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隠し通路は海の中
しおりを挟むプカプカと水面に浮かびながら、上を見上げる。
思ったより高さはなくしかも水がクッション代わりになってくれたから、無事だ。
泳げない私にとっては身動き取れず困っている次第ですが。
そうです。落ちました。
はい、そこ! またかよとか言わない考えない。
そんなの私だって思ってるんだから!
考えられる限り、ここが隠し通路で間違いはないのだろう。正直、通路って感じはしないけど。
ダンジョンの隠し通路は、いちいち床が抜けないと見つからないようになっていないとダメなのだろうか。
そんな疑問が私の脳裏を埋め尽くす。
「おーい。大丈夫かい?」
「遅いじゃない。早く浮き輪を渡してちょうだい。このままじゃ何もできないわ」
「うんうん。無事で何よりだね。とりあえず無様に落下したのは見なかったことにしてあげるよ」
「無様とか言わないでよ。知ってる? 人って飛べないのよ? あんたはどういう原理か知らないけどずっと浮いてるみたいで羨ましいわね」
「まあ、使い魔だからね。魔法少女の使い魔は浮遊するのが常識さ」
そんな常識は知らない。というか、ミルフィと出会うまで魔法少女なんてのは知らなかったのだから、常識以前の問題ではないだろうか。
「それに、人は飛べないかもしれないけど、魔法少女は飛べるはずだよ。魔法少女に最も必要なのは想像力だからね。魔法少女の力を最大限発揮するのは、いつだって自由な想像力や妄想って相場が決まっているのさ」
だから知らないって。変な常識を勝手に押し付けないでください。
そんなことは今はいいから、早く浮き輪を渡しなさいよ。だんだん沈み始めてるから。
「アリス、残念なお知らせだよ」
「な、何よ……?」
「この先に繋がる道はどうやら水中みたいだ」
「……つまり?」
「泳がないと先へは進めないというわけだ。諦めて拙い泳ぎで先を目指そう。心配しなくてもいい。ちゃんと呼吸は確保するからね」
あまりのショックに、ガーンと自分で言ってしまった。
やっぱり来るべきじゃなかった。そもそも泳げない人間が「海底洞窟」の探索をすること自体おかしいと思う。
先生、もしかして私が泳げないことを知らない? いや、先生の事だから知っててわざとだろう。
嫌がらせだったら最上級に悪いのだが、先生にそんな気は微塵もない。
善意百パーセント、全て稽古の一環だと思っているはず。
「……仕方ない。こんなところでうだうだしていても帰れないものね。行くわよ、ミルフィ」
「そうこなくっちゃ」
ミルフィが尻尾を振ると、私の体を薄い光の膜が覆った。
「これで水中でも呼吸ができるよ。アリスの事だから、その状態でも息を止めそうな気がするけど」
「そんなことしないわよ! 余計な事言ってないで、早く行くよ」
「ああ、それと」
「?」
「通路の近くには鮫がうようよいるから、気を付けた方がいいよ」
何だって? 鮫? あの凶暴な?
そんなのがいる海で、私はずっと漂っていたのね。本当、無事でよかった……。
もっと早く伝えてほしかったとミルフィに文句を言い、私は海に潜った。
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