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第一部
ユミエラの能力
「それでは、改めて参りましょう。いざ、迷路へ!」
「お嬢様、テンション高いですね」
「当然よ。迷路なんて初めてだからとっても楽しみだわ」
私は今とてもワクワクしています。
今までは王妃教育とか淑女マナーとかお勉強とかお勉強とかお勉強とか……。
そんなことばかりしていたから、こういった娯楽に触れあったことなんてなかったのです。
しかーし。これからはもう自由ですわ。何をするにしても自分の意思次第。なんて素晴らしいのかしら。
さあ、行きますよ!
――二時間後。
「……なかなか難しいですね。全然進んでいる気がしませんわ」
「そりゃ、同じ道を行ったり来たりしているだけですからね。魔法で自然破壊しながら行けば楽なんですけど」
「そんなことをしてはダメよ。ここに住んでいる動物たちや精霊さんたちがかわいそうじゃない。それに聖樹が怒って私たちを入れてくれなくなるかもしれないわ。それが一番困るのよ」
「めちゃくちゃ必死ですね。大丈夫ですよ。そんなことはしませんから。そんなことより少し休みましょう。ご自分の足で歩き続けてお疲れでしょう」
「私のことなら大丈夫よ。まだまだいけるわ」
「ダメです。フラフラだし足の筋肉がパンパンにはれ上がってます。休憩にしますよ」
どうしてそんなことが見ただけでわかるのでしょうか、このメイドは。
それにしても過保護ね。いつもそうだわ。いつまでも私を子供扱いして。まったくミシェルったら。
しかし紅茶が美味しいので何も言うことはありませんわ。
『主、こんなところで何をするのだ?』
休憩中は私の背もたれとなっているカイが聞いてきた。
「決まっているじゃない。スローライフといえばやることは一つよ」
『ほう。それは一体?』
「――カフェを開くのよ!」
『……』
「カフェを開くのよ!」
『……』
「カフェを――」
『聞こえてるから! こんな何もないところでしかも人が全く来ない場所でカフェ? 頭おかしいんじゃないか?」
「あら、失礼ね。しっかりと何年もの時間をかけて計画したのよ。私とミシェルで」
そう。この計画はもう何年も前から計画していたものなのです。
ずっとあの家から出て何をするかを二人で考えていたのだから。問題はどうやって勘当されるかでしたが、あのおバカ王太子がやらかしてくれたので、それに乗らせていただきました。
ここまで予定通りに進むとは思いませんでしたが。いや、予想以上ですね。
『こんなところでカフェを開いて意味はあるのか?』
「もちろんです。ここに人が来ないと言ってもゼロではありません。ごくたまに冒険者の方が訪れるでしょう。人のお客なんてその程度で十分です。一番は私たちがゆっくりと優雅に過ごすことなんですから」
『それはカフェとして成り立っているのか……』
「それに人間以外にもお客になりそうなのはたくさんいますよ」
『どういうことだ』
答えようとしたところで近くの茂みがガサガサと音を立てた。
瞬時にミシェルとカイが警戒態勢に入る。何が出てくるのでしょうか。
「なんだ。ウサギじゃないですか」
「いや、お嬢様。フットラビットっていう魔物ですよ。よく見てください。足が異常に発達しているじゃないですか。この発達した足での蹴りが脅威です」
あなた、私の能力知っているくせにそんなに怯えなくても。
いや、怯えていないわね。むしろじっくりウサギを観察しているわ。確かに魔物を見たのは初めてだものね。
『我の食料が自らやってくるとは』
「あ、カイ。めっ、ですよ」
何食べようとしているんですか。この子は貴重な案内人ですよ。
私はウサギに近づいていきます。
『何をしているんだ』
「お嬢様なら大丈夫ですよ。見ててください」
白いふわふわの毛にクリっとした赤い眼、体に合っていないだろうとツッコミを入れたくなるような太い足。なかなか可愛いじゃないですか。
「こんにちは、ウサギさん。少しお話しませんか」
『何の用だ、人間。いや、なんで俺と話ができるんだ!?」
「私のちょっとした特技ですよ。それより私たち聖樹に向かっているのですが、ウサギさんは道をご存じかしら?」
『なんで人間にそんなことを教えなくてはならない』
「知っているんですね。教えてくれたらうちのメイドが美味しいご飯をごちそうしてくれますよ」
『ご、ごはん……。い、いや、そういって俺を騙して食べるつもりだな。そうはいかないぞ』
「そんなことはしません。でも、案内していただけないとしたら仕方ありません。他の方にお願いするとしましょう。……せっかくおいしいお肉があったのですがね」
『肉っ? ま、待て。し、仕方がないから俺が案内をしてやらなくもないが』
「えー? でも、人間の私は信用できないのでしょう。そんな無理をして案内を知れいただくわけには。他を当たりますよ」
『ま、待ってください! 案内したいです! させてくださいお願いします!』
ふっ。ちょろいですね。
所詮はウサギさんです。あとでお肉とニンジンをあげましょう。
『なぜ魔物と会話ができる』
「生まれつきそういう力があったみたいですよ。気にしたことなかったのですが、ミシェルが鑑定という魔法を使って見てくれたところ、私には『動物会話』というスキル? があったそうです」
そんなわけで幼いころから動物たちとお話ししていました。周りからは変な子だと思われていたみたいですが。
今となっては有効に利用させていただいていますわ。
とにかく、聖樹までの案内ウサギを獲得してということで、さあ、行きますよー!
「お嬢様、テンション高いですね」
「当然よ。迷路なんて初めてだからとっても楽しみだわ」
私は今とてもワクワクしています。
今までは王妃教育とか淑女マナーとかお勉強とかお勉強とかお勉強とか……。
そんなことばかりしていたから、こういった娯楽に触れあったことなんてなかったのです。
しかーし。これからはもう自由ですわ。何をするにしても自分の意思次第。なんて素晴らしいのかしら。
さあ、行きますよ!
――二時間後。
「……なかなか難しいですね。全然進んでいる気がしませんわ」
「そりゃ、同じ道を行ったり来たりしているだけですからね。魔法で自然破壊しながら行けば楽なんですけど」
「そんなことをしてはダメよ。ここに住んでいる動物たちや精霊さんたちがかわいそうじゃない。それに聖樹が怒って私たちを入れてくれなくなるかもしれないわ。それが一番困るのよ」
「めちゃくちゃ必死ですね。大丈夫ですよ。そんなことはしませんから。そんなことより少し休みましょう。ご自分の足で歩き続けてお疲れでしょう」
「私のことなら大丈夫よ。まだまだいけるわ」
「ダメです。フラフラだし足の筋肉がパンパンにはれ上がってます。休憩にしますよ」
どうしてそんなことが見ただけでわかるのでしょうか、このメイドは。
それにしても過保護ね。いつもそうだわ。いつまでも私を子供扱いして。まったくミシェルったら。
しかし紅茶が美味しいので何も言うことはありませんわ。
『主、こんなところで何をするのだ?』
休憩中は私の背もたれとなっているカイが聞いてきた。
「決まっているじゃない。スローライフといえばやることは一つよ」
『ほう。それは一体?』
「――カフェを開くのよ!」
『……』
「カフェを開くのよ!」
『……』
「カフェを――」
『聞こえてるから! こんな何もないところでしかも人が全く来ない場所でカフェ? 頭おかしいんじゃないか?」
「あら、失礼ね。しっかりと何年もの時間をかけて計画したのよ。私とミシェルで」
そう。この計画はもう何年も前から計画していたものなのです。
ずっとあの家から出て何をするかを二人で考えていたのだから。問題はどうやって勘当されるかでしたが、あのおバカ王太子がやらかしてくれたので、それに乗らせていただきました。
ここまで予定通りに進むとは思いませんでしたが。いや、予想以上ですね。
『こんなところでカフェを開いて意味はあるのか?』
「もちろんです。ここに人が来ないと言ってもゼロではありません。ごくたまに冒険者の方が訪れるでしょう。人のお客なんてその程度で十分です。一番は私たちがゆっくりと優雅に過ごすことなんですから」
『それはカフェとして成り立っているのか……』
「それに人間以外にもお客になりそうなのはたくさんいますよ」
『どういうことだ』
答えようとしたところで近くの茂みがガサガサと音を立てた。
瞬時にミシェルとカイが警戒態勢に入る。何が出てくるのでしょうか。
「なんだ。ウサギじゃないですか」
「いや、お嬢様。フットラビットっていう魔物ですよ。よく見てください。足が異常に発達しているじゃないですか。この発達した足での蹴りが脅威です」
あなた、私の能力知っているくせにそんなに怯えなくても。
いや、怯えていないわね。むしろじっくりウサギを観察しているわ。確かに魔物を見たのは初めてだものね。
『我の食料が自らやってくるとは』
「あ、カイ。めっ、ですよ」
何食べようとしているんですか。この子は貴重な案内人ですよ。
私はウサギに近づいていきます。
『何をしているんだ』
「お嬢様なら大丈夫ですよ。見ててください」
白いふわふわの毛にクリっとした赤い眼、体に合っていないだろうとツッコミを入れたくなるような太い足。なかなか可愛いじゃないですか。
「こんにちは、ウサギさん。少しお話しませんか」
『何の用だ、人間。いや、なんで俺と話ができるんだ!?」
「私のちょっとした特技ですよ。それより私たち聖樹に向かっているのですが、ウサギさんは道をご存じかしら?」
『なんで人間にそんなことを教えなくてはならない』
「知っているんですね。教えてくれたらうちのメイドが美味しいご飯をごちそうしてくれますよ」
『ご、ごはん……。い、いや、そういって俺を騙して食べるつもりだな。そうはいかないぞ』
「そんなことはしません。でも、案内していただけないとしたら仕方ありません。他の方にお願いするとしましょう。……せっかくおいしいお肉があったのですがね」
『肉っ? ま、待て。し、仕方がないから俺が案内をしてやらなくもないが』
「えー? でも、人間の私は信用できないのでしょう。そんな無理をして案内を知れいただくわけには。他を当たりますよ」
『ま、待ってください! 案内したいです! させてくださいお願いします!』
ふっ。ちょろいですね。
所詮はウサギさんです。あとでお肉とニンジンをあげましょう。
『なぜ魔物と会話ができる』
「生まれつきそういう力があったみたいですよ。気にしたことなかったのですが、ミシェルが鑑定という魔法を使って見てくれたところ、私には『動物会話』というスキル? があったそうです」
そんなわけで幼いころから動物たちとお話ししていました。周りからは変な子だと思われていたみたいですが。
今となっては有効に利用させていただいていますわ。
とにかく、聖樹までの案内ウサギを獲得してということで、さあ、行きますよー!
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