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最下層
しおりを挟む門を開いた瞬間、不気味な魔力に心臓を鷲掴みにされたような感覚を覚えた。
あまりの気持ち悪さに吐き気がする。
マリーさんたちも、顔色が悪くなり口元に手を当てていた。
「これは……想像以上だね。アリス、転身しておいておくれ。いつ戦闘になるか分からないからね」
ミルフィに言われた通り、私は転身した。
黒いドレスに身を包まれると、少し気持ち悪さが和らいだような気がした。
まるで衣装に守られているみたいな。
「魔法少女の衣装は高性能だからね。あらゆる悪を弾く力を持っているんだ。まあ、さすがに全性能を引き出せていない状態では、心許ないかもしれないけど」
「それでも、さっきよりはマシよ。これなら辛うじてまだ戦えるわ」
と、見栄を張ったものの、こんな魔力を放つ敵と戦闘なんてしたくないのが本音だ。
階層に侵入しただけでここまで不快さを感じるのに、対峙したらどうなるのか。想像もつかない。
「……い、行きましょう、アリスさん。私たちは……立ち止まるわけには参りません」
「でも、マリーさん……」
立っているのも辛そうなマリーさんたちを連れて行っていいのだろうか。
アリーさんの目は、マリーさんが行くのならどこまでもついていく、と言っているように感じた。
しかし、こんな状態の二人が戦えるはずが……。
「正直、今の君たちを連れて行きたくはないんだ。まあ、そうは言っても、王女様は聴かないよね?」
「もちろんです。元はと言えば、私の我儘に付き合わせてしまっているのですから、私が行かないという選択肢はそもそも存在しません。己が目的を他人任せにするなど、王女として恥ずべきことです。何を言われようが私は行きます」
マリーさんの瞳は強く訴えていた。自分は最後まで行くのだと。
それは王女としての矜持か。それとも、姉を助けたいという想いからか。
私にはわからないが、マリーさんからは決死の覚悟を感じ取った。
「それに言っていませんでしたが、私、守るのは得意なのです。お任せください。自分の身とアリーは私が全力で守ります。ですので、私たちのことは気にせず、アリスさんはご自身のお力を存分に」
「……わかりました」
マリーさんの覚悟を受け取ったところで、私たちは最後の階段をゆっくりと下りてった。
そして、最後の階層に足を踏み入れた瞬間。
『ワガ領域ニ足ヲ踏ミ入レル者ガ、再ビ現レルトハ。愉快愉快。ダガ――死ネ』
――私はあらゆる死を幻視した。
首を刎ねられた。心臓を一突き。毒、呪い、魔法……あらゆる全てが容赦なく私を殺す。
幾千もの死を一瞬にして体感した私に、成す術はなかった……。
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