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33.個室での会話

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 大部屋の部屋があくまで暫く空いている個室へと案内された。
 寝かされる時に看護師四人係で下に敷いたタオルを持ちベットにうつされる。
 その時の振動が肋骨に響いた。

「看護師さん···痛いっス···」

「ごめんね。これでもゆっくり降ろしたんだけど····」

 申し訳なさそうに言う看護師に昊の方が罪悪感を感じてしまった。

「いえ···大丈夫ッス」



「何かあったらコレで呼んでくださいね」と、ナースコールを持たされた後に看護師達は部屋を出ていった。

 警察が来るまで個室には昊と洋の二人きりだ。

 
「洋君」

「心配かけてごめん」と、昊から謝罪の言葉が出てくる。
 素直に「心配した」と洋の口から本音が出た。
 
「ここに来るまで生きた心地がしなかった」

「·············」


 丸椅子に座る洋の口から少しずつ本音が溢れ出てくる。

「昊さんが死んじまったらどうしようって···考えれば考えるだけ頭の中ぐちゃぐちゃになった」

 家の鍵すらかけずに上着も着ずに病院に向かってただひたすら走った。
 途中でクラスメイトに会って自転車を貸してほしいと頭を下げて、そのクラスメイトがここまで乗せてくれた。

 その間もずっと「心配でたまらなかった」と、洋は言う。
 洋が話す間、昊は何も言わずに洋の言葉に耳を傾けていた。

「すげぇ怖かった···」

 自分が元番に暴行をされた時よりもずっと不安で怖くて仕方がなかった。

「····お願いだから」




 俺から居なくならないで。




 涙を流す洋の顔を見た昊は起き上がり洋を抱き締めた。

「い゛っ!!」

「っ馬鹿!何してんだよ!?」

 肋骨が折れているというのに勢い良く起き上がって抱きしめる昊に洋は驚き焦る。
 
「目の前で好きな奴が泣いてるのに寝てられっか」

 顔面蒼白で冷や汗をかきながら言う台詞ではない。
 とにかく安静にしてもらう為に洋は泣き止むからと昊を寝かせる。

「····くそ痛ぇ」

「そりゃそうだろ····」

 今のが原因で悪化したらどうするんだと洋が小言を言う。
 
「····ははっ」

「笑い事じゃねぇし」

 それでも今、こうやって洋の小言も聞ける事は鎖帷子のおかげだ。



 鎖帷子に助けられたホスト。
 後にこの話はホストの間で有名になり、ラストイベントをするホストは鎖帷子を身に付ける人が増えた事なんて今この場にいる二人は知る由もなかった。


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