婚約破棄された侯爵令嬢ですが、これからは盗賊として立派に生きていきます!

かみき

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突きつけられた二択

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声の主は既に黒マントを脱いでおり、短剣を帯びてはいるものの、ゆったりとした部屋着に身を包んでいる。
「貴方……」
「そ。あんたと同じで女の子さ」
彼女は波打つ黒髪を揺らしてシャルロッテが寝ているベッドに勢いよく腰かけると、白い歯を見せて笑う。
「エリーゼだ。この峠で盗賊をやってる。よろしくな、シャルロッテ」
教えてもいない本名を呼ばれ、一方的によろしくされて腰に回されそうになった手を、シャルロッテはぴしゃりと払いのける。
成程、道理で髪の色が元に戻っているわけだ。
辺境貴族に向けては王宮からシャルロッテ逃亡と外見的特徴の情報が送られていると思っていたが、まさかそれが盗賊にまで周知の事実となっているとは。
「まぁまぁそう怖い顔しなさんな。取り敢えず、良い知らせと悪い知らせ、どっちから聞きたい?」
「悪い知らせですわね」
髪の色まで検分されて今さら喋り方だけ誤魔化しても仕方あるまいと、シャルロッテは素の言葉遣いで応じる。
「お、良い知らせは後から大事に味わいたいタイプか?」
「まさか。悪い知らせの方が緊急性を要する場合が多いからですわ」
エリーゼの軽口に、シャルロッテは冷淡に答えた。
「冷たいね、髪の色と同じだ。まぁ良いや、じゃあ悪い知らせから」
さりげなく銀の髪をひとふさ掬い上げようとした手を先刻より強めに払いのけられてもエリーゼは気にした様子もなく、飄々と言葉を続けた。
「もう間も無くあんたは逃亡犯扱いになって、賞金がかけられる。庶民にとっちゃ目がくらむような金額のね」
王子からの賞金。ついにリューグナーが言った通りの展開になったわけだ。
しかし、もう間も無くとはどういうことだろうか。
「あたしは斥候を放ってるんでね。他人よりちょっぴり先に情報が手に入るってわけ」
そう言うと、ぱちんと音がするようなウィンクをするエリーゼ。
「まぁでも、ここらで稼いでる他の盗賊に話がいくのもすぐだと思うよ。近隣のお貴族様がた、遅くても明日の昼までには逃亡犯に関するお触れを出すだろうし」
エリーゼの言葉に、シャルロッテは黙り込んだ。
リューグナー方式でいけば、盗賊達がシャルロッテを捕らえ、日頃から賄賂を掴ませている兵士にでも引き渡し、後で賞金を山分けするという算段になる。
「じゃあ、次は良い知らせに移ろうか」
そう言うと、エリーゼはぐっとシャルロッテに顔を近づける。
「あたしはあんたが気に入った。一緒に盗賊をやらないか?」
シャルロッテはエリーゼを押し返そうとしたが、彼女の体幹がしっかりしているためにそれは叶わなかった。
シャルロッテの月光のような銀髪と、エリーゼの波打つ黒髪が重なり合う。
真っ直ぐに自分を見つめる瞳が深みのある綺麗な金色であることに、シャルロッテは今更ながら気がついた。
戦っている時はそれどころではなくて、あまり意識していなかったが……。
「……それより、私を捕まえて然るべき相手に引き渡した方が得ではなくて?」
「金の問題じゃない。あたしはあんたと盗賊をやりたいんだ。あんた、王宮で婚約破棄されてからここまで剣一本で突っ切ってきたんだろう? 先刻やりあった時も、惚れ惚れするような剣さばきだったもの」
「…………。」
シャルロッテに二つの選択肢が突きつけられた。
一つ目は、エリーゼの申し出を断って出ていくこと。
仮に出て行ったとしても、シャルロッテほどの剣才があれば盗賊達を返り討ちにして何とかやっていけるだろう。食料等は盗賊達から奪えば事足りる。
二つ目は、エリーゼの申し出を受けて盗賊の仲間になること。
しかし、それは……。
「急がなくても良いさ、ゆっくり決めな」
エリーゼは身体を離し、シャルロッテの肩をぽんと叩くと、そのまま部屋を出ていく。
一人残されたシャルロッテは、唇を軽く噛みしめた。
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