君との恋の物語-Blue Ribbon-

日月香葉

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集大成

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大学生になって最初の1年。

この1年間で、最も大切な本番言えば、それは間違いなく、1週間後の【成績優秀者による小編成吹奏楽】通称Aブラスの演奏会だ。

今日までも、私はこの日の為に頑張ってきた。入学当初から。

本当、今まで色々あったな。気付いたら、もう12月だけど、振り返ってみればとても長かったように思う。

入学してすぐ恒星と知り合って、(元々知ってはいたけど)2人ともオーディションを受けることのになって、夏休みにいっぱい練習して、結果、一緒に合格できて…

だから、この本番を成功させなかったら、この1年は意味がなくなってしまう。

そのくらいの意気込みが、少なくとも私と恒星、それに恵美先輩や増田先輩にはあった。

12月に入ってからは、バイトも休ませてもらって準備に励んでいる。

恵美先輩とは2人でも練習してきたし、クラリネットパートでも練習や、レッスンも受けてきた。

本当、皆真剣だからピリッとした空気になることもあったけど、成果として演奏はどんどん良くなっていったので、良かった。



舞台袖に入ると、そこは薄暗くて、反響板の隙間から漏れる微かな明かりと、モニタの明かりだけで、目が慣れるまでは結構暗かった。

反響板の裏で深呼吸をした。

緊張するけど、私はこの舞台袖の空気が好きだ。

本番前は、いつも早めに来てこの空気を堪能する。そうしているうちに、すこし緊張もほぐれてくる。

今年1年、本当に充実していたなぁ。大学に入って、友達も彼氏もできて、先輩達の中には尊敬できる方々も沢山いて。

バイト先も、指導先も、人との繋がりに恵まれた。

今までの人生の中で、1番充実していたと思う。

今日は、そんな1年の締めくくりになる大事な演奏会。

いつも応援してくれる人達の思いに応えるためにも、絶対成功させたい!



楽屋へ続く廊下との間にある扉が開いた気配がした。

なんとなくそちらを振り返ると、入ってきたのは恒星だった。

「早いわね。」

ちょうど会いたかったの。

『うん、なんとなく、結がいる気がしたから。』

すごい。

「ほんと?私、ちょうど会いたいと思ってたの」

恒星は、静かに微笑んだ。

『うん。俺もだ。』

かっこいいな。髪型は、綺麗にセットされて、黒のタキシードを着ていた。

「いいね、衣装。似合ってる。」

対して女性は白ブラウスに黒のロングスカートなので、あんまり映えない。

『ありがとう。結も、良く似合っている。それにいいね、髪。』

さすが。良く気付いてくるわ。

「ありがとう。」

私は、一息おいて続ける。

「いよいよね。」

黙って頷く恒星。そうね。言葉なんて、なくてもわかっているのかも。

「長かったけど、本当に充実していたわ。今日の為に一緒に頑張って、一緒に合格できること、誇りに思うわ。」

恒星は少し笑って言う。

『俺も同じ気持ちだよ。でも、本番はこれからだぞ?』

確かに。

「そうね。なんだかもう終わっちゃうみたいな言い方になってたわ」

そう言って2人で笑った。

『結、俺は昔、こんな話を聞いたことがあるんだ。』

「うん」

どんな話?

『大事な、ものすごく大事なステージに立つ時、その人の気持ちは大きく分けて2通りしかないんだ。』

「うん」

ちょっとわからないけど、きっと最後まで聞いたらわかる気がする。

『これが最後だと思うか、これから何度でもこういうステージに立つと思うか。』

なるほど。

『優れた演奏家は、まず間違いなく後者だ。』

うん。

「そうね。」

『確かに俺達は今日の為に頑張ってきた。それは、メンバー皆一緒だ。』

うん。そうね。私は黙って先を促す。

『でも俺は、これから何度だって、一緒にステージに立ちたい。大きければ大きいだけ良い!』

あぁ、恒星らしいわね。

「そうね。私も!」

『うん。だから、その為にも、今日の本番を一緒に頑張ろう。まずは、目の前の本番に集中だな!』

「うん!」

また扉の開く気配があった。

先輩達が続々と舞台裏に入ってくる。

私達は、短くあいさつをしてそれぞれのパートのところに向かった。



『結ちゃん、いよいよだね。さすがに緊張するわ』

いつになく緊張した面持ちの恵美先輩が言う。

「私もです。でも、それ以上に楽しみです。先輩と一緒に演奏できることが」

本心からの言葉だった。

あの時、先輩が私に声を掛けてくださらなかったら、こんなに仲良くなれなかった。

それに、2人揃ってAブラスに乗ることもなかった。

『そうだね。私も楽しみ。緊張するけど、楽しもう!』

そうですよ。その方が先輩らしいです。

「はい!」

他の先輩方ともそれぞれ言葉を交わしていると、隣にスッと背の高い人影が立った。

なんとなく振り返ると、そこに立っていたのはなんと打楽器の鈴木先輩だった。

『峰岸さん、よね?』

静かに微笑む先輩は、本当に綺麗だった。女の私も、思わず見惚れてしまうくらい。

背が高く、スタイルも抜群で、なんだろう、一言で言うと、【完璧】だった。

それに、今かけてくださった言葉には全然角がなく、優しく声を掛けてくださった。

「あ、はい。峰岸結です。鈴木先輩」

『この間の本番聴きに来てくれたって聞いたわ。ありがとうね。』

「い、いえいえ。」

緊張する。この人…綺麗過ぎる…。

『そんなに緊張しないで、私はただの、恵美の同期よ。』

あぁ、微笑む顔が綺麗過ぎて直視できない。恒星、よくこんな綺麗な人と一緒にいられるわね。

『急にごめんなさいね。今日は、この間の御礼と、頑張って一緒に演奏しようねって言いに来ただけ。楽しみましょ。』

そう言って、私に右手を差し出す。

「あ、はい。ありがとうございます。」

そう言って、私から右手を握りに行った。

「すみません。本来なら私からご挨拶にいかないといけなかったのに。」

先輩はニカッと笑って言う。

『ぜーんぜん!改まった挨拶は、これで終わり!よろしくね!結ちゃん!私のことも、真里って呼んでね。』

あぁ、もう私は幸せです。クラクラするくらい。

真里先輩は、その後恵美先輩とも言葉を交わして打楽器のところに戻っていった。


さて、幸せな緊張は置いておいて、そろそろ集中しよう。

落ち着いて、冷静に。

やってきたことを、やるだけ。

力む必要なんてないわ。

もうずーっと頑張ってきたもの。きっと、大丈夫。


本ベルが鳴る。

私達は、明るい舞台へ歩いていく。





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