夏やすみ 姉妹奇談

tomonoshin

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姉妹奇談 幼少期その1

夏やすみ

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叔父さんお久しぶりです!

東京に住む従弟が大学の夏やすみ、早めの卒業旅行で私の家に友達をつれてやってきた。

何年ぶりだろう、従弟は背も高くなり、都会の雰囲気をただよわせ、私とひとつ上の姉、共に高校生だが、少しドキドキした。

両親は、昔ばなしに花をさかせつつ、お酒も進み、みんな大いに盛り上がっていた。

明日はみんなで観光してみよう

父は普段よりお喋りで上機嫌にそう言って、早起きのためにと母をつれて先に寝てしまった。

残った私たち四人はまだまだ話し足りなく、夜中まで騒いでいた。

あれ、もう飲むものなくなったよー

姉は冷蔵庫をあけ、そう告げた。

近くにコンビニが出来たんだよ!
みんなで行こうよ!

姉がそういうと、酔った従弟とその友人はニコリと笑って、立ち上がった。

田舎の道は街灯も少なく薄暗い。
普段ならこんな時間には女同士で歩くことはないな、そう思う。

でも、今夜は違った。

都会からきた従弟とその友人と四人なのだから。

コンビニでお酒とジュースと少しのお菓子を買い歩いて帰る途中、従弟が突然言った。

この近くに公園があったよね?確か。

そうそう!
よく覚えてたね!すぐ近くだよ!

姉はすぐさま返事を返していた。

ちょっとみり道していこうか?懐かしいし。

従弟はその話しにのったのだ。

かくして、四人は家から5分ほどの公園についた。
小さく、子供の頃はよく姉と幼なじみときたものだ。

そう、ほんの、小さな頃は。

公園の隣は神社だ。

この街では有名なところだ。

夏祭り、初詣、厄払い、常に参拝客も訪れる。

人は神々しい場所に引かれるものだ..。

私たちは公園の中でも騒いでいた。

従弟たちはビールを飲み、おおらかになりお喋りで常に笑いあっていた。

私は神社に背を向け公園の真ん中にいた。

小さな公園の街灯はひとつで薄暗く、田舎特有、虫が多く集っていた。

ジジっと焼ける音がする。

小さな虫は街灯に当り、焼けて、落ちる。

夏だな、とりとめもない事をふいに考える。

気を、そらしていたのだ。

きゃっ!
虫が!

姉が大声をあげて友人に駆け寄った。

大丈夫?こっちにおいでよ

公園のはし、神社とちょうど隔てるように大きな木が三本たっている。

街灯から焼けて落ちる虫を避けるように二人はそちらへ向かった。

ふいに従弟が私の手をとり、そちらへ導く。

まったく、余計だ
姉の虫嫌い

さっと従弟の背後にまわりさりげなく抱きつく

あぁ、背が高くなといった従弟があと五センチたかければ、姉の虫嫌いが治っていたなら、最高の夜だったのに。

後ろに回った従弟の肩から五センチ上に見える木のてっぺんには、荒縄で首吊りしたサラリーマンの顔がこちらをみている。

にやりと、私にだけみえる
何体も何人も。

人は神々しい場所に引かれるものだ。
元々人であったものたちもだが。

今夜は最高の夜だったはずなのに。



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