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おまけ:夏休み
夏休み-5
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凪の足が止まったのは、河川敷からちょっと離れた小さな神社の前だった。
「ここ、穴場らしいよ。花火がよく見えるのに、人が少ないってCが教えてくれた」
「へー。じゃあCたちもここに来るんだ?」
「来ないよ」
「へ? なんで?」
「Cたちもここに来たら、二人で夏祭り来た意味なくなるじゃん」
それは凪がお願いしたことではなくて、Cのはからいなのだとか。
「Cたちも一緒のほうが良かった?」
なんて、凪がめんどくさいことを訊いてきた。
「んなわけねえだろ。お前と二人で見たいよ」
「……そっか。よかった」
「ばーか」
俺と凪は鳥居の前の階段に腰を下ろした。河川敷よりも高い場所にあるので、そのあたりの様子がよく見える。
「おー。確かに景色いいなー」
屋台がずらっと並んでいるさまはかなりきれいだった。屋台と屋台の間を蠢く人間たちも、その場にいたときはうざったいだけだったが、遠くで見ると浴衣が景色に馴染んでとても良い。
うるさいだけだった祭りの騒音も、遠くから聞こえる分には情緒があって心地よかった。
凪は俺の手荷物を見て噴き出した。
「理玖、荷物多すぎでしょ」
「いやあ……これどうしようかね……」
両手にいっぱいの、乱獲した金魚たちや射的やくじの景品たち。
「景品は凪にやるとして、金魚はなあ……。水槽買わなきゃな……」
「いや、俺も景品いらない……」
俺ほどではないが、凪も俺に付き合った結果荷物が増えていた。
「俺の金魚も理玖の家で育ててくれる?」
「いいよ」
「大家族だなー」
「一匹も死なせねえ」
そんなくだらない話をしているとき、河川敷からヒュルルル……と聞きなれない音が鳴った。
「あ、理玖」
「ん?」
顔を上げた瞬間、目の前に大きな花火が夜空一面に広がった。
「わ……」
その後、花火が次々と打ち上げられる。
花火がひらく度、心臓にまで響く大きくて低い音が轟く。
「もったいない……」
大きな花火も、小さな花火も、どれもきれいだ。
一気に打ち上げないでほしい。一発一発じっくりと見ていたいのに。
花火が夜空に消えきる前に、次の花火が打ち上げられる。花火の音が心臓を打ち付ける。
「……理玖?」
凪が花火から目を離し、俺の方を向いた。
「なんで泣いてるの?」
「えっ」
「泣いてる」
凪が不思議そうに俺の顔をのぞきこむ。
俺は「大丈夫だから」と言って、顔を背けた。
自分でも、泣いてることに気付かなかった。
泣いたというより、勝手に涙が流れただけなんだけど。
だって、この花火。
まるで凪と出会ってからの俺みたいだったから。
びっくりするくらい色んなことが、こいつと出会ってからいっぱいあって。
それは全部、全部、俺にとって、特別なことだった。
一発だけで充分なのに、凪がどんどん次の花火を打ち上げていくから、途中からわけわかんなくなってきて。
気付けば、こうして凪と二人で花火を見上げていた。
凪が俺の肩に頭を預ける。俺も、凪の頭上に頭を乗せた。
ベトベトの手を握り合い、俺たちは無言で、最後の花火が打ちあがるまで眩しい夜空を見上げていた。
【番外編 夏休み end】
「ここ、穴場らしいよ。花火がよく見えるのに、人が少ないってCが教えてくれた」
「へー。じゃあCたちもここに来るんだ?」
「来ないよ」
「へ? なんで?」
「Cたちもここに来たら、二人で夏祭り来た意味なくなるじゃん」
それは凪がお願いしたことではなくて、Cのはからいなのだとか。
「Cたちも一緒のほうが良かった?」
なんて、凪がめんどくさいことを訊いてきた。
「んなわけねえだろ。お前と二人で見たいよ」
「……そっか。よかった」
「ばーか」
俺と凪は鳥居の前の階段に腰を下ろした。河川敷よりも高い場所にあるので、そのあたりの様子がよく見える。
「おー。確かに景色いいなー」
屋台がずらっと並んでいるさまはかなりきれいだった。屋台と屋台の間を蠢く人間たちも、その場にいたときはうざったいだけだったが、遠くで見ると浴衣が景色に馴染んでとても良い。
うるさいだけだった祭りの騒音も、遠くから聞こえる分には情緒があって心地よかった。
凪は俺の手荷物を見て噴き出した。
「理玖、荷物多すぎでしょ」
「いやあ……これどうしようかね……」
両手にいっぱいの、乱獲した金魚たちや射的やくじの景品たち。
「景品は凪にやるとして、金魚はなあ……。水槽買わなきゃな……」
「いや、俺も景品いらない……」
俺ほどではないが、凪も俺に付き合った結果荷物が増えていた。
「俺の金魚も理玖の家で育ててくれる?」
「いいよ」
「大家族だなー」
「一匹も死なせねえ」
そんなくだらない話をしているとき、河川敷からヒュルルル……と聞きなれない音が鳴った。
「あ、理玖」
「ん?」
顔を上げた瞬間、目の前に大きな花火が夜空一面に広がった。
「わ……」
その後、花火が次々と打ち上げられる。
花火がひらく度、心臓にまで響く大きくて低い音が轟く。
「もったいない……」
大きな花火も、小さな花火も、どれもきれいだ。
一気に打ち上げないでほしい。一発一発じっくりと見ていたいのに。
花火が夜空に消えきる前に、次の花火が打ち上げられる。花火の音が心臓を打ち付ける。
「……理玖?」
凪が花火から目を離し、俺の方を向いた。
「なんで泣いてるの?」
「えっ」
「泣いてる」
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自分でも、泣いてることに気付かなかった。
泣いたというより、勝手に涙が流れただけなんだけど。
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まるで凪と出会ってからの俺みたいだったから。
びっくりするくらい色んなことが、こいつと出会ってからいっぱいあって。
それは全部、全部、俺にとって、特別なことだった。
一発だけで充分なのに、凪がどんどん次の花火を打ち上げていくから、途中からわけわかんなくなってきて。
気付けば、こうして凪と二人で花火を見上げていた。
凪が俺の肩に頭を預ける。俺も、凪の頭上に頭を乗せた。
ベトベトの手を握り合い、俺たちは無言で、最後の花火が打ちあがるまで眩しい夜空を見上げていた。
【番外編 夏休み end】
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