54 / 72
二章 水の都
解決
しおりを挟む
とりあえずカーナの身体強化程度でいいわね。
というか、正直なところ私のバフなしでもいい気がするけど。やるなら徹底的に、よね。
「なんだぁ……」
「……歌?」
やじ馬たちがざわざわしている。唐突に聞こえてきた場違いなものに困惑している。
窮鼠会とか言う男たちも周囲を見渡している。
「あの子か。一体なにを……」
「ほう。あれもいい女じゃねぇか。お前ら、あれもボスへの土産にするぞ」
兄貴とか言われていた男が私を見てそう言った。
ちょっと待って。私も標的にされちゃったじゃない。ほんと面倒ね。
「悪いっすけど、可愛い女の子を傷つけるような奴には容赦しなって決めてるっす。覚悟するっすよ」
いつの間にかカーナが男たちの中心に立っていた。
彼らからしたら突然現れたと思うだろう。私なんかに気を取られたりするからよ。
「うおっ。何だこいつ。どこから現れやがった」
「とりあえず、剣は返してもらったっすよ~」
「なっ! いつの間に」
カーナは剣を持ってそのまま座り込んでいつ女の子に近づいていく。
「ほい。確かナトリちゃんって言ってたっすね。これはお返しするっすよ。冒険者が武器を簡単にとられちゃダメっす。気を付けるっすよ」
「……あ、ありがとう」
「ちっ。お前ら、簡単にやられてんじゃねぇぞ。こいつは俺がやる。お前らはあっちで歌ってる上玉を捕まえとけ」
「「了解っす」」
下っ端の男たちが私を狙ってやって来る。
いつの間にかやじ馬たちもなぜか道を空けている。そのせいか一直線に走ってきた。
まあ頼りになるボディガードがいるから平気だけどね。
「グルルルゥゥゥ」
ブラウが唸って威嚇している。
こんな大きな狼に威嚇されたら怖いとかそんなレベルじゃないわ。
ビビりすぎて尻もちついているわ。こいつらとんでもなく弱いわね。
名のある組織の一員だからって調子に乗っていたのね。『窮鼠会』なんて知らないけど。
「おいおい、何だよあの狼。なんでこんなところにあんなのがいるんだ」
「そりゃ彼女の従魔っすからね。常に傍にいるっすよ。そんなことより諦めてお仲間連れて帰ってくれないっすかね。そんなもの振り回されても困るっすよ」
「クソがっ。俺たちが『窮鼠会』だってこと知らねぇわけじゃねぇよなぁ。命が惜しくねぇのか?」
「『窮鼠会』? なんすかそれ。そんなグループ知らねっすよ。そんなに威張り散らかすならもっと有名になってからするのがオススメっす」
「テメェ……後悔すんじゃねぇぞ!」
大男が大剣を振り回してカーナに襲い掛かる。
しかし、カーナはいつもの飄々とした様子で小太刀を抜く。
「はぁ。出直してくるっすよ」
〈斬鉄〉!
一瞬だけカーナが魔力を使用したのが分かった。
大剣はものの見事にきれいな切断面を作って切られていた。
大男も何が起きたか理解できず二つになった大剣を見て呆然としている。
「はあっ!」
カーナの回し蹴りが大男の顎にクリーンヒット。
あれは耐えきれないわね。もう終わりだわ。
大男はそのまま仰向けに倒れて気絶していた。
「あんたらも、この人連れてとっとと帰るっすよ」
カーナが声をかけると、男たちは一目散に逃げだした。
ちゃんと大男とか大剣とか回収していきましたとも。
周囲のやじ馬は歓声をあげ、カーナを囲んでいた。私の方には寄ってこなかったわ。
ブラウが傍にいるからかしら。ただ視線だけは向けて来るけど。
こうしてちょっとした騒動は、カーナの活躍により幕を閉じた――。
というか、正直なところ私のバフなしでもいい気がするけど。やるなら徹底的に、よね。
「なんだぁ……」
「……歌?」
やじ馬たちがざわざわしている。唐突に聞こえてきた場違いなものに困惑している。
窮鼠会とか言う男たちも周囲を見渡している。
「あの子か。一体なにを……」
「ほう。あれもいい女じゃねぇか。お前ら、あれもボスへの土産にするぞ」
兄貴とか言われていた男が私を見てそう言った。
ちょっと待って。私も標的にされちゃったじゃない。ほんと面倒ね。
「悪いっすけど、可愛い女の子を傷つけるような奴には容赦しなって決めてるっす。覚悟するっすよ」
いつの間にかカーナが男たちの中心に立っていた。
彼らからしたら突然現れたと思うだろう。私なんかに気を取られたりするからよ。
「うおっ。何だこいつ。どこから現れやがった」
「とりあえず、剣は返してもらったっすよ~」
「なっ! いつの間に」
カーナは剣を持ってそのまま座り込んでいつ女の子に近づいていく。
「ほい。確かナトリちゃんって言ってたっすね。これはお返しするっすよ。冒険者が武器を簡単にとられちゃダメっす。気を付けるっすよ」
「……あ、ありがとう」
「ちっ。お前ら、簡単にやられてんじゃねぇぞ。こいつは俺がやる。お前らはあっちで歌ってる上玉を捕まえとけ」
「「了解っす」」
下っ端の男たちが私を狙ってやって来る。
いつの間にかやじ馬たちもなぜか道を空けている。そのせいか一直線に走ってきた。
まあ頼りになるボディガードがいるから平気だけどね。
「グルルルゥゥゥ」
ブラウが唸って威嚇している。
こんな大きな狼に威嚇されたら怖いとかそんなレベルじゃないわ。
ビビりすぎて尻もちついているわ。こいつらとんでもなく弱いわね。
名のある組織の一員だからって調子に乗っていたのね。『窮鼠会』なんて知らないけど。
「おいおい、何だよあの狼。なんでこんなところにあんなのがいるんだ」
「そりゃ彼女の従魔っすからね。常に傍にいるっすよ。そんなことより諦めてお仲間連れて帰ってくれないっすかね。そんなもの振り回されても困るっすよ」
「クソがっ。俺たちが『窮鼠会』だってこと知らねぇわけじゃねぇよなぁ。命が惜しくねぇのか?」
「『窮鼠会』? なんすかそれ。そんなグループ知らねっすよ。そんなに威張り散らかすならもっと有名になってからするのがオススメっす」
「テメェ……後悔すんじゃねぇぞ!」
大男が大剣を振り回してカーナに襲い掛かる。
しかし、カーナはいつもの飄々とした様子で小太刀を抜く。
「はぁ。出直してくるっすよ」
〈斬鉄〉!
一瞬だけカーナが魔力を使用したのが分かった。
大剣はものの見事にきれいな切断面を作って切られていた。
大男も何が起きたか理解できず二つになった大剣を見て呆然としている。
「はあっ!」
カーナの回し蹴りが大男の顎にクリーンヒット。
あれは耐えきれないわね。もう終わりだわ。
大男はそのまま仰向けに倒れて気絶していた。
「あんたらも、この人連れてとっとと帰るっすよ」
カーナが声をかけると、男たちは一目散に逃げだした。
ちゃんと大男とか大剣とか回収していきましたとも。
周囲のやじ馬は歓声をあげ、カーナを囲んでいた。私の方には寄ってこなかったわ。
ブラウが傍にいるからかしら。ただ視線だけは向けて来るけど。
こうしてちょっとした騒動は、カーナの活躍により幕を閉じた――。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
65
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる