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二章 水の都
水の都
しおりを挟む街に入るのにいつも通りひと悶着あったが何とか時間をかけることなく済ませることができた。
相変わらず門番は同じこと言う。その狼はなんだとか害はないのかとか。もう少しレパートリーというものを増やしてほしいと思う。
さて、過ぎたことは忘れて、周りを見渡す。
上から見たときも思ったが、こうして中から見てもきれいな街だ。
活気もあるし、王都と違って住居が密集していないように感じるためか解放感も感じる。
それにいろんな種族がいて普通に道を歩いている。エルフやドワーフだけでなく獣人までいるわ。
そして幸せそうに笑っている。それだけでここがいい街だということがわかるわ。
「とにかく街に入れたことっすから、まずは宿探すっすよ。三日もあれば借家は見つかる筈っす」
「そうね。そのあと街を見て回りましょう。まだ時間はたくさんあるわ」
ということで私たちは宿を探すことにした。闇雲に探しても見つからないので、近くの露店のおじさんに尋ねてみたところ、希望に近いものは街の中心にあるそうだ。
従魔も泊まれる宿がここにもあって助かったわ。ギルドも近いみたいだし。
街の中心に行くには徒歩では時間がかかる上街の中は慣れていないと迷路のように迷う可能性もあるそうだ。
なので水路船という定期便を使うといいらしい。それなら街の雰囲気を楽しみながら、目的地まですぐに行けるとおじさんが教えてくれた。
「いやぁ、街の移動に船使うとか贅沢っすねぇ。さすが水の都っす」
「この街の住民以外は基本船で移動した方がいいみたいね。変に道に迷うと戻れなくなるって」
「水路に合わせて街を作ってるから、複雑になっちゃったそうっすね。それに何十年とかけて街の開発もしてるみたいっす。だから余計に複雑になってるって本で読んだっす」
「そんなことも書いてあるのね。私が探した本にはそんなの書いてなかったけど」
「自分のはちょっとした伝手で教えてもらった本っすから。あと、中心は観光用に単純な構造にしているって。そこらへんなら歩いても迷うことはなさそうっすね。まあ、ろぜっちが勝手に歩き回らなきゃいい話っすけど」
「どうしてあたしが迷子の前提で話をするのかしら。あたしは迷子になんてならないわ。なんせ、最終的には転移で元の場所に戻れるから!」
「うわっ。それは卑怯っすよ。そういうときは大人しく迷子になってるのが可愛い女の子ってもんすよ」
「そんなわけないでしょ。あたしくらい可愛いと華麗に元の場所まで戻ってくるから可愛いのよ」
いや、それはよくわからないけど。可愛いが渋滞してロゼちゃんの言っていることが理解できない。
「リリィも迷子になりそうっすから気を付けてほしいっすね」
「私は平気よ。ブラウとルナが傍にいるから何とかなるわ」
「幻獣と聖獣のコンビってやっぱりずるいっすよ。チートっすよ」
ちーとが何かは分からないけど、たわいもない話をしていたら中心街に着いたみたい。
ここは門の付近よりも倍以上人がいる。というか混雑している。
そして時折見かける柄の悪い男たち。
あれが受付のお姉さんが言っていた人たちかな。確かに冒険者とは違う柄の悪さ。そういう雰囲気を醸し出している。
「聞いた通りっすね。あれと関わると面倒なんで、できる限り接触しないようにするっすよ。二人とも気を付けてくださいっすね。とくにろぜっち。絡まれたりしても変に煽っちゃダメっすよ」
「ふふん。任せなさい! 木っ端みじんにしてあげるわ!」
「……それがだめなんだけどね」
ロゼちゃんをひとりにしておくのは危ないかもしれない。
カーナと顔を合わせ頷く。カーナも同じことを考えたみたいだ。
できるだけロゼちゃんをひとりにしないようにあとで話し合うことになった。
それと宿も取ることができた。相変わらず高いが数日だから我慢する。これだけ人が多いとセキュリティもしっかりしてるところがいいからね。そんなわけで貴族も利用するような宿を取った。
部屋に入った私たちはこの後の予定を確認する。
「自分は何かおいしそうな物探してくるっす」
「ならあたしも行くわ。ちょうどお腹が空いていたの」
「それじゃ私はギルドに行くわ。街の情報とかいろいろと集めてくる」
「夕飯前に大噴水の前に集合ということで。何かあったら連絡するっすよ」
「わかったわ」
カーナとロゼちゃんは早々に部屋を飛び出していった。
行動が早いというか、もう待ちきれないというような感じだった。
私は少しゆっくりしてから行こう。ブラウも休ませてあげたいし。
「ここまで運んでくれてありがとう。お疲れ様。少し休憩したら私たちも行きましょう」
「わん!」
ベットに腰掛けた私の膝に、ブラウが大きな頭を乗せ横になる。
だいぶ大きくなったので私の膝に収まらない。しかし甘えてくる子を払いのけるなんてことはしないわ。
無防備なお腹をわしゃわしゃと撫でまわす。気持ちよさそうに目を細めるブラウ。肩には尻尾をゆらゆらと揺らしているルナちゃん。
モフモフに囲まれ穏やかな休息を取って、三十分ほどしたら、私たちはギルドに向かった。
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