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大漁
しおりを挟む「……大漁ね」
「そうだね。魚屋さんでもこんな光景は見られないよ」
不自然に”侵略者”が集まっている小部屋を入り口から覗いていた。
宿の一室ほどの大きさに、百近くの魚類系の”侵略者”が詰まっているのを見て、そんな感想が出る。
それにしても、二足歩行する魚の群れとか正直怖いんだけど、そんなことを言っている場合ではない。
奴らはこんな場所に集まって何をして……いや、見る限り特に何かしているわけではないわね。
ただぎゅうぎゅうに詰め込まれてぬるぬると体がぶつかり合っているくらい。ほんと、何してるんだろう……。
「これだけいると、もう食材にしか見えないね。早いところ倒してしまおうか」
「この中に入るのはちょっと……。ミルフィの魔法で何とかできない?」
「本来なら、こういう時はボクがちょちょいっとやってしまってもいいんだけどね、今回は手を貸すなって言われてるんだ。だから、アリスにかかっているよ」
ツバキ先生、そんなことも言っていたのね。
というか、どうして主の私より先生の言うことを聞くのかしら。使い魔のくせに自由過ぎない?
「仕方ないかぁ……」
私は渋々魔力を雷に変換し、槍に纏わせる。
「器用だね。魔力を魔法としてではなく、そのまま変換し現象を引き起こすなんて。かなり高度な技術じゃないか」
「思い出したのよ。小さい頃から大した魔法を使えない私のために先生が考案してくれたの。まあ、魔法使いとしては邪道らしいけどね。それと、先生に言われたわ。『身体強化魔法にばかり頼るのはダメ。レパートリーって大事なの。何事もね』って」
「ボクとしては、魔法使いみたいな戦い方は好きじゃないけど、そういう使い方ならアリだね。なんとなくアリスがしそうなことも想像つくし」
「そう。じゃあ、とっとと終わらせるわ。――えいっ!」
そんな掛け声と共に、私は雷を纏った槍を部屋の中へ投擲した。
槍は、丁度中心にいた鯖に当たり突き刺さる。そして追加攻撃として、後から雷が周囲に伝播する。
ぬるぬるして体表に水分を含んだ魚たちには効果覿面。内部にいた魚たち全てが感電死した。
少し込めた魔力が多すぎたのか、四方の壁が黒く焦げ付いてしまった。
「もしかして、やり過ぎた……?」
「いいや。やり過ぎるくらいが丁度いいのさ。誰かがそんなことを言っていたしね」
「……誰が言うのよそんなこと」
ミルフィの言葉に呆れながら、私は部屋に散らばっているドロップ食材を拾う。
大漁大漁。今日の夕飯どころか、しばらく海鮮系のご飯に困らないわね
食材を集めていると、魚ごとによって切り身で落ちてるのか、一尾丸々ドロップするのか違うことに気づく。
なんて便利な。どれも脂が乗っていて美味しそう。ダンジョンでは旬とか関係ないのかな?
そんなことを考えつつ魚を拾い終え、床に落ちた槍を拾いに行くと
――カチッ。
「……え?」
足元でそんな音がした。
ミルフィに視線を向けると、やれやれといった様子で肩を竦めている。
ムッとして、私がミルフィに文句を言おうとした瞬間――床が消失した。
「――へ?」
咄嗟のこと過ぎて、周囲を確認する余裕すらあった。
掴むところはない。空は飛べない。ロープをかける突起もない。
私は何の抵抗もなく、落下した。
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