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仕事
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今日、私は茨城県水戸市にあるホールに来ている。
もちろん、恒星の演奏を聴くため。
改めて考えてみると、こうして彼の演奏を客席で聴くのは約1年半振りだ。
つまり、大学に入ってからは初めてのことだ。(オーディション練習では何回も聴いてるけど)
演奏する機会が増えた反面、聴く機会は減ってしまっていたので、ちょうどいいかもしれない。
バンド自体はアマチュアだけど、打楽器には恒星と鈴木先輩がいるから、きっといい勉強になる。
開場の時点で、客席は6割くらい埋まっていた。
雰囲気からして、まだまだ増えそうだ。
私は、1階席の真ん中辺りに座った。
あぁ、やっぱり。お客さんは順調に増えている。
結構人気の楽団なのかな?
最終的に8割程埋まったところで予ベルがなった。
会場が薄らと緊張に包まれる。
演奏会は2部構成になっているみたいで、1部はクラシックステージ2部はポップスステージとなっていた。
恒星と鈴木先輩の出番は2部からみたい。
本ベルがなると、ステージへの入場が始まる。
1曲目は、昔吹奏楽コンクールの課題曲になったマーチだった。
演奏の技術は、正直ちょっと物足りないけど音楽性は素晴らしいと思った。
これは、指揮者というか指導者の手腕だと思う。
そっか、だからこんなに人気なんだ。
指導者の方のプロフィールをみると、大学は有名な私立の音楽大学で、作曲科を卒業し、大学院では吹奏楽指導法を専攻されていたみたい。
なるほど。それでこの演奏。納得ね。
私も今では母校を指導に行く身だし、クラだけじゃなく吹奏楽指導法というのも是非学んでみたいと思った。
そういう意味でも、この演奏会に来て良かったと思う。
恒星や、誰か他の知り合いでも乗ってない限り、アマチュアの楽団の演奏会を聴きに来ることなんてまずない。
でも、今日みたいな演奏を聴けるなら、勉強になると思う。
吹奏楽指導法、勉強してみよう!
今日の指揮者は要チェックね!
10分間の休憩を挟んで第2部に入った。
待ってました!って心の中では思うけど、ここからは特に、冷静に聴こうと決めていた。
確かにポップスステージって一般的に良く知られている曲を演奏したりするから、聴いてるだけで楽しくなってくる。
でも、今日の恒星は飽くまで「仕事」できている。
相手がアマチュアだろうと、ギャラが少額だろうとそれは全然関係ない。
このメンバーの中でどう演奏するのがベストなのか、恒星はきっと考えてきているはず。
そういう演奏を聴けることは、私にとってすごくいい勉強になる。楽しみだわ!
1曲目は流行りのJ-POPだった。
アップテンポの、ちょっとロック寄りの曲だ。
吹奏楽でポップスをやろうとすると難しいのが、メロディを担当する楽器が変わるとバランスも一気に変わってしまうことだ。
大抵の曲はそれが考慮されていて、Aメロは木管、Bメロは中低音の金管、サビは高音の金管って言う感じで書かれているけど、どうしてもバランスを取るのが難しい箇所は出てきてしまう。
そんな時、きっと1番大変なのはドラムなんじゃないかと思う。
大きい音量の時に走って、小さい時に遅くなるのは良くある話だけど、プロの演奏はそんな風にはならないはずだし。
さて、恒星の演奏は、どうだろう??
ロングトーンを多用して、ゆったりとしたテンポのオープンニングから始まって、すぐに速いテンポに切替わる。
オープニングはバスドラとシンバルを同時を鳴らし、速くなってからは8ビートを刻んでいく。
すごい。
なんて絶妙なバランス。
かと言ってバランスだけを考えているわけではなく、メロディが吹きやすいようにしっかりコントロールしている。
これだと、もはや指揮者は必要ないくらいじゃないかな…?
と思っていると、1コーラス目を終えて2コーラス目に入った。
ここでメロディを吹いていた楽器が一気に変わり、ドラムのパターンも変わる。
指揮者の役割はむしろここからだった。
恒星のドラムを上手く活かしながら、メロディが遅れないように丁度間に入るようなテンポ感で振っていく。
誰もが正解を見失いそうな状況で、見事に正解を表現して全員がついて行った。
すごい。指揮者もだけど、この状況で指揮に付けられる恒星も。
そしてサビに入る瞬間、ドラムが今までで1番大きい音量でシンバルを鳴らし、曲中1番の山場を作った。
もうね、素晴らしいの一言!!
客席もこの素晴らしい演奏に皆魅了されているみたいだった。
指揮者もこんなドラマーだったらきっとやりやすいだろうなぁ。
1曲目の演奏が終わり、指揮者が客席に1礼する。
恒星、すっごくいい顔してる。かっこいいな。
私の自慢の彼氏。
その後も見事なバランスとグルーヴ感でアンコールまで演奏を終えた。
すごい…正直こんなにいい演奏が聴けると思っていなかった。
努力したんだろうなぁ。
Aブラスを含めて、色々やるべきこともやりたい事もある中で、ここまでの演奏ができるって本当にすごいと思う。
だからこそ、と私は思う。
恒星は、プロの演奏家になるべきだって。
指導とか、そういうことも音楽に関わる仕事だし、それは勉強にもなるけど、でも、恒星はまず自分が演奏することだけを考えていた方がいい気がする。
そういうストイックさが、備わっているから。
なんて言うのかな?アスリートに近いような、そういう感じ。
ひたすら向き合って、自分技術を磨き続ける、みたいな。
更に、音楽の場合は感性や他の人達とのアンサンブル力も磨く必要がある。
私は、音楽は技術より感性の方が大事だと思ってたけど、最近はその考えも変わってきている。
いくら優れた感性があっても、プロとして活動するには絶対的な技術が必要だと思う。
そして、今日の恒星の演奏は技術に於いても感性に於いても、間違いなくメンバー内ではトップだったと思う。
もちろん、鈴木先輩も素晴らしい演奏をしていたけど、今日の編成や曲目の中では、鍵盤よりもドラムの方が役割の重みがある。
そう言う意味では、まだ1年生の恒星に今回の役を任せた先輩もすごい。
ステージでの様子を見てても、2人の間には確かな信頼関係が見て取れるようだった。
いいな。この短期間でこんなに信頼を得られるって、簡単なことじゃないと思う。
私も、演奏で信頼してもらえるようになりたい!
その為にも、しっかりやることやらないとね。
さて、演奏会も終わったし、恒星が出てくるまでロビー待とう!
もちろん、恒星の演奏を聴くため。
改めて考えてみると、こうして彼の演奏を客席で聴くのは約1年半振りだ。
つまり、大学に入ってからは初めてのことだ。(オーディション練習では何回も聴いてるけど)
演奏する機会が増えた反面、聴く機会は減ってしまっていたので、ちょうどいいかもしれない。
バンド自体はアマチュアだけど、打楽器には恒星と鈴木先輩がいるから、きっといい勉強になる。
開場の時点で、客席は6割くらい埋まっていた。
雰囲気からして、まだまだ増えそうだ。
私は、1階席の真ん中辺りに座った。
あぁ、やっぱり。お客さんは順調に増えている。
結構人気の楽団なのかな?
最終的に8割程埋まったところで予ベルがなった。
会場が薄らと緊張に包まれる。
演奏会は2部構成になっているみたいで、1部はクラシックステージ2部はポップスステージとなっていた。
恒星と鈴木先輩の出番は2部からみたい。
本ベルがなると、ステージへの入場が始まる。
1曲目は、昔吹奏楽コンクールの課題曲になったマーチだった。
演奏の技術は、正直ちょっと物足りないけど音楽性は素晴らしいと思った。
これは、指揮者というか指導者の手腕だと思う。
そっか、だからこんなに人気なんだ。
指導者の方のプロフィールをみると、大学は有名な私立の音楽大学で、作曲科を卒業し、大学院では吹奏楽指導法を専攻されていたみたい。
なるほど。それでこの演奏。納得ね。
私も今では母校を指導に行く身だし、クラだけじゃなく吹奏楽指導法というのも是非学んでみたいと思った。
そういう意味でも、この演奏会に来て良かったと思う。
恒星や、誰か他の知り合いでも乗ってない限り、アマチュアの楽団の演奏会を聴きに来ることなんてまずない。
でも、今日みたいな演奏を聴けるなら、勉強になると思う。
吹奏楽指導法、勉強してみよう!
今日の指揮者は要チェックね!
10分間の休憩を挟んで第2部に入った。
待ってました!って心の中では思うけど、ここからは特に、冷静に聴こうと決めていた。
確かにポップスステージって一般的に良く知られている曲を演奏したりするから、聴いてるだけで楽しくなってくる。
でも、今日の恒星は飽くまで「仕事」できている。
相手がアマチュアだろうと、ギャラが少額だろうとそれは全然関係ない。
このメンバーの中でどう演奏するのがベストなのか、恒星はきっと考えてきているはず。
そういう演奏を聴けることは、私にとってすごくいい勉強になる。楽しみだわ!
1曲目は流行りのJ-POPだった。
アップテンポの、ちょっとロック寄りの曲だ。
吹奏楽でポップスをやろうとすると難しいのが、メロディを担当する楽器が変わるとバランスも一気に変わってしまうことだ。
大抵の曲はそれが考慮されていて、Aメロは木管、Bメロは中低音の金管、サビは高音の金管って言う感じで書かれているけど、どうしてもバランスを取るのが難しい箇所は出てきてしまう。
そんな時、きっと1番大変なのはドラムなんじゃないかと思う。
大きい音量の時に走って、小さい時に遅くなるのは良くある話だけど、プロの演奏はそんな風にはならないはずだし。
さて、恒星の演奏は、どうだろう??
ロングトーンを多用して、ゆったりとしたテンポのオープンニングから始まって、すぐに速いテンポに切替わる。
オープニングはバスドラとシンバルを同時を鳴らし、速くなってからは8ビートを刻んでいく。
すごい。
なんて絶妙なバランス。
かと言ってバランスだけを考えているわけではなく、メロディが吹きやすいようにしっかりコントロールしている。
これだと、もはや指揮者は必要ないくらいじゃないかな…?
と思っていると、1コーラス目を終えて2コーラス目に入った。
ここでメロディを吹いていた楽器が一気に変わり、ドラムのパターンも変わる。
指揮者の役割はむしろここからだった。
恒星のドラムを上手く活かしながら、メロディが遅れないように丁度間に入るようなテンポ感で振っていく。
誰もが正解を見失いそうな状況で、見事に正解を表現して全員がついて行った。
すごい。指揮者もだけど、この状況で指揮に付けられる恒星も。
そしてサビに入る瞬間、ドラムが今までで1番大きい音量でシンバルを鳴らし、曲中1番の山場を作った。
もうね、素晴らしいの一言!!
客席もこの素晴らしい演奏に皆魅了されているみたいだった。
指揮者もこんなドラマーだったらきっとやりやすいだろうなぁ。
1曲目の演奏が終わり、指揮者が客席に1礼する。
恒星、すっごくいい顔してる。かっこいいな。
私の自慢の彼氏。
その後も見事なバランスとグルーヴ感でアンコールまで演奏を終えた。
すごい…正直こんなにいい演奏が聴けると思っていなかった。
努力したんだろうなぁ。
Aブラスを含めて、色々やるべきこともやりたい事もある中で、ここまでの演奏ができるって本当にすごいと思う。
だからこそ、と私は思う。
恒星は、プロの演奏家になるべきだって。
指導とか、そういうことも音楽に関わる仕事だし、それは勉強にもなるけど、でも、恒星はまず自分が演奏することだけを考えていた方がいい気がする。
そういうストイックさが、備わっているから。
なんて言うのかな?アスリートに近いような、そういう感じ。
ひたすら向き合って、自分技術を磨き続ける、みたいな。
更に、音楽の場合は感性や他の人達とのアンサンブル力も磨く必要がある。
私は、音楽は技術より感性の方が大事だと思ってたけど、最近はその考えも変わってきている。
いくら優れた感性があっても、プロとして活動するには絶対的な技術が必要だと思う。
そして、今日の恒星の演奏は技術に於いても感性に於いても、間違いなくメンバー内ではトップだったと思う。
もちろん、鈴木先輩も素晴らしい演奏をしていたけど、今日の編成や曲目の中では、鍵盤よりもドラムの方が役割の重みがある。
そう言う意味では、まだ1年生の恒星に今回の役を任せた先輩もすごい。
ステージでの様子を見てても、2人の間には確かな信頼関係が見て取れるようだった。
いいな。この短期間でこんなに信頼を得られるって、簡単なことじゃないと思う。
私も、演奏で信頼してもらえるようになりたい!
その為にも、しっかりやることやらないとね。
さて、演奏会も終わったし、恒星が出てくるまでロビー待とう!
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