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一年:二学期期末考査~二学期最終日
第十四話
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◆◆◆
(凪side)
はは。背筋良すぎ。一人だけ黒板真っすぐ見て、先生の話を熱心に聞いている。
あ、耳に髪かけた。きれいな耳の形してる。いつも隠れているからかな。耳出しただけでちょっとエロく感じる。
こっそりため息を吐いた。退屈なんだろうな。理玖、かしこいから。
……早く学校終わってほしい。学校じゃ、声かけるだけでもイラッとされる。触ろうとなんて思わせてもくれない。
どうして学校では仲良くしてくれないんだろう。
昼休みのとき、一緒にごはんを食べていた友人Aが俺に言った。
「凪さ、最近、鳥次と仲良いよな?」
「そう?」
学校では挨拶くらいしかしていないはずなんだけどな。
「テストんときとか大盛り上がりしてるじゃん」
「あー! そうそう。理玖、学年二位でさ。毎回勝負してんの」
「ひえー、レベルたけぇー……」
でも、と友人Aがクスクス笑う。
「あいつ勉強しかしてなさそうだもんな」
それを聞いていた友人BとCが会話に入ってくる。
「鳥次、友達いないしね~!」
「お昼ご飯もずっと一人で食べてるもんね。ごはん食べてるときも教科書眺めてるよ」
「えー、まじ!? 勉強オタクじゃん」
「ねー。きっと勉強が友達なんだよ」
「ひえー」
なんでそこで引いた声出すんだ? そこまで勉強に夢中になれるってすごいことじゃん。俺はそんな理玖を尊敬してるし、かっこいいと思っているんだけど。
それから友人たちは理玖の話で盛り上がった。
「そういえば体育祭のときに写真撮ってもらったんだけどさ。話しかけたら顔真っ赤にしてキョドキョドして、まともに会話できなくて。ちょっとキモかったー。しかも写真もブレッブレだし!」
「眼鏡な上に前髪長すぎて、顔半分隠れてるよね。何考えてるか全然分からないからちょっと怖い」
「この前ちょっと用事で話したんだけど、小声すぎて何言ってんのか全然分かんねーの! それなのにこっちが悪いみたいに舌打ちされたしさ。俺あいつあんま好きじゃない」
あれ……? 俺の知っている理玖と全然違う。
「ちょっと……みんな勘違いしてるって。理玖、そんな悪いヤツじゃないし、むしろ……」
「凪は誰とでも仲良くなれるもんな―。お前ってやっぱすげえよ」
「俺は別にすごくなくて、理玖が良いヤツだから……」
「良いヤツだったらボッチじゃねえだろ」
「……」
それってなんか関係ある? 良いヤツほど友だち多いの? じゃあお前らは理玖より良いヤツなの?
少なくとも俺は、理玖からクラスメイトの悪口聞いたことないよ。
「……ごちそうさま」
この場にいたら空気を壊すことしか言えそうになかったから、出て行くことにした。
「えっ、凪、ちょっと……」
引き留められたような気がするけど、俺は背を向けたまま歩いていった。
◆◆◆
その日の夜、理玖に訊いてみた。
「理玖、なんで友だち作らないの?」
「は? 作らないんじゃなくて作れないんだよ」
「なんで?」
「なんで? 見て分かんない?」
「うん」
理玖が自分を指さした。
「普通のヤツは、こういう人間が嫌いなんだよ」
「こういう人間?」
「キモい陰キャ」
「理玖はキモくないし、陰キャでもないだろ……」
「お前の目はイカれてんの? どう見たって陰キャだろ」
理玖はよく、自分のことを「陰キャ」と呼び、俺のことを「陽キャ」と呼ぶ。それがあまり好きじゃない。
「理玖は他の人と好きなことがちょっと違うだけだよ」
「良いように言うね~」
「あ、だったら俺も陰キャかも」
「は? ふざけてんの? お前が陰キャの敷居跨げると思うなよ」
「だって俺、他の人たちより理玖と一緒にいる方が楽しいもん。気が楽だし」
「……」
あ、理玖の顔赤くなった。
「理玖と話してる方が楽しいし、理玖とゲームする方が楽しい」
「……分かった。もういいから……」
「外で歩いて買い物するのも楽しいけど、理玖と家でだらだらしてる方が楽しい」
「分かったって……」
それに――
「ん……」
こうして理玖にキスしている時間が、一番しあわせ。
「理玖。陰キャとか陽キャとか、どうでもよくない?」
そんな壁わざわざ作んなくていいよ。理玖は理玖じゃん。
誰よりも勉学に一生懸命で、ゲームが上手くて、ちょっと口は悪いけどすごく優しい人。
キスしたら仏頂面がとろんと溶けて、ちんこいじったら自分がどんなキャラだったのかも忘れて俺にしがみついてくるような、えっちで可愛い人。
キスのあと、理玖がうっすら口を開いた。
「……別に、いい」
「なにが?」
「友だちなんか、いなくても」
「そう?」
理玖に友だちがいないってだけで、クラスメイトに誤解されているのが俺は嫌なんだけど。
「……お前がいるし」
「えっ」
「友だち多くても、疲れるだけっしょ」
「……確かに、それはそう」
「別に、お前だけでいい」
「……」
強がりなことはすぐに分かった。本当はたくさん友だちが欲しいんだ。きっと大勢の友だちとやりたいことだってたくさんあるんだろう。
俺は意地悪なのかもしれない。
さっきまで「理玖に友だちが多かったらいいのに」なんて考えていたのに。
ふと、理玖の友だちが、これからもずっと俺だけだったらいいのにって思ってしまった。
「理玖の好きなゲームとかさ。行きたいとことか、やりたいこととか、いろいろ教えてよ」
「え? 俺の?」
「うん。そういうのもしたい」
「え、まじ? いいの?」
はは。可愛い。目キラキラさせちゃってさ。
「お、俺……俺……」
「なにしたい?」
「……いや、やっぱいい」
「なんでだよ。言えよ」
「だって引かれそう」
「引かない引かない」
理玖はもじ……と体を揺らし、消え入りそうな声で言った。
「……博物館行きたい」
「……」
「あと、美術館も……」
「……」
博物館に美術館。やっぱり知識が集まるところが好きなんだな。
「ほら、やっぱり引いたじゃん……」
「い、いや。引いてないって」
「……俺、一人でいたらずっと引きこもってるから。行きたいなーって思ってても、一人じゃ腰が上がらなくてさ」
「そっか。じゃあ今週の日曜日に行こうよ。日曜は部活も半日だしさ」
「……いいの?」
「うん。俺も行きたい」
「嘘つけ」
「まじまじ」
理玖が好きなことを知りたい。理玖が好きなものの前でどんな表情をするのか知りたい。
なんか、もう他人が理玖のことどう思っているかとかどうでもいいや。
俺だけが理玖の良さを知っているっていうのも、それはそれでいいものなのかもしれない。
(凪side)
はは。背筋良すぎ。一人だけ黒板真っすぐ見て、先生の話を熱心に聞いている。
あ、耳に髪かけた。きれいな耳の形してる。いつも隠れているからかな。耳出しただけでちょっとエロく感じる。
こっそりため息を吐いた。退屈なんだろうな。理玖、かしこいから。
……早く学校終わってほしい。学校じゃ、声かけるだけでもイラッとされる。触ろうとなんて思わせてもくれない。
どうして学校では仲良くしてくれないんだろう。
昼休みのとき、一緒にごはんを食べていた友人Aが俺に言った。
「凪さ、最近、鳥次と仲良いよな?」
「そう?」
学校では挨拶くらいしかしていないはずなんだけどな。
「テストんときとか大盛り上がりしてるじゃん」
「あー! そうそう。理玖、学年二位でさ。毎回勝負してんの」
「ひえー、レベルたけぇー……」
でも、と友人Aがクスクス笑う。
「あいつ勉強しかしてなさそうだもんな」
それを聞いていた友人BとCが会話に入ってくる。
「鳥次、友達いないしね~!」
「お昼ご飯もずっと一人で食べてるもんね。ごはん食べてるときも教科書眺めてるよ」
「えー、まじ!? 勉強オタクじゃん」
「ねー。きっと勉強が友達なんだよ」
「ひえー」
なんでそこで引いた声出すんだ? そこまで勉強に夢中になれるってすごいことじゃん。俺はそんな理玖を尊敬してるし、かっこいいと思っているんだけど。
それから友人たちは理玖の話で盛り上がった。
「そういえば体育祭のときに写真撮ってもらったんだけどさ。話しかけたら顔真っ赤にしてキョドキョドして、まともに会話できなくて。ちょっとキモかったー。しかも写真もブレッブレだし!」
「眼鏡な上に前髪長すぎて、顔半分隠れてるよね。何考えてるか全然分からないからちょっと怖い」
「この前ちょっと用事で話したんだけど、小声すぎて何言ってんのか全然分かんねーの! それなのにこっちが悪いみたいに舌打ちされたしさ。俺あいつあんま好きじゃない」
あれ……? 俺の知っている理玖と全然違う。
「ちょっと……みんな勘違いしてるって。理玖、そんな悪いヤツじゃないし、むしろ……」
「凪は誰とでも仲良くなれるもんな―。お前ってやっぱすげえよ」
「俺は別にすごくなくて、理玖が良いヤツだから……」
「良いヤツだったらボッチじゃねえだろ」
「……」
それってなんか関係ある? 良いヤツほど友だち多いの? じゃあお前らは理玖より良いヤツなの?
少なくとも俺は、理玖からクラスメイトの悪口聞いたことないよ。
「……ごちそうさま」
この場にいたら空気を壊すことしか言えそうになかったから、出て行くことにした。
「えっ、凪、ちょっと……」
引き留められたような気がするけど、俺は背を向けたまま歩いていった。
◆◆◆
その日の夜、理玖に訊いてみた。
「理玖、なんで友だち作らないの?」
「は? 作らないんじゃなくて作れないんだよ」
「なんで?」
「なんで? 見て分かんない?」
「うん」
理玖が自分を指さした。
「普通のヤツは、こういう人間が嫌いなんだよ」
「こういう人間?」
「キモい陰キャ」
「理玖はキモくないし、陰キャでもないだろ……」
「お前の目はイカれてんの? どう見たって陰キャだろ」
理玖はよく、自分のことを「陰キャ」と呼び、俺のことを「陽キャ」と呼ぶ。それがあまり好きじゃない。
「理玖は他の人と好きなことがちょっと違うだけだよ」
「良いように言うね~」
「あ、だったら俺も陰キャかも」
「は? ふざけてんの? お前が陰キャの敷居跨げると思うなよ」
「だって俺、他の人たちより理玖と一緒にいる方が楽しいもん。気が楽だし」
「……」
あ、理玖の顔赤くなった。
「理玖と話してる方が楽しいし、理玖とゲームする方が楽しい」
「……分かった。もういいから……」
「外で歩いて買い物するのも楽しいけど、理玖と家でだらだらしてる方が楽しい」
「分かったって……」
それに――
「ん……」
こうして理玖にキスしている時間が、一番しあわせ。
「理玖。陰キャとか陽キャとか、どうでもよくない?」
そんな壁わざわざ作んなくていいよ。理玖は理玖じゃん。
誰よりも勉学に一生懸命で、ゲームが上手くて、ちょっと口は悪いけどすごく優しい人。
キスしたら仏頂面がとろんと溶けて、ちんこいじったら自分がどんなキャラだったのかも忘れて俺にしがみついてくるような、えっちで可愛い人。
キスのあと、理玖がうっすら口を開いた。
「……別に、いい」
「なにが?」
「友だちなんか、いなくても」
「そう?」
理玖に友だちがいないってだけで、クラスメイトに誤解されているのが俺は嫌なんだけど。
「……お前がいるし」
「えっ」
「友だち多くても、疲れるだけっしょ」
「……確かに、それはそう」
「別に、お前だけでいい」
「……」
強がりなことはすぐに分かった。本当はたくさん友だちが欲しいんだ。きっと大勢の友だちとやりたいことだってたくさんあるんだろう。
俺は意地悪なのかもしれない。
さっきまで「理玖に友だちが多かったらいいのに」なんて考えていたのに。
ふと、理玖の友だちが、これからもずっと俺だけだったらいいのにって思ってしまった。
「理玖の好きなゲームとかさ。行きたいとことか、やりたいこととか、いろいろ教えてよ」
「え? 俺の?」
「うん。そういうのもしたい」
「え、まじ? いいの?」
はは。可愛い。目キラキラさせちゃってさ。
「お、俺……俺……」
「なにしたい?」
「……いや、やっぱいい」
「なんでだよ。言えよ」
「だって引かれそう」
「引かない引かない」
理玖はもじ……と体を揺らし、消え入りそうな声で言った。
「……博物館行きたい」
「……」
「あと、美術館も……」
「……」
博物館に美術館。やっぱり知識が集まるところが好きなんだな。
「ほら、やっぱり引いたじゃん……」
「い、いや。引いてないって」
「……俺、一人でいたらずっと引きこもってるから。行きたいなーって思ってても、一人じゃ腰が上がらなくてさ」
「そっか。じゃあ今週の日曜日に行こうよ。日曜は部活も半日だしさ」
「……いいの?」
「うん。俺も行きたい」
「嘘つけ」
「まじまじ」
理玖が好きなことを知りたい。理玖が好きなものの前でどんな表情をするのか知りたい。
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