婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

あげは

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第一部

再会 *王太子視点

「ここが聖魔の森か……」

 見上げるほどの巨大な樹々。
 どこか荘厳さを感じさせる森は私たちの心に畏怖を植え付けた。

「こ、こんなところに住んでるって言うのかよ……」
「冗談だろ」
「メイドが入れるような場所じゃねえな」
「やはりこの感じ……濃厚な魔力に神聖な力が………………」

 連れてきた部下や騎士、冒険者に魔導士たちの顔には怯え。
 この様では何かあった時に期待はできそうもないな。
 しかし、ここにいることは間違いないのだ。それなりに働いてもらわねば困る。
 ここまで来るのにどれだけの費用と時間を浪費したと思っているんだ。
 ガッフから聖魔の森まで来るのに一週間だ。私が王国を離れてからもう三か月は経つぞ。
 そろそろ国に戻らねばなるまい。

「諸君。確かにこの森の異様さは身に染みて感じている。しかし、臆することはない。ここに来た目的は女二人の捕縛。それだけだ。それさえ済ませてしまえば終わりだ。報酬も用意している。皆の働きに期待する」

 そこで一息入れて、私は珍しく気合を入れる。
 これに失敗すれば私の地位だけでなく国も大変なことになる。
 そのようなことはあってはならない。私は王太子なのだから。
 ここに来たのは全部で百五十人。かなりの人数が集まったと思う。
 大丈夫だ。問題はない。
 私は自分に言い聞かせ、周囲の部下たちの顔を見渡す。

「よし、行くぞ!」

 私の声で部隊は動いた。










 ――――はずだった。










「――その必要はありません」

 凛とした声が響いた。
 聞き覚えのある声。いや、忘れるはずのない声と言った方がいいだろう。
 数か月ぶりに聞くその声には、今まで感じたことのなかった覇気を感じた。

「お久しぶりですね。アルフレッド様」

 森の入り口から悠然と歩いてきたのは二人の女。
 一人は最近も見た黒髪のメイド。そしてもう一人は――。

「ああ、久しいな。ユミエラ」

 輝く金の髪にルビーのような赤い瞳。他者を魅了する整った容姿にすべてを見透かすような視線には恐怖すら覚える。
 そう。私の元婚約者である、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢だ。

「このような場所までよくぞいらっしゃいました。歓迎はいたしませんけど」

「貴様自ら姿を現すとは思わなかったぞ。探す手間が省けてありがたいがな」

「ええ。わざわざ王太子自ら追ってこられたのですもの。私が蒔いた種……ではありませんが、私が追い返すのが責務というものでしょう」

「……しばらく会わない間に随分と口が回るようになったな。いや、前から口うるさいやつではあったが。そのように邪険に扱われることはなかったな」

 今私が言葉を交わしているのは本当にユミエラなのだろうか。
 以前とは全く違う雰囲気を纏っている。
 その変化がまるで別人になったのではないかと錯覚させる。

「なんとなく察してはいますが聞いておきましょう。一体何用ですか? あなたが婚約破棄した女性をここまで執拗に追いかけるなど」

「確かに私は婚約破棄をした。だが追放したわけではない。それは公爵が勝手にやったことだ。たとえ貴様が薄汚い妾腹だろうとその能力は高く評価している。その力で我が王国に貢献させてやると言うのだ。感涙に咽び頭を垂れるべきではないか?」

 ユミエラなどちょろい女だ。
 私が評価していると言えば喜んで戻ってくるだろう。
 しかし、何の反応も示さないのはどういうことなのか。

「……やはり始末するべきだったのでは?」

「……私もここまで酷いとは思ってなかったのよ。こんなにバカな人だったかしら?」

「お嬢様は自分のことで精一杯だっただけで、あの愚か者なんてこんなものですよ。とっとと始末して王国に送り返しましょう。それでゆっくりとティータイムにしませんか?」

「それは魅力的な提案だけど、ちゃんと話して帰ってもらいたいわ。できれば穏便に。……………………でも話通じるかしら? 会話が成り立つ気がしないわ」

 メイドと二人でこそこそと何を話しているかと思えば。
 内容はどうやら私をバカにしているらしい。
 あまりのことに頬をピクピクしている。
 こいつらどうしてくれようか……!







感想 3

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