君との恋の物語-Red Pierce-

日月香葉

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同棲の話

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今までのことを話し終えると、話題は当然これからの話になる。

「詩乃は、今度はどのあたりに住むつもりなの?」

『まだちゃんとは決めてないんだ。学校の近くか、或は職場の近くになるかな』

「そっか。職場っていうと、駅の向こう側だっけ?」

まぁ、そんなところだ。黙って頷く。

『けどまぁ、どうするかはわからない。まだ内見にも行ってないし。』

すると、さぎりの顔がパッと明るくなった。

「え!じゃ行こうよ!今から!」

え?

『今から?』

「うん!都合悪い??」

いや、

『だって今日は、これまでのこととか、これからのことを話すんだろ?』

さぎりは一瞬だけ考え込むような素振りを見せたが、すぐに元の表情に戻った。

「今までのことも、これからのことも、もちろんお話ししたいけど、私は、これからも詩乃と付き合っていきたいって気持ちは全然変わらなかったよ?」

それはもちろん

『あぁ、それは俺も同じだよ。』

さぎりの笑顔が一段階明るくなる。

「よかった!じゃぁさ、この話はこれからゆっくり時間をかけてしていこうよ!」

ん?

『いやだから、それを今…』

「そうじゃなくて、これからも一緒にいられるなら、いつ話したっていいじゃないって意味!」

あぁ、そうか。

『あぁ、まぁ、それもそうか。』

「うん、もし、今日が最後って言うなら今話さなきゃいけないけど、そうじゃないんならさ!」

まぁ、それもそうだな。

『そうか。わかった。じゃぁ、不動産屋に行こう。』

「うん!」

さぎりは本当に変わったみたいだな。

よかった。これで一安心だ。これからは、俺の方も少し頼ってもいいかもしれない。

珍しくそんなことを考えた。



駅前の不動産屋に着くと、店内のカウンターに案内された。

予め電話を入れていたので、割とスムーズに間取り図を見せてもらえた。

既に新年度が始まっているからなのか、店内は空いていた。

出てきた間取り図は全部で4枚。それぞれ値段や立地条件が異なる。

1つ目は、立地が最高な上に間取りは2LDK。条件は1番いいが家賃が高過ぎる。

2つ目は学校よりの2LDKで、職場までは少し遠くなるが、家賃は安い。今のところ+αくらいだ。

3つ目は1LDK。駅と学校の中間くらいなので、職場には近くなる上に家賃も安い。

4つ目1LDKで学校のすぐそば。家賃はなんと今とほとんど変わらずだった。が、築年数がちょっと気になる。リノベーションが入っていると入っても、30年か…。

「いかがでしょう?この中から2軒までなら今からでも内見にいけますが。」

不動産屋のカウンターにいた人は、感じの良い女性だった。

聞けば車で行ってくれるとのことなので、お願いすることにした。

お願いしたのは、2つ目と3つ目だ。


「わっ!広いね!!」

部屋に入るなり、さぎりは感嘆の声を上げた。

確かに広い。リビングダイニングは12畳。他に6畳の個室が2つ。

正直、この広さとパッと見た感じの綺麗さから、ここが良さそうだと思った。

1LDKでは、職場と寝室が同じになってしまうし、それぞれの部屋もここよりは若干狭くなってしまう。

「この物件は、結構人気あるんですよ。陽当たりもいいですし、駅からもそんなに遠くなくて安いですからね!」

不動産屋の女性おすすめの物件らしい。

『ここ、買い物できるスーパーやコンビニは近くにありますか?』

聞けることはこの機会に聞いておこう。

「えぇ、ございますよ!ちょっとベランダの方へどうぞ」

そう言って俺たちを案内する。

「あちらにスーパーそれに、ここからは見えませんが、この道をまっすぐ行くと、3分くらいでコンビニもあります。」

さすが、おすすめというだけあって詳しかった。

キッチンの水栓も新しめのデザインだし、洗面台も綺麗だ。

風呂は、広くはないが、ここは妥協ポイントだ。

聞けば駐車場も月に5000円で借りられるとのこと。

「どう?気に入った?」

さぎりが俺の顔を覗き込むようにして聞いた。

『まぁな。もう一つの方も見せてもらおうか。』

「そうね!」

ということで、一度全部を締め切って次の物件へ向かうことになった。

一通り見せてもらった上に、周りの商業施設も聞いてみたが、正直最初に見たところ程魅力を感じることはなかった。

不動産屋に帰ってきてカウンターにつくなり、俺は言った。

『今日見せてもらった、最初の方、つまりこの物件にします。』

この発言にはさぎりも不動産屋も驚いていた。

けどまぁ、俺としてはこれ以上の物件もなかったのだ。

引越しやらは、決めてから考えればいい。

その後は、いつから住み始めるか等、具体的な話をして解散になった。

後2、3回は書類のやりとりが必要になるだろうとのことだった。


ということで、家に戻ってきて最初に、加藤さんに連絡を入れた。

「もしもし」

『もしもし、突然住みません、今大丈夫ですか?』

俺は簡潔に今の状況と、自分がどうしたいかを話した。

「なるほど。それはうちとしてもありがたいよ。上原さんには僕から話しておこう。雇用契約書とか、必要な書類が揃ったらまた連絡するよ。仕事内容は特に変わらないから、今まで通りリモートで構わないから。」

丁寧に御礼を言って電話を切った。

『悪いな。勝手に決めて』

電話を切るなり、さぎりにも謝った。

「んん、びっくりはしたけど、私は全然!楽しみだね、新生活!」

『そうだな。一応、ちゃんと言っておきたいことがあるんだけどいいか?』

さぎりは少し緊張したようだ。

「うん」

『まぁ、あんまり硬くならずに。』

俺は、一応前置きして話し始めた。

『俺たちは、寄りを戻したってことでいいんだよな?だったら、今までみたいに部屋に泊まりにきてもらうのは全然OKなんだけど、同棲は、少なくともお互い学生のうちはやめようってことだ。』

これを聞いてさぎりは少し緊張を解いたようだった。

「うん。それは、私もそう思ってる。ほんとは、泊まりもだめなんだろうけど、まぁそこは、いいとして。」

どうやらさぎりは俺と同じ考えのようだ。よかった。

『そうか。さぎりもそう思っているならいいんだ。新しい部屋に引っ越したら、今よりずっと広くなる。いつでも泊まりにこいよ』

さぎりに笑顔が戻った。

「うん!」

その日は、結局さぎりは泊まっていった。

終始笑顔で過ごしてくれた。

付き合い始めた2年前は、あんなに泣いてばっかりだったのに。

よかった。これからもずっと、この笑顔を見ていたいと思った。
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