24 / 123
第一部
再会 *王太子視点
「ここが聖魔の森か……」
見上げるほどの巨大な樹々。
どこか荘厳さを感じさせる森は私たちの心に畏怖を植え付けた。
「こ、こんなところに住んでるって言うのかよ……」
「冗談だろ」
「メイドが入れるような場所じゃねえな」
「やはりこの感じ……濃厚な魔力に神聖な力が………………」
連れてきた部下や騎士、冒険者に魔導士たちの顔には怯え。
この様では何かあった時に期待はできそうもないな。
しかし、ここにいることは間違いないのだ。それなりに働いてもらわねば困る。
ここまで来るのにどれだけの費用と時間を浪費したと思っているんだ。
ガッフから聖魔の森まで来るのに一週間だ。私が王国を離れてからもう三か月は経つぞ。
そろそろ国に戻らねばなるまい。
「諸君。確かにこの森の異様さは身に染みて感じている。しかし、臆することはない。ここに来た目的は女二人の捕縛。それだけだ。それさえ済ませてしまえば終わりだ。報酬も用意している。皆の働きに期待する」
そこで一息入れて、私は珍しく気合を入れる。
これに失敗すれば私の地位だけでなく国も大変なことになる。
そのようなことはあってはならない。私は王太子なのだから。
ここに来たのは全部で百五十人。かなりの人数が集まったと思う。
大丈夫だ。問題はない。
私は自分に言い聞かせ、周囲の部下たちの顔を見渡す。
「よし、行くぞ!」
私の声で部隊は動いた。
――――はずだった。
「――その必要はありません」
凛とした声が響いた。
聞き覚えのある声。いや、忘れるはずのない声と言った方がいいだろう。
数か月ぶりに聞くその声には、今まで感じたことのなかった覇気を感じた。
「お久しぶりですね。アルフレッド様」
森の入り口から悠然と歩いてきたのは二人の女。
一人は最近も見た黒髪のメイド。そしてもう一人は――。
「ああ、久しいな。ユミエラ」
輝く金の髪にルビーのような赤い瞳。他者を魅了する整った容姿にすべてを見透かすような視線には恐怖すら覚える。
そう。私の元婚約者である、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢だ。
「このような場所までよくぞいらっしゃいました。歓迎はいたしませんけど」
「貴様自ら姿を現すとは思わなかったぞ。探す手間が省けてありがたいがな」
「ええ。わざわざ王太子自ら追ってこられたのですもの。私が蒔いた種……ではありませんが、私が追い返すのが責務というものでしょう」
「……しばらく会わない間に随分と口が回るようになったな。いや、前から口うるさいやつではあったが。そのように邪険に扱われることはなかったな」
今私が言葉を交わしているのは本当にユミエラなのだろうか。
以前とは全く違う雰囲気を纏っている。
その変化がまるで別人になったのではないかと錯覚させる。
「なんとなく察してはいますが聞いておきましょう。一体何用ですか? あなたが婚約破棄した女性をここまで執拗に追いかけるなど」
「確かに私は婚約破棄をした。だが追放したわけではない。それは公爵が勝手にやったことだ。たとえ貴様が薄汚い妾腹だろうとその能力は高く評価している。その力で我が王国に貢献させてやると言うのだ。感涙に咽び頭を垂れるべきではないか?」
ユミエラなどちょろい女だ。
私が評価していると言えば喜んで戻ってくるだろう。
しかし、何の反応も示さないのはどういうことなのか。
「……やはり始末するべきだったのでは?」
「……私もここまで酷いとは思ってなかったのよ。こんなにバカな人だったかしら?」
「お嬢様は自分のことで精一杯だっただけで、あの愚か者なんてこんなものですよ。とっとと始末して王国に送り返しましょう。それでゆっくりとティータイムにしませんか?」
「それは魅力的な提案だけど、ちゃんと話して帰ってもらいたいわ。できれば穏便に。……………………でも話通じるかしら? 会話が成り立つ気がしないわ」
メイドと二人でこそこそと何を話しているかと思えば。
内容はどうやら私をバカにしているらしい。
あまりのことに頬をピクピクしている。
こいつらどうしてくれようか……!
見上げるほどの巨大な樹々。
どこか荘厳さを感じさせる森は私たちの心に畏怖を植え付けた。
「こ、こんなところに住んでるって言うのかよ……」
「冗談だろ」
「メイドが入れるような場所じゃねえな」
「やはりこの感じ……濃厚な魔力に神聖な力が………………」
連れてきた部下や騎士、冒険者に魔導士たちの顔には怯え。
この様では何かあった時に期待はできそうもないな。
しかし、ここにいることは間違いないのだ。それなりに働いてもらわねば困る。
ここまで来るのにどれだけの費用と時間を浪費したと思っているんだ。
ガッフから聖魔の森まで来るのに一週間だ。私が王国を離れてからもう三か月は経つぞ。
そろそろ国に戻らねばなるまい。
「諸君。確かにこの森の異様さは身に染みて感じている。しかし、臆することはない。ここに来た目的は女二人の捕縛。それだけだ。それさえ済ませてしまえば終わりだ。報酬も用意している。皆の働きに期待する」
そこで一息入れて、私は珍しく気合を入れる。
これに失敗すれば私の地位だけでなく国も大変なことになる。
そのようなことはあってはならない。私は王太子なのだから。
ここに来たのは全部で百五十人。かなりの人数が集まったと思う。
大丈夫だ。問題はない。
私は自分に言い聞かせ、周囲の部下たちの顔を見渡す。
「よし、行くぞ!」
私の声で部隊は動いた。
――――はずだった。
「――その必要はありません」
凛とした声が響いた。
聞き覚えのある声。いや、忘れるはずのない声と言った方がいいだろう。
数か月ぶりに聞くその声には、今まで感じたことのなかった覇気を感じた。
「お久しぶりですね。アルフレッド様」
森の入り口から悠然と歩いてきたのは二人の女。
一人は最近も見た黒髪のメイド。そしてもう一人は――。
「ああ、久しいな。ユミエラ」
輝く金の髪にルビーのような赤い瞳。他者を魅了する整った容姿にすべてを見透かすような視線には恐怖すら覚える。
そう。私の元婚約者である、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢だ。
「このような場所までよくぞいらっしゃいました。歓迎はいたしませんけど」
「貴様自ら姿を現すとは思わなかったぞ。探す手間が省けてありがたいがな」
「ええ。わざわざ王太子自ら追ってこられたのですもの。私が蒔いた種……ではありませんが、私が追い返すのが責務というものでしょう」
「……しばらく会わない間に随分と口が回るようになったな。いや、前から口うるさいやつではあったが。そのように邪険に扱われることはなかったな」
今私が言葉を交わしているのは本当にユミエラなのだろうか。
以前とは全く違う雰囲気を纏っている。
その変化がまるで別人になったのではないかと錯覚させる。
「なんとなく察してはいますが聞いておきましょう。一体何用ですか? あなたが婚約破棄した女性をここまで執拗に追いかけるなど」
「確かに私は婚約破棄をした。だが追放したわけではない。それは公爵が勝手にやったことだ。たとえ貴様が薄汚い妾腹だろうとその能力は高く評価している。その力で我が王国に貢献させてやると言うのだ。感涙に咽び頭を垂れるべきではないか?」
ユミエラなどちょろい女だ。
私が評価していると言えば喜んで戻ってくるだろう。
しかし、何の反応も示さないのはどういうことなのか。
「……やはり始末するべきだったのでは?」
「……私もここまで酷いとは思ってなかったのよ。こんなにバカな人だったかしら?」
「お嬢様は自分のことで精一杯だっただけで、あの愚か者なんてこんなものですよ。とっとと始末して王国に送り返しましょう。それでゆっくりとティータイムにしませんか?」
「それは魅力的な提案だけど、ちゃんと話して帰ってもらいたいわ。できれば穏便に。……………………でも話通じるかしら? 会話が成り立つ気がしないわ」
メイドと二人でこそこそと何を話しているかと思えば。
内容はどうやら私をバカにしているらしい。
あまりのことに頬をピクピクしている。
こいつらどうしてくれようか……!
あなたにおすすめの小説
婚約破棄で追放されて、幸せな日々を過ごす。……え? 私が世界に一人しか居ない水の聖女? あ、今更泣きつかれても、知りませんけど?
向原 行人
ファンタジー
第三王子が趣味で行っている冒険のパーティに所属するマッパー兼食事係の私、アニエスは突然パーティを追放されてしまった。
というのも、新しい食事係の少女をスカウトしたそうで、水魔法しか使えない私とは違い、複数の魔法が使えるのだとか。
私も、好きでもない王子から勝手に婚約者呼ばわりされていたし、追放されたのはありがたいかも。
だけど私が唯一使える水魔法が、実は「飲むと数時間の間、能力を倍増する」効果が得られる神水だったらしく、その効果を失った王子のパーティは、一気に転落していく。
戻ってきて欲しいって言われても、既にモフモフ妖狐や、新しい仲間たちと幸せな日々を過ごしてますから。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた
アイイロモンペ
ファンタジー
2020.9.6.完結いたしました。
2020.9.28. 追補を入れました。
2021.4. 2. 追補を追加しました。
人が精霊と袂を分かった世界。
魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。
幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。
ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。
人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。
そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。
オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。
普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜
神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。
聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。
イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。
いわゆる地味子だ。
彼女の能力も地味だった。
使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。
唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。
そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。
ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。
しかし、彼女は目立たない実力者だった。
素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。
司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。
難しい相談でも難なくこなす知識と教養。
全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。
彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。
彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。
地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。
全部で5万字。
カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。
HOTランキング女性向け1位。
日間ファンタジーランキング1位。
日間完結ランキング1位。
応援してくれた、みなさんのおかげです。
ありがとうございます。とても嬉しいです!
婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。
拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。
失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
【完結】婚約者と仕事を失いましたが、すべて隣国でバージョンアップするようです。
鋼雅 暁
ファンタジー
聖女として働いていたアリサ。ある日突然、王子から婚約破棄を告げられる。
さらに、偽聖女と決めつけられる始末。
しかし、これ幸いと王都を出たアリサは辺境の地でのんびり暮らすことに。しかしアリサは自覚のない「魔力の塊」であったらしく、それに気付かずアリサを放り出した王国は傾き、アリサの魔力に気付いた隣国は皇太子を派遣し……捨てる国あれば拾う国あり!?
他サイトにも重複掲載中です。
【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!
加藤伊織
ファンタジー
(全151話予定)世界からは魔法が消えていっており、錬金術師も賢者の石や金を作ることは不可能になっている。そんな中で、生活に必要な細々とした物を作る生活錬金術は「小さな錬金術」と呼ばれていた。
カモミールは師であるロクサーヌから勧められて「小さな錬金術」の道を歩み、ロクサーヌと共に化粧品のブランドを立ち上げて成功していた。しかし、ロクサーヌの突然の死により、その息子で兄弟子であるガストンから住み込んで働いていた家を追い出される。
落ち込みはしたが幼馴染みのヴァージルや友人のタマラに励まされ、独立して工房を持つことにしたカモミールだったが、師と共に運営してきたブランドは名義がガストンに引き継がれており、全て一から出直しという状況に。
そんな中、格安で見つけた恐ろしく古い工房を買い取ることができ、カモミールはその工房で新たなスタートを切ることにした。
器具付き・格安・ただし狭くてボロい……そんな訳あり物件だったが、更におまけが付いていた。据えられた錬金釜が1000年の時を経て精霊となり、人の姿を取ってカモミールの前に現れたのだ。
失われた栄光の過去を懐かしみ、賢者の石やホムンクルスの作成に挑ませようとする錬金釜の精霊・テオ。それに対して全く興味が無い日常指向のカモミール。
過保護な幼馴染みも隣に引っ越してきて、予想外に騒がしい日常が彼女を待っていた。
これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。
彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。
毎日15:10に1話ずつ更新です。
この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。