【完結】【R18BL】学年二位は、学年一位の命令を聞く

ちゃっぷす

文字の大きさ
70 / 72
おまけ:夏休み

夏休み-5

しおりを挟む
 凪の足が止まったのは、河川敷からちょっと離れた小さな神社の前だった。

「ここ、穴場らしいよ。花火がよく見えるのに、人が少ないってCが教えてくれた」
「へー。じゃあCたちもここに来るんだ?」
「来ないよ」
「へ? なんで?」
「Cたちもここに来たら、二人で夏祭り来た意味なくなるじゃん」

 それは凪がお願いしたことではなくて、Cのはからいなのだとか。

「Cたちも一緒のほうが良かった?」

 なんて、凪がめんどくさいことを訊いてきた。

「んなわけねえだろ。お前と二人で見たいよ」
「……そっか。よかった」
「ばーか」

 俺と凪は鳥居の前の階段に腰を下ろした。河川敷よりも高い場所にあるので、そのあたりの様子がよく見える。

「おー。確かに景色いいなー」

 屋台がずらっと並んでいるさまはかなりきれいだった。屋台と屋台の間を蠢く人間たちも、その場にいたときはうざったいだけだったが、遠くで見ると浴衣が景色に馴染んでとても良い。
 うるさいだけだった祭りの騒音も、遠くから聞こえる分には情緒があって心地よかった。

 凪は俺の手荷物を見て噴き出した。

「理玖、荷物多すぎでしょ」
「いやあ……これどうしようかね……」

 両手にいっぱいの、乱獲した金魚たちや射的やくじの景品たち。

「景品は凪にやるとして、金魚はなあ……。水槽買わなきゃな……」
「いや、俺も景品いらない……」

 俺ほどではないが、凪も俺に付き合った結果荷物が増えていた。

「俺の金魚も理玖の家で育ててくれる?」
「いいよ」
「大家族だなー」
「一匹も死なせねえ」

 そんなくだらない話をしているとき、河川敷からヒュルルル……と聞きなれない音が鳴った。

「あ、理玖」
「ん?」

 顔を上げた瞬間、目の前に大きな花火が夜空一面に広がった。

「わ……」

 その後、花火が次々と打ち上げられる。
 花火がひらく度、心臓にまで響く大きくて低い音が轟く。

「もったいない……」

 大きな花火も、小さな花火も、どれもきれいだ。
 一気に打ち上げないでほしい。一発一発じっくりと見ていたいのに。
 花火が夜空に消えきる前に、次の花火が打ち上げられる。花火の音が心臓を打ち付ける。

「……理玖?」

 凪が花火から目を離し、俺の方を向いた。

「なんで泣いてるの?」
「えっ」
「泣いてる」

 凪が不思議そうに俺の顔をのぞきこむ。
 俺は「大丈夫だから」と言って、顔を背けた。

 自分でも、泣いてることに気付かなかった。
 泣いたというより、勝手に涙が流れただけなんだけど。

 だって、この花火。
 まるで凪と出会ってからの俺みたいだったから。

 びっくりするくらい色んなことが、こいつと出会ってからいっぱいあって。
 それは全部、全部、俺にとって、特別なことだった。
 一発だけで充分なのに、凪がどんどん次の花火を打ち上げていくから、途中からわけわかんなくなってきて。
 気付けば、こうして凪と二人で花火を見上げていた。

 凪が俺の肩に頭を預ける。俺も、凪の頭上に頭を乗せた。
 ベトベトの手を握り合い、俺たちは無言で、最後の花火が打ちあがるまで眩しい夜空を見上げていた。

【番外編 夏休み end】
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された

あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると… 「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」 気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 初めましてです。お手柔らかにお願いします。 ムーンライトノベルズさんにも掲載しております

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

無自覚両片想いの鈍感アイドルが、ラブラブになるまでの話

タタミ
BL
アイドルグループ・ORCAに属する一原優成はある日、リーダーの藤守高嶺から衝撃的な指摘を受ける。 「優成、お前明樹のこと好きだろ」 高嶺曰く、優成は同じグループの中城明樹に恋をしているらしい。 メンバー全員に指摘されても到底受け入れられない優成だったが、ひょんなことから明樹とキスしたことでドキドキが止まらなくなり──!?

処理中です...