追放歌姫の異世界漫遊譚

あげは

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一章 旅立ち

プロローグ

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「――リリナ。お前、クビな」

「……ハイ?」

 Aランクパーティー『銀の戦剣』のリーダー、カインに酒場へ呼び出されたと思ったら、いきなりのクビ宣告。びっくりして反応が遅れてしまった。
 冒険者になって二年、私も大分落ち着きを持てるようになったと思うが、まだまだらしい。とりあえず、理由を聞いてみようと思う。

「……どうしてか聞いていいかしら」

「……理由か。そんなもの聞かなくてもわかるだろう。戦闘中いつも後ろで歌ってるだけの役立たずのくせに。『歌姫』とかいうユニークジョブだからパーティーに加入してやったが、とんだ詐欺師だったな。使えない奴に必死で戦っている俺たちと同じ報酬を与えるなんておかしな話だろ?
 それに、俺たちはこれからSランクを目指すんだ。そんなパーティーにお前みたいな地味な奴がいたら華やかさに欠ける。だから、『銀の戦剣』にお前はいらない!」

 まさかそんな風に思っていたとは……。
 確かに戦うのは苦手だけど、私なりにパーティーに貢献していたと思う。
 私の『歌姫』万能の職業だ。歌うことで仲間の回復や支援をメインに、魔導士が使う魔法のようなこともできる。
 私自身に戦う力はないから、仲間の支援をしていたのだが、どうやらわかってもらえなかったみたいだ。
 あと、私だって好きで地味な格好してるわけじゃないんだけど!って言ってやりたい!
 どうせ聞き入れてもらえないだろうけど……。なんか悲しくなってきた……。

「……なるほど。それはあなたたちの総意なのね?」

 私は周りにいた他のパーティーメンバーに声をかける。

「ああ。異論はない」

「まあ、居ても居なくても変わらないからいいんじゃないかしら。さんせーい」

「あたしは他の方々に合わせるっすよ。……少し寂しいっすけど」

 重戦士のランドル、アークウィザードのアルマ、シーフのカーナがそれぞれ答える。――ちなみにカインは魔剣士。
 他はいいとしても、カーナまで賛成するとは思わなかった。カーナとは結構仲良かったと思ったんだけどなぁ……。
 と悲嘆に暮れているとこで、よく見ると知らない女の子が同じテーブルに座っていることに気づいた。歳は同じくらいだろうか。

「……ところで彼女は?」

 尋ねるとカインが自慢げに答える

「彼女は新しい仲間のマリン。ハイプリーストで次期聖女候補だ。お前の歌より彼女の聖魔法のほうが役に立つと思い勧誘した。
 つまりお前の居場所はもうないということだ!わかったらとっとと失せろ!」

「そういうことなんでぇ~、心配しなくていいですよぉ。リリナさんの代わりはマリンにお任せくださいぃ~」

 ……なんか無性にイラっとする女だなこの野郎。
 甘ったるい声を出してカインに抱きつく、次期聖女候補とかいう女。名前なんて覚える気はない。こんなのが聖女候補とか……大丈夫か教会。ちゃんと人選しているのか心配になるわ。
 私、なんでこんなパーティーに二年も所属していたのだろうか。そう考えると未練とか心残りとかなくなっていた。
 はぁ。早く帰ろう……。

「わかった。そういうことなら私から言うことはないわ。
 潔くパーティーを追放されましょう。
 
 さようなら!

 ――カーナ。元気でね……」

 仲の良かったカーナにだけ声をかけて、早々に酒場から立ち去る。後ろからカインが何か言っているが、私の耳には届いていないので無視をする。
 そんなことよりもこれからのことを考えなければならない。

「…………。
 ……これからどうしようかしら」

 思わず声が漏れる。
 とりあえず寝る場所を確保しなければ!
 さっきの酒場には戻れない。そのため今日の宿がなくなってしまったのだ。

「――食堂のおばちゃんに事情を説明して、一晩泊めてもらおう……」

 冒険者活動で仲良くなったおばちゃんのところへ向かう。
 こういう時人脈って大事だなぁ。改めてそう思った私は、重い足取りで食堂を目指す。

こうして『歌姫』の私は、Aランクパーティーをクビになった。
……はぁ。……今日はもう寝よう……。
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