした。そうだ。僕はもう、全てを神に捧げる存在ではない。
「……といっても、僕が全てを捧げていたのは司祭様にだったけど」
「そうですよ。その通りです。あなたが未だに、司祭様が作った掟に従っていることは、ヴァルア様にとってどれほどお辛いことでしょうね」
「……」
本当だ。アリスの言う通りだ。僕はヴァルア様の前でなんて姿を見せてしまったんだろう。
濡れた体を拭いてもらったあと、僕は意気込んでベッドに戻った。ヴァルア様はのんびりとした様子で僕を待っていた。
「おかえり」
僕は返事もせずに、寝衣を捲り上げた。
「ヴァルア様、見ていてください。僕……僕、自分で、しますから……」
「おや。どうしたんだい急にその気になって」
僕はふるふる震える手で自分のペニスを握った。反射的に離そうとしてしまったが、すぐに思いとどまり、強く握り直す。
でも、やっぱり怖い。
「ヴァ……ヴァルア様……僕を抱きしめてください……」
「うん。いいよ」
「こ、こわい……」
「無理しなくてもいいよ」
ヴァルア様はそう言ってくれたが、僕は首を横に振った。そしてゆっくりと、握っている手を上下に動かした。
「ひっ……ひぃっ……」
「上手だよ。うん、上手」
「こわいっ……ヴァルア様……」
「大丈夫。怖くないよ。それはしていいことなんだから」
「キ、キスを……」
「ん」
ヴァルア様がそっとキスをしてくれた。僕は手を動かしたまま、縋るようにヴァルア様に舌を絡めた。
「あ……」
キスの快感が、徐々に全身に広がっていく。自慰による不快感が少し薄れた。それどころか、キスのおかげで少しばかりペニスが勃起した。
「ナスト、上手だよ。俺にしてくれるみたいに、自分のペニスも気持ちよくしてあげて」
「んっ……」
ヴァルア様が、自慰をしている僕を見て嬉しそうに微笑んだ。
「ヴァルア様、嬉しい……?」
「ん?」
「僕が自慰をしていると、嬉しいですか……?」
「うん。嬉しいよ。俺のために頑張って自慰をしてくれている君を見るのは、すごく嬉しい」
「じ、自慰をするのは、悪いことじゃないですか……?」
「全く。俺を喜ばせる行為だよ」
「っ……」
自分に触れることは――自慰をすることは、悪いことじゃない。自慰を拒絶することは、司祭様に囚われたままである自分をヴァルア様に見せることになる。
自慰をすることで、ヴァルア様は喜んでくれる。
それならば――自慰をすることは、悪いことでは全くない。
そう考えたとたん、それまでの不快感が薄らいでいった。むしろ強い悦びを感じたほどだった。
「あ……、んっ……」
甘い声が漏れ、ペニスがまたたく間に硬くなっていく。いやいや握っていた手に力が入り、動きも速くなっていった。
それに気付いたヴァルア様が、ブルッと震えた気がした。
「……ナスト。気持ち良くなってきたのかい?」
「……は、はいっ……。ヴァルア様……僕……ちゃんと自慰ができていますか……?」
「ああ。さっきよりもずっと上手だよ」
「ヴァルア様……っ、僕の自慰、見てください……っ、いっぱい見て……喜んでください……っ」
ヴァルア様が唾を呑み込む音が聞こえた。きっと喜んでくれている。そう確信した僕は、いっそう速く手を動かした。
じわじわと快感が押し寄せてくる。
「あっ……あ、ヴァルア様……っ、出そう……、あっ、あ……っ!」
僕は自分の手で、絶頂を迎えた。
精液が噴き出し床に落ちる。くったりともたれかかった僕を、ヴァルア様がベッドに押し倒した。
「うぃっ……うぇぇ……やっ、やめっ……これ以上はやめて……」
「やめないよ。早く自慰をできるようになって、ナスト」
「やだぁっ……やめてっ……怖いよぉ……」
「怖くないよ。ほら、気持ちいいだろう?」
やめてとお願いしても、ヴァルア様はやめてくれなかった。その代わりに、泣いている僕の頬にキスをしたり、上半身をさすったりしている。そのおかげで幾分気は紛れた。
「ヴァルア様……いつまで続くんですか……?」
「最後までだよ」
「……」
僕はペニスを刺激している自分の手を見て、すぐに顔を逸らした。ヴァルア様に動かされているとはいえ、それを言い訳にしたとしても、そう簡単に受け入れられるものではない。
当然快感を覚えるわけもなく、いつまで経っても絶頂が訪れる気配がない。
「ヴァルア様……やっぱり無理です……自分で触れても、気持ちよくありません。むしろ気持ちが悪くて吐きそうです」
「うーむ……重症だなあ」
やっとヴァルア様が手を離してくれた。僕はすぐさま洗面所に駆け込み、泡だらけにして手を洗った。それからアリスを呼んで、ペニスも念入りに洗ってもらった。
「アリス、どうしよう。僕、僕……自分で……」
「ナスト様。ヴァルア様もおっしゃっていましたでしょう? ご自身に触れることは、全く悪いことではないのです」
「僕、穢れていない? どこか悪くなっていない?」
「なっていません。ナスト様はいつも通り、とても美しく、清いままですよ」
「本当に? 神は僕に怒らない? 怒るでしょう?」
「怒りません。それにあなたはもう聖職者ではありませんよ。今のあなたは、ヴァルア様の恋人です」
アリスの言葉にハッとした。そうだ。僕はもう、全てを神に捧げる存在ではない。
「……といっても、僕が全てを捧げていたのは司祭様にだったけど」
「そうですよ。その通りです。あなたが未だに、司祭様が作った掟に従っていることは、ヴァルア様にとってどれほどお辛いことでしょうね」
「……」
本当だ。アリスの言う通りだ。僕はヴァルア様の前でなんて姿を見せてしまったんだろう。
濡れた体を拭いてもらったあと、僕は意気込んでベッドに戻った。ヴァルア様はのんびりとした様子で僕を待っていた。
「おかえり」
僕は返事もせずに、寝衣を捲り上げた。
「ヴァルア様、見ていてください。僕……僕、自分で、しますから……」
「おや。どうしたんだい急にその気になって」
僕はふるふる震える手で自分のペニスを握った。反射的に離そうとしてしまったが、すぐに思いとどまり、強く握り直す。
でも、やっぱり怖い。
「ヴァ……ヴァルア様……僕を抱きしめてください……」
「うん。いいよ」
「こ、こわい……」
「無理しなくてもいいよ」
ヴァルア様はそう言ってくれたが、僕は首を横に振った。そしてゆっくりと、握っている手を上下に動かした。
「ひっ……ひぃっ……」
「上手だよ。うん、上手」
「こわいっ……ヴァルア様……」
「大丈夫。怖くないよ。それはしていいことなんだから」
「キ、キスを……」
「ん」
ヴァルア様がそっとキスをしてくれた。僕は手を動かしたまま、縋るようにヴァルア様に舌を絡めた。
「あ……」
キスの快感が、徐々に全身に広がっていく。自慰による不快感が少し薄れた。それどころか、キスのおかげで少しばかりペニスが勃起した。
「ナスト、上手だよ。俺にしてくれるみたいに、自分のペニスも気持ちよくしてあげて」
「んっ……」
ヴァルア様が、自慰をしている僕を見て嬉しそうに微笑んだ。
「ヴァルア様、嬉しい……?」
「ん?」
「僕が自慰をしていると、嬉しいですか……?」
「うん。嬉しいよ。俺のために頑張って自慰をしてくれている君を見るのは、すごく嬉しい」
「じ、自慰をするのは、悪いことじゃないですか……?」
「全く。俺を喜ばせる行為だよ」
「っ……」
自分に触れることは――自慰をすることは、悪いことじゃない。自慰を拒絶することは、司祭様に囚われたままである自分をヴァルア様に見せることになる。
自慰をすることで、ヴァルア様は喜んでくれる。
それならば――自慰をすることは、悪いことでは全くない。
そう考えたとたん、それまでの不快感が薄らいでいった。むしろ強い悦びを感じたほどだった。
「あ……、んっ……」
甘い声が漏れ、ペニスがまたたく間に硬くなっていく。いやいや握っていた手に力が入り、動きも速くなっていった。
それに気付いたヴァルア様が、ブルッと震えた気がした。
「……ナスト。気持ち良くなってきたのかい?」
「……は、はいっ……。ヴァルア様……僕……ちゃんと自慰ができていますか……?」
「ああ。さっきよりもずっと上手だよ」
「ヴァルア様……っ、僕の自慰、見てください……っ、いっぱい見て……喜んでください……っ」
ヴァルア様が唾を呑み込む音が聞こえた。きっと喜んでくれている。そう確信した僕は、いっそう速く手を動かした。
じわじわと快感が押し寄せてくる。
「あっ……あ、ヴァルア様……っ、出そう……、あっ、あ……っ!」
僕は自分の手で、絶頂を迎えた。
精液が噴き出し床に落ちる。くったりともたれかかった僕を、ヴァルア様がベッドに押し倒した。
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