物理最強信者の落第魔法少女

あげは

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一年経って

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 ツバキ先生の特訓を終えるのに一年かかってしまった。
 辛く長い一年だった……。
 思い出すだけでも泣けてくる。何度逃げ出そうとしたことかっ。
 ツバキ先生による魔法訓練、ミルフィによる戦闘訓練、その合間に詰め込まれたダンジョン探索。
 先生の転移魔法で世界各地どこにでも足を運ぶことができる。
 知らない国の全く情報もないダンジョンに放り込まれ、人知れずダンジョンを攻略していく日々。
 無茶苦茶だ……ミルフィだけでもとても大変だったのに、そこに先生が加わるだなんて。
 私、良く一年も耐えたと思う。そんな私を褒め称えたいくらい。

「いや、一年もかかってしまったのはアリスが度々逃げ出そうとするからじゃないか。アリスが真面目に特訓を受け入れてくれれば、もっと早く終わったはずだよ」

「一日中ぶっ倒れるまで毎日特訓してたら、一週間で死ぬわよ。もっと良心的なスケジュールだったら私だって素直にやってたし……」

「ツバキはあまり時間をかけたくはなかったんだよ。その想いは汲み取ってあげてくれたまえ。アリスが死ぬ死ぬ言うから、少しは優しくしてあげたしね」

「あれで、優しく……? やめて、私の中の優しさの基準が崩れるから! 常識的な優しさを学んでから発言して!」

 あんな特訓に優しさなんて一かけらも感じられなかった。並みの人間であれば、即死レベルの所業よ。
 ――私? 頑丈さには自信があるわ! 

 ……こんなことで誇りたくはなかったけど。

「それにしても……ここ、本当に辺境の街? 私来るとこ間違えてない?」

「間違えていないよ。ここ一年で随分と大きくなったらしい。住居者も増えたし、街付近のダンジョンもかなり多くなったみたいで、国内屈指のダンジョン都市なんて呼ばれてるそうだよ」

 特訓している間、外部の情報は一切耳に入ってこなかった。
 というよりも、先生が意図的に遮断していたみたいだけど。そのせいで、私はここ一年の出来事を一切知らない。
 住民の増加? ダンジョンの増加? 国内屈指のダンジョン都市? 何それ初耳。
 探索者ってそういう情報収集も仕事の内だと思うのだけど、私はいいのかしら。

「じゃあ、この門に並ぶ行列はそのせいってこと?」

「そうだね。探索者半分、移住希望者二割、商人二割、それ以外が一割ってとこかな」

 ミルフィの言う通り、探索者の数が異様に多い。
 ダンジョン都市と言うだけあって、ここを拠点に活動する探索者が増えたってことかな。
 外から見える街の雰囲気もなんだか騒がしさが増しているように思える。
 前のような落ち着いた様子はどこかへ消え去ってしまったらしい。
 悪くはないけど、前の感じは結構好きだったなんだけどなぁ。なんてことをぼんやりを考える。
 そのまま、ミルフィにいろいろと聞いていると、私のローブの裾がくいっと引っ張られた。
 後ろを振り返ると、小さな子供たちが五人ほど興味津々な様子でミルフィと私を見上げている。
 私はしゃがみ、子供たちと視線を合わせた。

「どうしたの?」

「おねえちゃん、そのリスさんとお話しできるの?」

「できるよ。というか、この子は元々お話しできるリスだからね」

「君も少女も間違えないでくれるかな。ボクは世界でも一番愛らしいカーバンクルさ。リスではないから気を付けてくれたまえ」

 ミルフィが自慢げにそう言うと、子供たちはわぁっと騒ぎ立てる。
 こんなナリで話すのは珍しいだろう。もっとおしゃべりしたいと口々に言う。それに私の冒険の話も聞きたいという子もいた。
 まあ、まだ検問までは時間があるし、丁度いいかな。
 私の頭の上でのんびりしているミルフィを胸に抱き、子供たちに付き合うことにした。

「それじゃ、ミルフィとの出会いからお話ししてあげるね。ちょうど一年前くらいの事なんだけど――」




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