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姉妹奇談 幼少期その1
姉妹奇談
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気付いたときには、彼女はすぐ近くにいた。
物心ついた記憶からというべきだろうか。
彼女の名は、百合。
私よりひとつ上で早生まれなので学年で言えば二つ上だ。
そう、私の姉であるのだが。
ほんの小さな頃は、とても似ていてよく双子に間違われたものだ。
声も良く似ていて電話でもわからない。
母は色違いの洋服を着せて、一人で喜んでいた。
私はピンクが好きで姉は青が好きだった。
それでわかる通り、性格は似ていない。
私は明るく社交的で愛想笑いが上手な子供だった。
姉は人見知りで落ち着きがよく、頭が良かった。
後ろ姿や、無表情でいれば誰も違いがわからないほど小さな頃は良くにていたのだが。
それは、ほんの小さな頃、私が5才になるかならないかの時だった。
周りの子供たちは幼稚園や保育園に通っていたが私達はどこにもいっていない。
たいがいの時間を二人で過ごしていた。
母は週に三回ほど近くのスーパーで三時間のパートをしていた。
歩いて二分ほど、なにかあればすぐに駆け付けることの出来る場所だった。
そのスーパーの裏の駐車場で私達は遊んで待つのが習慣だった。
あの日までは。
夏の夕暮れ
空は茜色に染まり太陽は西に傾く。
沈みゆく太陽に背を向け、私達はガランとした駐車場でバドミントンをしていた。
姉は駐車場の奥の壁がわ、私は道路側。
「いくよー」
「もー、太陽が眩しくて見えないよー」
その姉の言葉よりも早く羽を打ち付けていた。
案の定、姉は羽を打ち返せず頭上を通り越しコンクリートのでこぼこした地面に落とした。
「あー!もー」
羽を拾うために姉はかがんだのだった。
いや、それは誰でもそうする行動であって、おかしくもなんともない。
ただひとつ、かがんだ姉の後ろに私よりも少し小さな女の子が立っていた事以外は。
その駐車場は二人きりだった。
姉は駐車場の壁際で後ろは隣の家と隔てるためのコンクリート塀がある。
太陽はそのとき、私の後ろ側だった。
眩しくて見間違えるはずはない。
うっすらと透けて見える女の子に、不思議と恐怖感はなかった。
小さな白色のワンピースを着た三歳くらいの女の子。
直感的にこの世のものでないと、心が叫んだ。
「もう、帰ろうよ」
姉の言葉にハッとなり
うん、わかったと、その場を立ち去ったのだった。
忘れもしない、私の中の何かが目覚めた瞬間なのだった。
まだ5才ほどの幼きあの日、あの茜色の夏の夕暮れ。
汗ばみながら姉とバドミントンをしたあの日から、私達姉妹の物語は始まりを迎えた。
物心ついた記憶からというべきだろうか。
彼女の名は、百合。
私よりひとつ上で早生まれなので学年で言えば二つ上だ。
そう、私の姉であるのだが。
ほんの小さな頃は、とても似ていてよく双子に間違われたものだ。
声も良く似ていて電話でもわからない。
母は色違いの洋服を着せて、一人で喜んでいた。
私はピンクが好きで姉は青が好きだった。
それでわかる通り、性格は似ていない。
私は明るく社交的で愛想笑いが上手な子供だった。
姉は人見知りで落ち着きがよく、頭が良かった。
後ろ姿や、無表情でいれば誰も違いがわからないほど小さな頃は良くにていたのだが。
それは、ほんの小さな頃、私が5才になるかならないかの時だった。
周りの子供たちは幼稚園や保育園に通っていたが私達はどこにもいっていない。
たいがいの時間を二人で過ごしていた。
母は週に三回ほど近くのスーパーで三時間のパートをしていた。
歩いて二分ほど、なにかあればすぐに駆け付けることの出来る場所だった。
そのスーパーの裏の駐車場で私達は遊んで待つのが習慣だった。
あの日までは。
夏の夕暮れ
空は茜色に染まり太陽は西に傾く。
沈みゆく太陽に背を向け、私達はガランとした駐車場でバドミントンをしていた。
姉は駐車場の奥の壁がわ、私は道路側。
「いくよー」
「もー、太陽が眩しくて見えないよー」
その姉の言葉よりも早く羽を打ち付けていた。
案の定、姉は羽を打ち返せず頭上を通り越しコンクリートのでこぼこした地面に落とした。
「あー!もー」
羽を拾うために姉はかがんだのだった。
いや、それは誰でもそうする行動であって、おかしくもなんともない。
ただひとつ、かがんだ姉の後ろに私よりも少し小さな女の子が立っていた事以外は。
その駐車場は二人きりだった。
姉は駐車場の壁際で後ろは隣の家と隔てるためのコンクリート塀がある。
太陽はそのとき、私の後ろ側だった。
眩しくて見間違えるはずはない。
うっすらと透けて見える女の子に、不思議と恐怖感はなかった。
小さな白色のワンピースを着た三歳くらいの女の子。
直感的にこの世のものでないと、心が叫んだ。
「もう、帰ろうよ」
姉の言葉にハッとなり
うん、わかったと、その場を立ち去ったのだった。
忘れもしない、私の中の何かが目覚めた瞬間なのだった。
まだ5才ほどの幼きあの日、あの茜色の夏の夕暮れ。
汗ばみながら姉とバドミントンをしたあの日から、私達姉妹の物語は始まりを迎えた。
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