11 / 20
老宰相の寝室にて
しおりを挟む
時は遡って、夜会当日。
本日も職務を滞りなく済ませ、老齢を理由に夜会には出席せず、病に臥せる王を見舞ってから、老宰相は帰路についた。
王宮から急報が入った時、彼は既にベッドに入り、半分ぐらい夢の世界へと旅立っていた。
「何事だ、騒々しい」
「申し訳ありません! ですが……!」
そこから始まる怒涛の非常事態報告。
ドゥム王子による突然の婚約破棄。勿論、老宰相にとっては寝耳に水である。
新たな婚約相手が王子の口から発表されたこと。これも老宰相にとっては以下略。
オツェアン侯爵に庶子が居るという噂は聞いたことがあったが、本当だったのか。
王子の婚約者をシャルロッテからチェルシーに変えたところで侯爵家に利があるわけではなし、大方ドゥム王子が王家の権威をちらつかせてあれこれと無理を通したのだろう、と彼はあたりをつけた。
それにしても侯爵も侯爵だ、ボンクラ王子の要求など毅然と撥ね退ければ良いものの!
自身の事なかれ主義を盛大に棚上げし、老宰相は心の中でオツェアン侯爵を非難した。
何にせよ、この事態は自分には荷が重い。
この老人は、日々変わり映えのせぬ業務をコツコツとこなすこと、少々のトラブルをそれなりにおさめることには長けていたが、それ以外のこととなるとお手上げだった。
思わず立ち眩みを起こしてサイドテーブルに手をついた老宰相の眼前に、スッと琥珀色の液体が入ったグラスが差し出される。
「落ち着いてください、お祖父様」
いつの間にか寝室にやってきた人物はそう言って、安心させるようにニッコリと微笑んだ。
「既に手は打ってあります、ご心配なさらぬよう」
「おお、そうか……というか、いつの間に……」
「まぁまぁ、そんなことはどうでも良いじゃないですか」
老宰相をお祖父様と呼んだその人物は、彼が飲み終えたグラスを受け取ると、ひらひらと手を振った。
「お祖父様は安んじてお休みください。あとは万事、私が何とか致します」
寝室に低く響いたその声は、全てを見透かしているかのような絶対的な自信に満ちていた。
本日も職務を滞りなく済ませ、老齢を理由に夜会には出席せず、病に臥せる王を見舞ってから、老宰相は帰路についた。
王宮から急報が入った時、彼は既にベッドに入り、半分ぐらい夢の世界へと旅立っていた。
「何事だ、騒々しい」
「申し訳ありません! ですが……!」
そこから始まる怒涛の非常事態報告。
ドゥム王子による突然の婚約破棄。勿論、老宰相にとっては寝耳に水である。
新たな婚約相手が王子の口から発表されたこと。これも老宰相にとっては以下略。
オツェアン侯爵に庶子が居るという噂は聞いたことがあったが、本当だったのか。
王子の婚約者をシャルロッテからチェルシーに変えたところで侯爵家に利があるわけではなし、大方ドゥム王子が王家の権威をちらつかせてあれこれと無理を通したのだろう、と彼はあたりをつけた。
それにしても侯爵も侯爵だ、ボンクラ王子の要求など毅然と撥ね退ければ良いものの!
自身の事なかれ主義を盛大に棚上げし、老宰相は心の中でオツェアン侯爵を非難した。
何にせよ、この事態は自分には荷が重い。
この老人は、日々変わり映えのせぬ業務をコツコツとこなすこと、少々のトラブルをそれなりにおさめることには長けていたが、それ以外のこととなるとお手上げだった。
思わず立ち眩みを起こしてサイドテーブルに手をついた老宰相の眼前に、スッと琥珀色の液体が入ったグラスが差し出される。
「落ち着いてください、お祖父様」
いつの間にか寝室にやってきた人物はそう言って、安心させるようにニッコリと微笑んだ。
「既に手は打ってあります、ご心配なさらぬよう」
「おお、そうか……というか、いつの間に……」
「まぁまぁ、そんなことはどうでも良いじゃないですか」
老宰相をお祖父様と呼んだその人物は、彼が飲み終えたグラスを受け取ると、ひらひらと手を振った。
「お祖父様は安んじてお休みください。あとは万事、私が何とか致します」
寝室に低く響いたその声は、全てを見透かしているかのような絶対的な自信に満ちていた。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します
冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」
結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。
私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。
そうして毎回同じように言われてきた。
逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。
だから今回は。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる