死に別れた縁と私と異界の繋

海林檎

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 近々北で開催される 集縁祭しゅうえんさいと言う祭りがある。
 各国の神々が集まり、その数日間は観光客が増える為、北から南までの国土が活気づく。

 集縁祭は上級の神々しか参加出来ない為、参加出来ないもの達がこちらに流れつく。

 その為、町は町で祭りを開くらしい。


「その数日間はむちゃくちゃ治安悪くなるから外出禁止な」

「···まぁ、良いけど」

 祭りは来月。
 色んな国の神や妖が来る為、国全体は潤うが悪魔や悪神等も遊びに来る為無法地帯になるとの事。
 勿論警備隊を配置しているが、いつもより治安が悪くなるのには変わりない。

「ここに人間が居ると知れば間違いなく狙って来るからな」


 捕まって食い殺されてしまうだろう。

 繋達と一緒にいるから忘れそうになるがこの世界は結にとって危険に変わりないのだ。

「まぁ、話はこれくらいにして茶を入れてきてくれ」

「···あ、ぅん。わかった」

 繋の机にある湯呑みを取り、お盆に乗せて「ついでだから何か甘い物をもってこよう」と、考えながら執務室の襖を開けようとした時だ。



 ----ガラリと、勝手に襖が開いた。


「··········」


 目の前には鶴に似た大きな翼を生やした高身長の綺麗な女性。

 思わず見惚れていたら女性の顔が歪んだ。

「誰?あんた」

 女性は思いの外怖かった。
 ここ、一週間以上この屋敷に世話になっているが、屋敷にこんな怖い美人を見た事ない。

姫雛ひめひなか」

「長。戻ったわよ」

 風呂敷を持った姫雛と呼ばれた美女は結を押しのけて繋の傍に寄る。

「西中に羽毛の羽織売りつけてきたわ」

「ご苦労さん。あっちで良いでも捕まえてきたか?」


「あきちはいつでも長一筋よ」

 妖艶な着物を纏った美女は机に乗って繋の頬を触れながら小さく笑う。

 何だか強烈なお姉さんが登場してきたなと遠目で見た後に結は静かに襖を閉めた。

「······さっきの娘。あれ何よ?」

 西の様々な町や村に自分の町の名産物の営業しに行き、取引をしていた姫雛は結の存在なんて知らないのは当たり前だろう。

 どう見ても妖でもましてや神でもないのは目に見える。

「人間だ」

「人間!?」

 何故この世界に人間がいるのだと姫雛は目を見開き驚愕する。
 原因不明の何かによって迷い込み、帰れなくなったから保護をしている。
 座敷わらしのイタズラでこの世界の食べ物を口にした事。
 自分の身の回りの世話を仕事として与えている事を伝えると「信じられない」という顔をした。


「身の回りの世話なら私が···っ!」

「お前は別の仕事があるだろ。結が出来るのはそれしかなかったからさせているだけだ」

 力も能力もない結ができる事が繋の秘書的役割。
 それを目の前にいる繋の口から聞いた姫雛は顔を歪ませた。
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