物理最強信者の落第魔法少女

あげは

文字の大きさ
35 / 73

エルダーリッチ

しおりを挟む

「――アリス!!」

「!? い、今のは……」

 ミルフィに頬を思い切り叩かれたことで、朦朧としていた意識がはっきりする。
 私が見ていたのは……幻覚?
 非常にリアルな死の感覚が未だ体の中に残っている。心臓の鼓動が落ち着かない。
 どうにか呼吸を整えようにも、あらゆる死の恐怖が邪魔をしているようだ。

「とてつもない魔力量だね。威圧しただけで死を幻視させるとは……正直見くびっていたよ」

「威圧……? あれが、ただの威圧だというの?」

「魔力による威圧だから、対処のしようはあるし、魔力量に差が無ければ特に意味もないんだ。しかし、あれは魔力に関しては桁違いだね。他の”侵略者”と同じだと思ってはいけないよ」

 私たちの目の前で浮いている黒いローブを纏う骸骨。
 ところどころに大きな宝石が散りばめられた杖を持ち、首から真っ赤な石のついたネックレスを下げている。
 明らかに他の”侵略者”とは違う。私の経験の中で、こんな”侵略者”と相対したことなんてない。
 初めて見るそれに、私は恐怖を感じ体の震えが止まらない。

「……そ、そう言えば、マリーさんたちは?」

「彼女らは無事だよ。あらかじめ対策していたみたいだ。二人は強力な結界を張って隅っこで大人しくしているよ。ボクたちがあいつを倒すのを信じてね」

「あれを、倒す……?」

 無理、不可能、出来ない。そんな言葉が私の思考を塗りつぶす。
 あれに勝てる未来なんて見えない。今立っているだけでも、死の気配を感じている。
 私じゃ、あんなのに勝てるわけないじゃない……!

「大丈夫。アリスならできるよ」

「無理に決まってるじゃない!」

「自分の力を信じて」

「だから、無理だって! 私一人でどうやって勝てるって言うのよ!?」

「――一人じゃない。ボクがいる」

「……え」

 ミルフィの力強い声に、私は顔を上げる。
 今の私は酷い顔をしているだろう。恐怖に怯え、泣き喚き、自暴自棄寸前。
 笑い者にされた方がまだマシだ。
 なのに、ミルフィはいつも通りの笑みを浮かべている。
 こんな私を見ても、ミルフィは変わらずにいた。
 何がミルフィをそうさせるのだろう。私にそんな価値はないのに。
 どうして、そこまで私を信じていられるのだろう。

「――ボクは君の使い魔で、君はボクのご主人様だよ。ボクのご主人様は最強なんだ。それが、世界の理だよ? 大丈夫。アリス、君が自分を信じられないというのなら、君を信じているボクを信じておくれ。ボクは絶対に、君を裏切らないから」

 その言葉が、その笑顔が、いつも私の背中を押してくれる。
 どんなに強くなっても、私の心は弱いままだった。
 強くなった気がした。変わったつもりだった。変わった気でいた。その実……何も変わってなかった。私はあの頃のまま、弱い私だ。 
 私は、自分の弱さを知った。だから――。

「……そうね。ミルフィなら、信じられるわ。だから、ずっと一緒よ。これからも。私が強くなるまで」

「君が誰にも負けないくらい強くなっても、ボクは君と共にいるよ」

 二人で笑い合い、誓いを立てる。
 ミルフィは私の頭の上にちょこんと座ると、真っ直ぐ上を見上げた。

「律儀に待っていてくれるとはね。どういう風の吹き回しだい?」

『コレハ余興デアル。早々ニ殺シテハ興醒メダ。故ニ、我ガ領域ヲ侵ス不遜ナ人間共ヨ、死ノ運命ニ抗ッテミセヨ。全身全霊ヲ懸ケ、我ヲ楽シマセヨ。我ハ、エルダーリッチ。死ヲ司ル神ノ僕。貴様ラニ、死ヲ与ウ者ナリ』





しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

一国一城の主を目指す!〜渇望の日々を超えて。

リョウ
ファンタジー
 何者かになりたかった。  だが現世でその願いは叶わず、男は敗北感と悲嘆を胸に沈んでいた。  そんな彼の前に現れたのは、一柱の女神。  導かれるまま異世界へ転移した男は、新たにレイと名乗り、剣も魔法も身分もない底辺から成り上がることを決意する。  冒険者として生きる術を学び、魔法を覚え、剣を磨き、人と裏社会を見極めながら、レイは少しずつ力を蓄えていく。  目指すのは、ただ生き延びることではない。  一国一城の主となり、この世界で“何者か”になること。  渇望を燃料に、知恵と執念で上へ上へと這い上がる、ファンタジー成り上がり譚。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる―― ※他サイトでも掲載しています ※ちょいちょい手直ししていってます 2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

【完結】悪役令嬢ではありません。肩書きはただの村人ですが、いつの日か名だたる冒険者になっていた。

小田
ファンタジー
  ポッチ村に住む少女ルリは特別な力があったのだが、六歳を迎えたとき母親が娘の力を封印する。村長はルリの母の遺言どおり、娘を大切に育てた。十四歳を迎えたルリはいつものように山に薬草を採りに行くと、倒れていた騎士を発見したので、家に運んで介抱すると。騎士ではなく実は三代公爵家の長男であった。そこから彼女の人生は大きく動き出す。  特別な力を持つ村人の少女ルリが学園に行ったり、冒険をして仲間と共に成長していく物語です。  なろう、エブリスタ、カクヨム掲載しています。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

処理中です...