君との恋の物語-Red Pierce-

日月香葉

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赤いピアス

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「あのね。。」
そう呟いた後、さぎりはしばらく黙り込んでいた。もどかしいが、ここは待つしかない。
しばらくはさぎりの横顔を見ていたが、あまりじっと見ているのもプレッシャーかと思い、川の方に目を向けた。全くもって落ち着かない。。が、それを悟られたくはなかった。

















「詩乃君、この間はありがとね。」
なんだよ今さら笑
『別に。俺は自分のしたいことをしただけだ。』
「そっか。」
そう言ってまた黙り込むのかと思ったら、今度はすぐに続けた。
「私、あれからいっぱい考えたの。。」
だろうな。
『うん。』
俯いて話していたさぎりが、急に俺の方を見た。
覚悟を決めたようだ。。
「詩乃君は、私のことを、信じられる?」
言うと思った。。笑
『当たり前だろう。じゃなきゃあんなこと言わないだろ』
思った通りのことを言った。
「本当に?」
さぎりの目が涙に濡れている。
『本当だ。だから、泣くな』
さぎりはさらに言う。
「だって、だって私、ついこの間まで他の人と付き合ってたんだよ?なのに、今いきなり詩乃君のことが好きですなんて言って、本当に信じられるの?」
愚問だな。
『信じる。ていうか、俺から付き合ってくれって言ってるのに、信じられないとかありえないだろ。考え過ぎなんだよ。過去は過去。昨日のことだろうが1年前のことだろうが過去であることに変わりはないんだ。だったら、どのタイミングで前を向くかなんて、その人の勝手だろ。少なくとも、俺はなにも気にしないよ。』
捲し立てるように言ってしまった。。らしくないな笑
でもまぁ、言いたいことは伝わっただろう。
「詩乃君、やっぱり優しいね。」
『相手がさぎりだからだ。誰にでもじゃない。』
「うん、ありがとう。」
まだ迷っているのか?








いや…








覚悟は決まっているようだ。
さぎりの目から意思を感じる。






「こんな私を好きだって言ってくれてありがとう。私も、詩乃君が好きです。私と、付き合ってください。」





















よっしゃー!!!!!!
























叫び出したいのをどうにか堪えた。
『ありがとう。よかった。』
「うん、私のこと、絶対に離さないでね。」
当たり前だろ。
『離さない。絶対に。』
お互いに躊躇いながら近づいていく。



俺は、さぎりを抱きとめた。
そのまま両腕に少しずつ力を込めて強く抱きしめる。
最高だ。
俺は言葉なんかいらない。
こうしてさぎりが俺を求めてくれるなら充分だ。
もちろん、最初から離す気なんてない。
これからはずっと一緒だ。

「詩乃君、痛い。。」
しまった。
『あ、悪い。』
力を入れ過ぎたみたいだ。
「ねぇ。」

さぎりの顔が近い。。
少し緊張した。
「キスして。」
今度は躊躇わなかった。
さぎりの肩に手を乗せて引き寄せる。
互いの唇が触れ合う直前に目を閉じる。
一度触れた唇を離し、今度はさぎりの首と腰に手を回して抱き寄せ、強引に舌を入れる。
「んっ」
吐息混じりに艶っぽい声を出した。
ほう、こういうのが好きなのか。





街中であるにも関わらず、この河岸にはほとんど人がいない。
おかげで俺達は人目を気にすることなく想いをぶつけ合った。
まだキスだけだが、今はそれでいい。
俺は今日、さぎりの1番になったんだ。
今更あせる必要もない。
それにしても、さぎりは反応がよかったな。。



まだ時間も早かったので、少し遊んで帰ろうと言うことになったのだが、小山駅付近は嫌だと言うので宇都宮へ出た。かと言ってがやがやした街中を歩く気分でもなかったので、駅から真っ直ぐ歩いたところにある、大きな鳥居の神社へ行った。
『ここは俺のパワースポットなんだ。頭を整理したい時や、大きな勝負の前にはよく来る。』
「そうなんだ。ここ、前から気になってたんだよね。」
俺の左腕に自分の腕を絡ませて、さぎりは隣に立っている。この状況が、今日から恋人同士になれたことを実感させてくれる。
『まぁ、俺は基本的には勝てる勝負しかしないから、願掛けっていうのとは違うけど。』
「そうだよね。詩乃君は、いつも1番だもんね。」
そう言って無邪気に笑う。
最高の癒しだ。
『これからは、なにかあればさぎりも一緒にきてくれ。今までは一人だったけど、これからは…』
「二人がいいもんねっ!うん、一緒に来ようね!」


「あ、そうだ詩乃君、もうピアスはしないの?」
おっとこれは。。不意打ちだな。まぁ、いいか。過去は過去だ。
『あぁ、ピアスって、ちょっと前まで着けてた青いのだろ?少なくとも、あれはもうしない、かな。』
さぎりは少しだけ表情を曇らせた。
察したかな。。?
「そう、なんだ。。じゃ、私が新しいのをプレゼントしても。。いいかな?」
なんと!そう来たか。。それなら断る理由なんかなかった。
『さぎりが選んでくれるなら大歓迎だ。むしろ、それを着けたい。』
「本当!?やった!ねぇ、それなら今から買いに行こうよ!!」
子供のようにはしゃいでいる。
そうだ。さぎりの本来の姿はこれだろう。もう、あんな風に思い詰めているところは見たくない。
ずっとそのままでいろよ。
『今からか?まぁ、いいけど。じゃ、駅の方に行ってみるか?』
「うん!行こう行こう!!」
そう言って走らんばかりの勢いで俺を引っ張っていく。よかったな。これから、俺はお前をもっと幸せにしてみせるよ。














家に帰ると、早速鏡の前に立った。
さぎりからもらった赤いピアスが、光っている。
色は、さぎりが選んだ。俺には赤の方が似合うと言っていた。
こうして鏡で見ていると、確かに悪くない。
ありがとう。さぎり。


それにしても、まさかあいつと真逆の色を選ぶとは。。
いや、いい。過去は過去だ。
今の俺は、さぎりの彼氏だ。もうなにも関係ない。
さて、ピアスのお返しはなににするかな?
あ、そうだ、仲間内にも紹介しないとだな。
いいね。これからの大学生活は楽しみしかない。勉強?なんの問題もないね。俺はトップには狙ってなるんでね。それに、唯一狙ってもなれない恋愛でのトップにも今日なったわけだ。
最高だな。本当に。




週明けの月曜日は一限から授業だった。さぎりとは、次の二限と、昼休みを挟んで三限が同じ授業だ。そして四限はまた別の授業だ。
付き合っているとはいえ、友達関係もある。俺の方はまだいいけど、女同士は中々面倒なこともあるだろう。だから俺は、基本的に同じ授業であっても一緒に受けることはしばらくないだろうと思っていた。。が。。
さぎりは二限も三限も俺と一緒に受講した。友達関係は大丈夫なのかと一瞬心配もしたが、まぁいいか。一緒に受けられるなら願ったり叶ったりだ。それに、俺は授業だけは真面目に聞いているので周りに誰が座っていてもあまり関係なかった。
昼休みも一緒にいたいと言うので、俺はさぎりを友達に紹介した。
『ほぅ、こんな可愛い子どうやって落としたんだよ?』
『詩乃!やるなぁ!』
などと言われ、俺よりさぎりのほうがずっと照れていた。笑
友達からの印象もよかったみたいでほっとした。
こいつらとはこれから長い付き合いになる。
俺はそう感じていたので、さぎりの最初の印象は少し気になっていた。
ま、この分なら問題ないだろ。
俺は、これからの大学生活が本当に楽しみだった。
まだ序盤中の序盤のこの時期にこれだけの友達に恵まれた上に、最高の彼女までできたんだからな。
この際だから、いつでも会ったり泊まりに来たりできるように部屋でも借りるか?
そのためにもそろそろ仕事を始めた方がよさそうだな。
俺は、知り合いの出版社から時々仕事を頼まれる。仕事と言っても俺が文章を書くわけじゃない。俺の仕事は添削を含むいわゆる文章の“直し“だ。だけど、これがいい収入になる。この仕事がある限り、俺は学生の間のバイトは必要ないと思っている。
入学して1ヶ月くらいは休ませてほしいと伝えてある。そういう意味でもそろそろ頃合いだろう。



四限の授業を終えたら、校舎の出口に向かう。そこでさぎりと待ち合わせしている。
「お待たせ!」
『おう』
随分と張り切っているようだ。ただ一緒に帰るだけなのに随分と大袈裟だなとも思うが、そこがさぎりの可愛いところだ。
「わざわざありがとね!」
『いや、いいよ。俺も一緒にいたいからな』
そう言うとさぎりは顔を赤くして俯いた。なんだよw
今日は、バイトがあると言うので駅まで送る約束をしていた。
大した距離ではないが、二人の時間が欲しかったので、一緒に歩くことにした。
「詩乃君は、イタリアンって好き?今私がバイトしてるお店、結構美味しいから、今度一緒に行かない?」
イタリアンか。嫌いではない。むしろ結構好きだ。
『いいね。一緒に行こう。オススメのメニューを考えておいてくれ。』
「うん!わかった!楽しみだねっ」
そう言って無邪気に笑うさぎりを見て改めて思った。
俺はこう言うふうに、今を過ごしたかったんだ。何事にも一生懸命。努力して努力して、結果を出す。それからまた努力する。そんな繰り返しばかりの日々は好きじゃない。
もちろん、努力をすること自体はいいことだと思う。だけど、俺はそれだけに囚われて生きていたくない。もっと、日常を大事にゆったりと過ごしたい。そういないと、すぐに余裕がなくなるからだ。余裕がなければいいパフォーマンスはできない。だから俺は、いつでも余裕を持てるように無理はしないことにしている。
こうやって過ごすには、きっとさぎりみたいな人と一緒にいるのがいいんだと思う。
少なくとも、あいつといるよりはいい。
またつまらないことを思い出したな。
今、俺にはさぎりがいるんだ。それで充分だ。




















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