17 / 21
何度でも
しおりを挟む
上手と下手に分かれて舞台の奥側に座る人から順番に入場する。
全員が座ると、最後に1人遅れて登場し、客席に向かって礼をする。
今回、それは恵美先輩だった。
コンサートミストレス。
それは、私たちの学校では【クラリネットのトップ】が務めることになっている。
Aブラスはもちろん、吹奏楽の授業でもそれは同じ。
恵美先輩は、2年生からAブラスに合格していいて、しかも去年もコンミスを務めていた。
本当に本当に尊敬する。大好きな先輩。
今日は、先輩の隣で吹ける最後のチャンス。絶対に後悔したくない。
その為にも、平常心、平常心。
恵美先輩に向けられた拍手が鳴り止む頃、指揮者の先生が舞台上へ。
合図でステージにいる全員を立たせる。
バンドが全員正面に向き直ると、先生と恵美先輩は握手。
そして全員着席。客席の拍手も鳴り止んだ。
いよいよね。
先生の手が上がり、私達も楽器を構える。
最初の曲は、クラのアンサンブルから始まる。
やや弱音だから緊張するけど、大丈夫。
何十回も何百回も練習したんだから。
音程に気を遣いながらもスタートはスムーズだった。
いい感じ。さすが、選抜メンバー。
クラのアンサンブルから始まった音楽は、フルート、サックス、ホルンと演奏者が増えていき、ティンパニのロールでクレッシェンドがかかってトランペットとトロンボーンの旋律に引き継がれる。
ここまでの受け渡しも、綿密な練習の成果でかなり綺麗に演奏できた。
すごくいいわ。
前半部の難所を越えたところで、クラは少しだけ休みになる。
リードも特に問題ないし、出番まではそのまま待っていた。
ホルンとユーフォのユニゾンで、中間部の旋律が紡がれていく。
クラは3パートで伴奏に入る。
ここを抜けると、1stクラは2パートに分かれて吹く。
役割は、私(下パート)は他パートと一緒に伴奏。
恵美先輩(上パート)はオーボエとのソーリ。
ここ、本当好き。
恵美先輩らしい瑞々しく艶のある音色がすごく活かされるから!
さすが先輩。本当上手。
私は、自分も隣で吹いているにも関わらず、先輩の音に聴き惚れていた。
客席からも、拍手が起きそうなくらいのテンションを感じた。
2人のソーリが終わると、いよいよクライマックスに向かう。
一度、ファゴットを中心とした木管低音だけになり、低音域から順番に人数を増やしいてく。
クラが入っても、まだまだクライマックスには余力を残しておく必要がある。
ここは慎重にいかないと。
いよいよ金管楽器も参加し始め、一気に盛り上がっていく。
そして最後にトランペットが高々と吹き始めると同時に、小太鼓がロールを始める!
そう、恒星だ!
恒星は、バンド全体を包み込みながらも決して邪魔にならない絶妙なバランスでクライマックスを作り上げている。
私も吹きながら何度も鳥肌が立って涙が滲んだ。
すごい。すごいすごい!!私、こんなに素晴らしいバンドにいるんだ!!
全員で最後の1音を奏でて、1楽章は終わった。
拍手こそ来なかったものの、客席からすごいテンションを感じた。
最高だったわ。今日のステージ。
今年一年で、いや、私が今まで経験した本番の中で1番良いものだった。
尊敬できる先輩方に囲まれての本番。
聴こえてくる全ての音が素晴らしかった。
そして、中でも一際良い音だった人達がいる。
恵美先輩はもちろん、増田先輩、真里先輩、他にも、金管楽器に2名。そして恒星。
この人達は、全員で吹いていても聴き取れるくらい良い音だった。
一言で言えば、次元が違う。どうやったらあんなふうになれるんだろ?
Aブラスの中に、こういう人達がこんなにもいるのが
実は珍しい事だということを、私は後で知ることになる。
今日、私がこの人達と同じレベルの演奏ができていたかはわからないけど、
はっきり言えることは、こう言うステージに、何度でも立ちたいと思ったということ。
本当、吹いている自分達も演奏の良さを感じることができるなんて、中々ないと思う。
自分より上手い人達と演奏するって、とても大切なことなんだなって改めて思った。
プロになったら、こう言うステージが当たり前になるんだと思うと、それだけでワクワクする!
私は、もっともっと上手くなって、これから何度だって今日みたいな体験をする!
私なら、きっとできる!そんなふうに思った。
演奏会後は、ステージ裏で挨拶に回った。
先輩達も皆で話していた。やっぱり、今日の本番はいい物だったんだと確信する。
先輩達が、皆すごくいい笑顔だったから!
私も釣られて笑顔になった。
最高の気分だった。この学校に入ってよかったって心から思ったし、クラを続けていて本当によかったと思った!
挨拶回りが一通り済んだ頃、私の近くに恒星がやってきた。
黙って右手を差し出してくれた。
そのまま静かに握手する。
『ありがとう、結。結がいてくれたから、俺は今日、このステージに立てた。一緒に頑張ってくれてありがとう。』
私は黙って頷く。涙が溢れた。
でも、ちゃんと伝えなきゃ。
「私が言おうと思ってたのに!」
2人で笑い合った。涙を浮かべながら。
そこで、真里先輩が駆け寄ってくる。
『ほらお2人さん!片付けたら打ち上げだよ!』
2人とも真里先輩に引っ張られる形で強制的に連れて行かれた。
うん、恒星とはまたゆっくりはなそう!
今日はまだまだ長い!打ち上げも思いっきり楽しまなきゃ!
全員が座ると、最後に1人遅れて登場し、客席に向かって礼をする。
今回、それは恵美先輩だった。
コンサートミストレス。
それは、私たちの学校では【クラリネットのトップ】が務めることになっている。
Aブラスはもちろん、吹奏楽の授業でもそれは同じ。
恵美先輩は、2年生からAブラスに合格していいて、しかも去年もコンミスを務めていた。
本当に本当に尊敬する。大好きな先輩。
今日は、先輩の隣で吹ける最後のチャンス。絶対に後悔したくない。
その為にも、平常心、平常心。
恵美先輩に向けられた拍手が鳴り止む頃、指揮者の先生が舞台上へ。
合図でステージにいる全員を立たせる。
バンドが全員正面に向き直ると、先生と恵美先輩は握手。
そして全員着席。客席の拍手も鳴り止んだ。
いよいよね。
先生の手が上がり、私達も楽器を構える。
最初の曲は、クラのアンサンブルから始まる。
やや弱音だから緊張するけど、大丈夫。
何十回も何百回も練習したんだから。
音程に気を遣いながらもスタートはスムーズだった。
いい感じ。さすが、選抜メンバー。
クラのアンサンブルから始まった音楽は、フルート、サックス、ホルンと演奏者が増えていき、ティンパニのロールでクレッシェンドがかかってトランペットとトロンボーンの旋律に引き継がれる。
ここまでの受け渡しも、綿密な練習の成果でかなり綺麗に演奏できた。
すごくいいわ。
前半部の難所を越えたところで、クラは少しだけ休みになる。
リードも特に問題ないし、出番まではそのまま待っていた。
ホルンとユーフォのユニゾンで、中間部の旋律が紡がれていく。
クラは3パートで伴奏に入る。
ここを抜けると、1stクラは2パートに分かれて吹く。
役割は、私(下パート)は他パートと一緒に伴奏。
恵美先輩(上パート)はオーボエとのソーリ。
ここ、本当好き。
恵美先輩らしい瑞々しく艶のある音色がすごく活かされるから!
さすが先輩。本当上手。
私は、自分も隣で吹いているにも関わらず、先輩の音に聴き惚れていた。
客席からも、拍手が起きそうなくらいのテンションを感じた。
2人のソーリが終わると、いよいよクライマックスに向かう。
一度、ファゴットを中心とした木管低音だけになり、低音域から順番に人数を増やしいてく。
クラが入っても、まだまだクライマックスには余力を残しておく必要がある。
ここは慎重にいかないと。
いよいよ金管楽器も参加し始め、一気に盛り上がっていく。
そして最後にトランペットが高々と吹き始めると同時に、小太鼓がロールを始める!
そう、恒星だ!
恒星は、バンド全体を包み込みながらも決して邪魔にならない絶妙なバランスでクライマックスを作り上げている。
私も吹きながら何度も鳥肌が立って涙が滲んだ。
すごい。すごいすごい!!私、こんなに素晴らしいバンドにいるんだ!!
全員で最後の1音を奏でて、1楽章は終わった。
拍手こそ来なかったものの、客席からすごいテンションを感じた。
最高だったわ。今日のステージ。
今年一年で、いや、私が今まで経験した本番の中で1番良いものだった。
尊敬できる先輩方に囲まれての本番。
聴こえてくる全ての音が素晴らしかった。
そして、中でも一際良い音だった人達がいる。
恵美先輩はもちろん、増田先輩、真里先輩、他にも、金管楽器に2名。そして恒星。
この人達は、全員で吹いていても聴き取れるくらい良い音だった。
一言で言えば、次元が違う。どうやったらあんなふうになれるんだろ?
Aブラスの中に、こういう人達がこんなにもいるのが
実は珍しい事だということを、私は後で知ることになる。
今日、私がこの人達と同じレベルの演奏ができていたかはわからないけど、
はっきり言えることは、こう言うステージに、何度でも立ちたいと思ったということ。
本当、吹いている自分達も演奏の良さを感じることができるなんて、中々ないと思う。
自分より上手い人達と演奏するって、とても大切なことなんだなって改めて思った。
プロになったら、こう言うステージが当たり前になるんだと思うと、それだけでワクワクする!
私は、もっともっと上手くなって、これから何度だって今日みたいな体験をする!
私なら、きっとできる!そんなふうに思った。
演奏会後は、ステージ裏で挨拶に回った。
先輩達も皆で話していた。やっぱり、今日の本番はいい物だったんだと確信する。
先輩達が、皆すごくいい笑顔だったから!
私も釣られて笑顔になった。
最高の気分だった。この学校に入ってよかったって心から思ったし、クラを続けていて本当によかったと思った!
挨拶回りが一通り済んだ頃、私の近くに恒星がやってきた。
黙って右手を差し出してくれた。
そのまま静かに握手する。
『ありがとう、結。結がいてくれたから、俺は今日、このステージに立てた。一緒に頑張ってくれてありがとう。』
私は黙って頷く。涙が溢れた。
でも、ちゃんと伝えなきゃ。
「私が言おうと思ってたのに!」
2人で笑い合った。涙を浮かべながら。
そこで、真里先輩が駆け寄ってくる。
『ほらお2人さん!片付けたら打ち上げだよ!』
2人とも真里先輩に引っ張られる形で強制的に連れて行かれた。
うん、恒星とはまたゆっくりはなそう!
今日はまだまだ長い!打ち上げも思いっきり楽しまなきゃ!
0
あなたにおすすめの小説
ヤクザのお嬢は25人の婚約者に迫られてるけど若頭が好き!
タタミ
恋愛
関東最大の極道組織・大蛇組組長の一人娘である大蛇姫子は、18歳の誕生日に父から「今年中に必ず結婚しろ」と命じられる。
姫子の抵抗虚しく、次から次へと夫候補の婚約者(仮)が現れては姫子と見合いをしていくことに。
しかし、姫子には子どもの頃からお目付け役として世話をしてくれている組員・望月大和に淡い恋心を抱き続けていて──?
全25人の婚約者から真実の愛を見つけることはできるのか!?今、抗争より熱い戦いの幕が上がる……!!
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
籠の鳥〜見えない鎖に囚われて✿❦二人の愛から…逃れられない。
クラゲ散歩
恋愛
私。ユリアナ=オリーブ(17)は、自然豊かなオータム国にあるグローパー学院に在籍している。
3年生になって一ヶ月が経ったある日。学院長に呼ばれた。技術と魔術の発展しているフォール国にある。姉妹校のカイト学院に。同じクラスで3年生の男子3名と女子3名(私を含め)。計6名で、半年の交換留学をする事になった。
ユリアナは、気楽な気持ちで留学をしたのだが…まさか学院で…あの二人に会うなんて。これは…仕組まれていたの?幼い頃の記憶。
「早く。早く。逃げなきゃ。誰か〜私を…ここから…。」
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる