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昇格
しおりを挟む「おかえりなさい、アリス。怪我もなさそうでよかったわ」
探索者ギルドへと戻った私を、書類の山に囲まれたケイトが出迎えた。
いつもの数倍は忙しそうな様子。受付嬢ってそんなに大変なのかな。
忙しいケイトには申し訳ないとは思うが、とりあえず兎魔獣の角を出して依頼完了の報告をした。
「これ、討伐してきたから。確認してくれる?」
「忙しい私に、悪びれもせずそう言えるのはアリスくらいよ……。まあ、いいわ。少し待ってて」
そう言って、ケイトは袋に入った角と私の探索者の証であるタグを持って、受付の奥に向かっていく。
私のタグは真っ白。白は最低ランクの証だ。
何にも染まっていない、故に探索者としては未熟の証拠、と言われている白ランク。
探索者のランクは、登録してから初めに白のタグが渡される。
それから依頼を達成し、規定の実力を超えたと認識されると、徐々に色が変化していく。
白緑青赤紫黒銅銀金虹、という順に上がっていく。
虹ランクの探索者なんて、大陸でも数えるほどしかいない。ランクの査定が特に厳しいからだ。
それこそ、御伽噺の英雄クラスの偉業を立てなければならないほどに。
今いる金ランクの中で、エドワードが一番虹ランクに近いと言われているのは、彼が単独で未だ攻略されていないダンジョンを、単独で踏破しようとしているからだ。
無謀だと思われている反面、実力は折り紙付きで多くの探索者から期待もされている。
彼なら偉業を成し遂げるだろうと、探索者たちは夢見るのだ。
「おまたせ。はい、これ。今日からアリスも緑ランクに昇格ね。ようやく一歩前進、てところかしら」
「ありがとう」
ケイトから渡された緑タグを首にかける。
彼女の言う通り、ようやく前に進むことができたと実感する。
むしろ、これまでが不遇過ぎたんだ。もう、下は見ない。
私は自分が決めた道を進むのみ!
「ランクが上がったからと言って、無茶はしないこと! 分かってる?」
「わかってるって。自分の命最優先、でしょ?」
命あっての物種だ。無茶をして死ぬなんて馬鹿なマネはしない。
それに、私はひとりじゃないしね。
私は頭の上にいるモフモフの使い魔を見上げた。
「うんうん。そういうことさ。それじゃ、お祝いと行こうじゃないか。ふわっふわのパンケーキと美味しい紅茶で贅沢にね」
「私は、レアチーズケーキがいいわ」
「むむっ。中々いいセンスをしているね、アリス。それも悪くない。だが、至高なのはパンケーキさ。シンプル故に最強。君にも、それをわかってほしいね」
「はいはい。甘い物なら何でもいいでしょ。――私たちは行くから。ケイトは仕事、頑張ってね」
私はケイトに小さく手を振り、その場を後にした。
向かう先は、辺境でこっそり人気の穴場カフェ。紅茶もケーキも店長がこだわり抜いた一級品。
知る人ぞ知るその店に私たちは行く。
そのカフェで、まさか予期せぬ出会いをするだなんて、思ってもみなかった――――。
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