婚約破棄された侯爵令嬢ですが、これからは盗賊として立派に生きていきます!

かみき

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黒衣の盗賊

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シャルロッテに馬を下りるよう要求した男は、それ以上の要求は何もしなかった。
何故なら、口を開く前にシャルロッテの剣が首に突き刺さっていたからである。
馬に乗る姿勢を保てなくなった男の巨体がどうと地面に落ち、他の盗賊達に凄まじい恐慌状態をもたらした。
「お頭! お頭ーッ!!」
「馬鹿お前うろたえるな! やっちまえ! やっちまうんだ!」
「てめぇぶっ殺してやる!」
盗賊達は口々に喚きながら、一斉にシャルロッテに向かって武器を振りかざす。
頭に血がのぼっている盗賊達とは裏腹に、シャルロッテは一人冷めていた。
せっかく頭数を揃えておきながら、統率とは無関係に突っ込んできては自ら優位を放棄するようなものだ。
上半身を狙った大刀を軽く避けると、大刀を振ったことで生まれた隙をついて相手を倒す。
盗賊達はいずれも巨躯と武器を有していたが、それが故に力押しで振り回すしか能が無く、シャルロッテの敵では無かった。
最後の一人が呻き声をあげて馬から落ちると、シャルロッテは剣を一振りして溜息をつく。
勿論それは、
「疲れたからってわけじゃなさそうだな」
突如聞こえた、凛とした声の方角に、シャルロッテは目を向ける。
黒いマントを纏った人物が一人、黒馬に乗って面白そうに彼女を見つめていた。
雰囲気からして今倒した盗賊の仲間というわけではなさそうだ、とシャルロッテが考えた次の瞬間、黒衣の人物が一気に距離を詰め、剣を振り下ろす。
「…………!」
何とか受け流したが、すぐに次の攻撃がシャルロッテの胴を狙う。
そこからは、馬の額をぶつけんばかりの至近距離で激しい斬り合いが始まった。
二人の剣がぶつかる度に金属音が鳴り、火花が散る。
数十合に渡って斬り合っても勝負はつかず、シャルロッテの乗った馬からは汗が湯気となって立ち昇り、疲労の色が濃く見えていた。
「あんたはまだイケそうだけど、馬の方が参っちまってるね」
大方ここ数日、無理して走らせたんだろう? 黒衣の人物はそう言い当てると、さらに攻撃の手を激しくした。
「悪いけど、そろそろ終わらせようか!」
黒衣の人物が振り下ろした剣を受けたと思った瞬間、シャルロッテの鳩尾に鈍い衝撃が走る。
隠し持っていた短剣で突かれたのだ、と気づいたのは、意識を失う直前だった。

シャルロッテが目を覚ますと、見慣れない天井が視界に入った。
(ここはどこなのでしょう……)
鳩尾に未だ残る鈍い痛み。
気絶するまでの記憶を追い、俯いた拍子に顔の横を流れ落ちた自分の髪を見てハッとする。
黒く染めていたはずの髪が、元の銀色に戻っている。
意識を失っていた間に、何者かがシャルロッテの髪を触ったのだ。
しかも、そこまでしたならシャルロッテが女性であることも当然バレているはず……。
「おや、お目覚めのようだね」
硬直するシャルロッテの耳に、あの凛とした声が響いた。
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