婚約破棄された侯爵令嬢ですが、これからは盗賊として立派に生きていきます!

かみき

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峠までの幕間

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チェルシーがシャルロッテに向かって心の中で呼びかけていたその頃、偶然にも馬上のシャルロッテもチェルシーのことを考えていた。
婚約破棄されてから何だかんだあったがようやく一通り落ち着き、逃げる以外のことを考える余裕が出てきたからである。
シャルロッテにとってチェルシーは、それなりに憎からず思っている異母妹であった。
ただ、シャルロッテは感情が顔に出にくく、下の子の可愛がり方もわからなかったため、おそらくチェルシーに気持ちは伝わっていないだろうとは思っている。
だとしても、婚約者を奪ってやろうとなる程に恨まれているとは思えなかったが。
この件に関しては、負の感情よりも不思議だという気持ちの方がどうしても先に立つ。
侯爵令嬢として育ち、地位にふさわしい思慮と責任感を備えていたシャルロッテに、チェルシーの甘々な思考回路を読み取ることは不可能だった。
ただ、夜会でもきょろきょろと辺りを見回していたし、何が何だかよくわかっていないのではないかということだけは何となく察せられた。
(ということは、やはり二人は恋仲だったのでしょうか……?)
恋愛に疎いシャルロッテは首を傾げ、ふむ、と一応は納得することにした。
流石にチェルシーがドゥム王子に暴力を振るわれている状況までは彼女の想像の外だった。
恋人であり、今や侯爵令嬢の身分を得たチェルシーに危害を加えることはあるまい、と思っていたのである。
知らぬこととはいえ、それは大きな誤りだったのだが。
次いで彼女はこの国の地図を思い浮かべ、どこに向かうべきか考えを巡らせた。
鳥を使った連絡は、おそらく既に辺境貴族にも届いているだろう。
となると、彼らの領地に入れば見咎められる。
ならば、領地の境にある人通りの少ない峠あたりに潜伏するか、と彼女は結論を出した。
しかしあくまでシャルロッテが知っているのは地理上の知識のみ。
その地帯には盗賊がうようよと跋扈し、周辺の領主たる辺境貴族達も手を焼いていることまでは地図には載っていない。
加えて、人目を避けて宿屋等は避けてきたため、口頭での情報が入ってくる機会も無かった。
果たして峠の近くまで来た時、シャルロッテが乗った馬の前に、こちらも馬に乗った盗賊達が立ち塞がった。
先頃に遭遇したリューグナー達が貧相に見えるぐらい、全員が凶悪な出で立ちをしており、人数も多い。
「よう、にいちゃん、殺されたくなきゃ大人しく馬から下りな」
シャルロッテの服装を見て男だと思ったらしい盗賊は、剣を突きつけて命令する。
だが勿論、彼女は馬から下りる気などさらさら無かった。
代わりに静かに剣の柄に手を掛ける。
シャルロッテの昏い蒼色の瞳が、ギラリと物騒な光を帯びた。
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