婚約破棄された侯爵令嬢ですが、これからは盗賊として立派に生きていきます!

かみき

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老宰相の寝室にて

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時は遡って、夜会当日。
本日も職務を滞りなく済ませ、老齢を理由に夜会には出席せず、病に臥せる王を見舞ってから、老宰相は帰路についた。
王宮から急報が入った時、彼は既にベッドに入り、半分ぐらい夢の世界へと旅立っていた。
「何事だ、騒々しい」
「申し訳ありません! ですが……!」
そこから始まる怒涛の非常事態報告。
ドゥム王子による突然の婚約破棄。勿論、老宰相にとっては寝耳に水である。
新たな婚約相手が王子の口から発表されたこと。これも老宰相にとっては以下略。
オツェアン侯爵に庶子が居るという噂は聞いたことがあったが、本当だったのか。
王子の婚約者をシャルロッテからチェルシーに変えたところで侯爵家に利があるわけではなし、大方ドゥム王子が王家の権威をちらつかせてあれこれと無理を通したのだろう、と彼はあたりをつけた。
それにしても侯爵も侯爵だ、ボンクラ王子の要求など毅然と撥ね退ければ良いものの!
自身の事なかれ主義を盛大に棚上げし、老宰相は心の中でオツェアン侯爵を非難した。
何にせよ、この事態は自分には荷が重い。
この老人は、日々変わり映えのせぬ業務をコツコツとこなすこと、少々のトラブルをそれなりにおさめることには長けていたが、それ以外のこととなるとお手上げだった。
思わず立ち眩みを起こしてサイドテーブルに手をついた老宰相の眼前に、スッと琥珀色の液体が入ったグラスが差し出される。
「落ち着いてください、お祖父様」
いつの間にか寝室にやってきた人物はそう言って、安心させるようにニッコリと微笑んだ。
「既に手は打ってあります、ご心配なさらぬよう」
「おお、そうか……というか、いつの間に……」
「まぁまぁ、そんなことはどうでも良いじゃないですか」
老宰相をお祖父様と呼んだその人物は、彼が飲み終えたグラスを受け取ると、ひらひらと手を振った。
「お祖父様は安んじてお休みください。あとは万事、私が何とか致します」
寝室に低く響いたその声は、全てを見透かしているかのような絶対的な自信に満ちていた。
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