婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

あげは

文字の大きさ
3 / 123
第一部

カイ *別視点あり

 目まぐるしく移り変わる周囲の景色。とても速いです。
 私たちは、白虎に乗って目的地に向かっています。
 あの後、結局白虎を連れていくことにしました。神獣がいなくなることで国は混乱するのではないかと考えました。
 しかし、正直なところ私にはあまり関係のないことだと思いました。
 国民には少し罪悪感を感じましたが、皆さんお強いので何とかなるだろうと。
 貴族たちに関してはざまぁみろと思いました。彼らの自業自得ですね。
 ……少しはしたなかったですね。
 貴族のおバカさんたちも神獣が私についてくるなんて想像できないですね。
 致し方ないことですので、受け入れていただきましょう。

 白虎には「カイ」と名付けました。
 特に意味はありません。呼びやすいし、ぴったりだと思っただけです。
 ただ、神獣や魔物に名づけをすると「契」で結ばれるということになるみたいです。
 契とは、簡単にいえば主従関係になるということです。いろいろと何か力が得られるとかなんとか。
 別にいらないんですけどね。私は戦ったりしたくないですし。それに一つだけ誰にもない能力がありますし。今はまだお教えしませんけど。
 あと、寿命が延びるそうです。どのくらいかはわかりませんが、相手は神獣なのでかなり長いのではないでしょうか。
 そんなに長くても困るのですが、まあこの際良しとしましょう。

 そういえば、まだ私たちの目的地を話していませんでしたね。
 私たちは「聖魔の森」という場所に向かっています。
 王国から遠い東の地にあり、そこは人が訪れることがない聖地だとか。森の中心には神聖な大樹が聳え立っているとか。いろいろな噂があります。
 あくまでも噂なのでわかりませんが、人が来ないというのは魅力的ですね。極力面倒な人付き合いは避けたいと思っていたのです。
 そこでなら私の夢も叶うはずです。
 今はまだ内緒です。森に無事たどり着いたらお教えします。

「お嬢様。そろそろ国境です。そこを越えたら一旦休憩しましょう」

「わかったわ。カイ、国境を越えたら一回止まってね」

『……我は疲れておらぬが』

「カイ?」

『……わかったよ。まったく。僕は神獣なんだぞ。神獣をこき使うなんて』

「あら。私についてくるのなら当然、それなりに働いていただきます。たとえそれが神獣だとしても、ね」

 これは私のポリシーでもあります。
 労働には正当な対価を。当然ですね。頑張った人にはちゃんと報酬を与えるのです。
 ミシェルにもいつも言っていることです。しっかりと仕事をしてくれているのなら、私への態度なんて気にしなくてもいいと。
 なので、屋敷で二人きりの時のミシェルはいつもだらけていました。
 公爵家のおバカさんたちはそれをしなかったために、屋敷の大半の従業員から疎まれていました。
 おバカさんたちの代わりに私が正当な報酬を与えていましたが。感謝もしていましたよ。屋敷のお掃除とかいろいろ大変だったと思いますしね。
 今頃、従業員がいなくなって困っているのではないでしょうか。

「ここら辺でいいかしら。カイ、止まって」

 国境を越えた少し先の茂みで止まり、少し休憩です。それにもうお昼になりますし。
 夜に王都を出てから、約半日といったところかしら。順調どころじゃないですね
 かなり早いです。カイのおかげですね。

「もう国を出ることができるとは。このまま森までもすぐにつきそうですね」

「それは分からないわ。正確な位置は記されていないのだから。探しながら行くのよ」

『それなら問題ない。聖魔の森であれば我が把握している』

 ……。
 ……どうやら短い旅になりそうですね。

「とりあえずお昼ご飯作ります。少しお待ちくださいね」

 ミシェルがご飯を作っている間、私は暇ですね。
 カイの毛繕いをして待っていましょう。



 ◇◇◇



 *side 王太子

「――神獣がいないだと?」

「はっ。朝、食事を運んだ侍女からそう報告がありました。未だ姿が見えないと」

「大方、どこかに出かけているのだろう。国を出ることはないはずだからしばらくすればもどってくる。気にしないでお前は仕事に戻れ」

「はっ」

 いつまでたっても戻ってこないことを王太子はまだ知らない……。




 ◇◇◇


 *side 公爵家


「――今までお世話になりました。失礼します」

 侍女が書斎を出ていく。
 さっきから同じ言葉を聞いている現公爵。

「おい、今ので何人目だ?」

「三十五人目です」

 アマリリス公爵家の従業員の数は多く、本邸別邸それに公爵領の屋敷も合わせると百人近くいる。

「多すぎないか? いきなりどうしたというのだ」

「おそらくユミエラお嬢様がいなくなったことが原因でしょう。今日だけでこれですから、一週間後にはほとんど去っていることでしょう」

「どういうことだ! あやつが何かしたというのか!?」

「いえ。皆、ユミエラお嬢様をお慕いしておりましたから。勘当されたとなればこれも自明の理。
 ――では、私もお暇をいただきます。お世話になりました」

「待てっ!」

 公爵が声をかけるが、執事は書斎を出て行ってしまった。

「―――クソッッッッ!!!」

 公爵の叫びが静かな屋敷にむなしく響いた……。





感想 3

あなたにおすすめの小説

普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜

神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。 聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。 イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。 いわゆる地味子だ。 彼女の能力も地味だった。 使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。 唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。 そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。 ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。 しかし、彼女は目立たない実力者だった。 素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。 司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。 難しい相談でも難なくこなす知識と教養。 全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。 彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。 彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。 地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。 全部で5万字。 カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。 HOTランキング女性向け1位。 日間ファンタジーランキング1位。 日間完結ランキング1位。 応援してくれた、みなさんのおかげです。 ありがとうございます。とても嬉しいです!

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く

腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」 ――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。 癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。 居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。 しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。 小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!