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28話
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ウトウトとしていた僕は、ノックの音で目を覚ました。返事をするとゆっくりドアが開く。顔を覗かせたのは――
「た、大公様……!?」
「眠っていたのか。すまない」
「い、いえっ。ど、どど、どうされましたか」
大公様……国王のご令弟様が直々にアコライトの部屋を訪ねるなんて、一体どういうことだ。本来、生涯言葉を交わすことすらできない存在だろうに。
僕は慌ててベッドから飛び出し、背筋を伸ばした。
「そう硬くならずともよい。君に少し尋ねたいことがあってね」
「は、はい。なんなりと」
「かけたまえ」
大公様がテーブルを指さした。僕はその椅子に座り、また背筋を伸ばす。
「フラストから聞いた。アリスは司祭の罪を認め、現在ヴァルアに全てを打ち明けているそうだ」
「そうですか……」
大公様は僕の向かいに座り、テーブルに資料を載せた。
「君が司祭にされてきたことを、すでにヴァルアからある程度は聞いている。だが、人づてに聞いた話だと根拠が薄くてね。本人から話を聞きたい」
ヴァルア様も同じことを言っていたのを思い出した。
「……教会に本格的に手を加えることは、それ相応の危険と金がかかる。それがこちらの誤解であれば、尚更」
大公様のおっしゃる通りだ。万が一教会が事実を否認し、逃げ切ることができたなら、大公家は甚大な被害を被るだろう。損害賠償を請求されるだろうし、なにより、いわれない罪を問うたという理由で教会の信者を敵に回すことになりかねない。そうなれば最悪の場合、内戦が起こる可能性も考えられるのだ。
「アリスが真実を打ち明けたのだ。だから君ももう口を閉ざす必要はない。君の身に起こったことを、話してくれるね」
僕が頷くと、大公様はほのかに口角を上げた。彼がベルを鳴らす。すぐに使用人が布にくるんだ何かを持ってきた。それをほどくと、見慣れた衣服があらわれた。
「それは……」
「ヴァルアから聞いた話を基に作らせたんだ。君は本当に、このようなものを身に付けていたのか?」
大公様が狭い布面積の下着をつまみ上げた。もう隠すことはない。僕は小声で肯定した。
「そうか……。半分、ヴァルアの作り話かと思っていたよ。にわかには信じられん。このようなもの、下着の意味を全くなしてはいないではないか。そもそもどうやって身に着けるのかも分からぬ……」
僕が長年付けていた下着はそんなに不可思議なものだったのか。僕にとってはペニスと尻を覆われた下着の方がよっぽど違和感がある。窮屈だし、蒸れて不快だ。
「ナスト。一度これを身に着けてみてくれんか」
「えっ?」
「これだけではどのように機能するのかさっぱり分からぬ。実際にこの目で見んことには」
「は、はい、分かりました……。それでは、アリスを呼んでいただけますか? 僕は自身の体に触れることを禁じられているので、自分で服を着替えることができないのです」
「ほう……? ホルアデンセ教にそのような掟が……?」
大公様は考え込んだあと、「ふむ」と納得したように呟いた。
「まあ、よかろう。あいにくアリスは今聴取中なのでな。代わりにわしが手伝うとしよう」
「え!? そ、そんな、それはあまりにも恐れ多いです!!」
「そんなことを言っている暇はあるまい。良いから立ちたまえ。早く」
何度か断り続けていたが、最後は大公様に荒い声で命令され、僕は従うことにした。
僕の背後に大公様が立つ。キャソックのボタンを外しながら、大公様は質問をした。
「己の身に着けている服にも触れられんのか」
「は、はい。意図せず触れてしまうことはありますが、ボタンに手をかけることはありません」
「君はそれにずっと従っていたと。なんともまあ……」
キャソック、シャツ、ズボンを順次に脱がされ、残された下着も大公様に下ろしてもらった。大公様にこんなことをさせた人、僕が初めてなのではないだろうか。申し訳なくて胸が痛む。
生まれたままの姿になった僕を、大公様はしばらく眺めていた。
「……全身無毛だが、それも掟で?」
「は、はい。体毛は穢れを纏いやすいため、全身の体毛を剃っています。えっと、毎日、アリスに……」
「ふむ……」
ではなぜ髪や眉毛は剃らないのだという質問に僕は答えたが、大公様はあまり納得できていないようだった。それ以上聞いても仕方ないと思ったのか、大公様は、ほとんど紐で成り立っている下着を手に取った。
「それで。どのように身に着けるのだ」
「えっと、まず金の輪をペニスに通し――」
僕に言われるがまま、大公様は僕に下着を付けさせた。丁寧に、装飾品とペニスの位置を整えることまでしてくれた。
大公様は下着を付けた僕をじっと見つめ、「なるほど……」と唸った。
「それで? この上にキャソックを羽織らせればいいのか?」
「はい。お願いします」
「うむ……」
これでいつも通りの服装になった。大公様は釈然としない顔をしているが、僕にとってはこっちの方がしっくり来る。先ほどまで感じていた圧迫感がなくなり、安堵の吐息を漏らしたほどだ。
「君は、そのような格好で聖職者としての職務をこなしていたのか……」
「はい」
「ミサのときも……献金に回る時も?」
「はい。そうです」
「……なるほど。大変参考になった」
では次に、と大公様が資料に目を通す。
「た、大公様……!?」
「眠っていたのか。すまない」
「い、いえっ。ど、どど、どうされましたか」
大公様……国王のご令弟様が直々にアコライトの部屋を訪ねるなんて、一体どういうことだ。本来、生涯言葉を交わすことすらできない存在だろうに。
僕は慌ててベッドから飛び出し、背筋を伸ばした。
「そう硬くならずともよい。君に少し尋ねたいことがあってね」
「は、はい。なんなりと」
「かけたまえ」
大公様がテーブルを指さした。僕はその椅子に座り、また背筋を伸ばす。
「フラストから聞いた。アリスは司祭の罪を認め、現在ヴァルアに全てを打ち明けているそうだ」
「そうですか……」
大公様は僕の向かいに座り、テーブルに資料を載せた。
「君が司祭にされてきたことを、すでにヴァルアからある程度は聞いている。だが、人づてに聞いた話だと根拠が薄くてね。本人から話を聞きたい」
ヴァルア様も同じことを言っていたのを思い出した。
「……教会に本格的に手を加えることは、それ相応の危険と金がかかる。それがこちらの誤解であれば、尚更」
大公様のおっしゃる通りだ。万が一教会が事実を否認し、逃げ切ることができたなら、大公家は甚大な被害を被るだろう。損害賠償を請求されるだろうし、なにより、いわれない罪を問うたという理由で教会の信者を敵に回すことになりかねない。そうなれば最悪の場合、内戦が起こる可能性も考えられるのだ。
「アリスが真実を打ち明けたのだ。だから君ももう口を閉ざす必要はない。君の身に起こったことを、話してくれるね」
僕が頷くと、大公様はほのかに口角を上げた。彼がベルを鳴らす。すぐに使用人が布にくるんだ何かを持ってきた。それをほどくと、見慣れた衣服があらわれた。
「それは……」
「ヴァルアから聞いた話を基に作らせたんだ。君は本当に、このようなものを身に付けていたのか?」
大公様が狭い布面積の下着をつまみ上げた。もう隠すことはない。僕は小声で肯定した。
「そうか……。半分、ヴァルアの作り話かと思っていたよ。にわかには信じられん。このようなもの、下着の意味を全くなしてはいないではないか。そもそもどうやって身に着けるのかも分からぬ……」
僕が長年付けていた下着はそんなに不可思議なものだったのか。僕にとってはペニスと尻を覆われた下着の方がよっぽど違和感がある。窮屈だし、蒸れて不快だ。
「ナスト。一度これを身に着けてみてくれんか」
「えっ?」
「これだけではどのように機能するのかさっぱり分からぬ。実際にこの目で見んことには」
「は、はい、分かりました……。それでは、アリスを呼んでいただけますか? 僕は自身の体に触れることを禁じられているので、自分で服を着替えることができないのです」
「ほう……? ホルアデンセ教にそのような掟が……?」
大公様は考え込んだあと、「ふむ」と納得したように呟いた。
「まあ、よかろう。あいにくアリスは今聴取中なのでな。代わりにわしが手伝うとしよう」
「え!? そ、そんな、それはあまりにも恐れ多いです!!」
「そんなことを言っている暇はあるまい。良いから立ちたまえ。早く」
何度か断り続けていたが、最後は大公様に荒い声で命令され、僕は従うことにした。
僕の背後に大公様が立つ。キャソックのボタンを外しながら、大公様は質問をした。
「己の身に着けている服にも触れられんのか」
「は、はい。意図せず触れてしまうことはありますが、ボタンに手をかけることはありません」
「君はそれにずっと従っていたと。なんともまあ……」
キャソック、シャツ、ズボンを順次に脱がされ、残された下着も大公様に下ろしてもらった。大公様にこんなことをさせた人、僕が初めてなのではないだろうか。申し訳なくて胸が痛む。
生まれたままの姿になった僕を、大公様はしばらく眺めていた。
「……全身無毛だが、それも掟で?」
「は、はい。体毛は穢れを纏いやすいため、全身の体毛を剃っています。えっと、毎日、アリスに……」
「ふむ……」
ではなぜ髪や眉毛は剃らないのだという質問に僕は答えたが、大公様はあまり納得できていないようだった。それ以上聞いても仕方ないと思ったのか、大公様は、ほとんど紐で成り立っている下着を手に取った。
「それで。どのように身に着けるのだ」
「えっと、まず金の輪をペニスに通し――」
僕に言われるがまま、大公様は僕に下着を付けさせた。丁寧に、装飾品とペニスの位置を整えることまでしてくれた。
大公様は下着を付けた僕をじっと見つめ、「なるほど……」と唸った。
「それで? この上にキャソックを羽織らせればいいのか?」
「はい。お願いします」
「うむ……」
これでいつも通りの服装になった。大公様は釈然としない顔をしているが、僕にとってはこっちの方がしっくり来る。先ほどまで感じていた圧迫感がなくなり、安堵の吐息を漏らしたほどだ。
「君は、そのような格好で聖職者としての職務をこなしていたのか……」
「はい」
「ミサのときも……献金に回る時も?」
「はい。そうです」
「……なるほど。大変参考になった」
では次に、と大公様が資料に目を通す。
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